
今回お借りしたタンパールについて少し紹介したいと思います。
シリアル番号を調べると製造は1936年で、これはタンパールの製造がはじまった翌年です。
製造総数が2984本で、1935〜49年と思ったよりも長い間に細々と作られたレンズですが、この1936年が最も製造された年で、おそらく最も安定したできのよいロットになるのではと想像できます。
全体にブラックペイントですが、距離表示の部分のみシルバーで、これはなぜかニッケルではなくクロームメッキになっています。
使用したレンズは、ブラックの剥げ具合が絶妙で、特に先端部などぬめっとした黒塗りと真鍮の金のコンビネーションが蒔絵のような優雅さを見せています。
また、フォーカシングのローレット加工された部分は、凹部はペイントがそのまま残り、凸部は擦れて金色になりで、宝飾加工のような美麗さです。
被写界深度目盛は美しいシルバーの象嵌ですが、他の表記は一般的な刻印部分に白いペイントがされています。
絞り表示は変わっています。
白い文字と赤い文字の2段で表記があるのです。
白い方は通常の絞り値を、赤い方がこのレンズ用のフィルターを付けたときの絞り値を表しているのだそうです。
レンズはブルーの単層コーティングがなされています。
当然、発売時には無かったはずのものですが、後日ライツが行ったものか、他で行われたのかは分かりません。
また、コーティングの効果も、ソフトフォーカスや発色にどの程度影響するのか興味深いところです。
忘れてはいけないのがヘリコイドの動きで、軽からず重すぎずの手応えが、回しながら愉しめるようチューンされているかのような精度を感じます。
フィルター径E49、無限時の全長9.5センチ、重量480グラムとズミクロンに比べてふたまわり以上小さい印象ですが、その分がっしりした重量感は印象に残ります。
当時の僑跳織薀ぅなどに付けるとカメラのマウントが変形しちゃうんじゃないかと心配になります。
いえ、それはR−D1でも同じで、この組み合わせではとても手首にストラップを巻きつけて片手で持つとか、首からぶらぶら提げてスナップ撮影という気にはなりません。
常に右手でボディを左手でレンズの下をそれぞれ包み込むように持って歩いていました。
大切なカメラとレンズを扱うので当然の姿勢ですが、どうもわたしはこれが苦手で、この辺も使いづらいなどと言い訳を続ける理由のひとつになります。
軽いフットワークとは言えない状況で、赤ん坊をあやす着物の女性は願ってもない被写体です。
赤ちゃんの顔がはっっきりしないのは残念ですが、どうにか形になりました。
しかし、むしろ偶然写りこんだ後方の男性の方に俄然目が行きます。
よく見れば黒いカメラに白鏡胴のレンズの組み合わせを右手と首のふたつ持って闊歩しています。
達人の気配濃厚で、わたしがカメラ1台で苦心する前を2台のカメラを自在に操っているようです。
しかも、そのフットワークの軽快なこと。
テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真
- 2008/11/22(土) 20:41:31|
- Leitz Thambar 9cmF2.2
-
| トラックバック:0
-
| コメント:7
着物の輝きがタンバールの滲みにぴったりですね。本来はタンバールの滲みは収差がメインですから屈折率と分散に影響を与えないコーティングの効きはそれほどでも無いはずなのですが、ヘクトールの73mmの例ではかなり効果がありました。私のヘクトールは旧レチナハウスで掃除した際に知らず知らずのうちにコーティングされてしまったのですが、描写が結構変化しました。その場合はむしろピント部分がよりクリアに、ボケはあまり変化なしという感じでよい方向にいったようです。タンバールもレンズに少しクモリがあってそれがソフト効果を増幅しているような場合はコーティングしてみるのもよいかも知れませんね。ちなみに私自身のタンバールは全くコーティングはないようです。
- 2008/11/22(土) 22:00:35 |
- URL |
- kinoplasmat #lpavF/Xw
- [ 編集]
二葉ゆり子演じる岸壁の母が帰らぬ息子の幼い子供、要は孫をあやすかの如き微笑ましい光景のうしろを、いかにも不審人物然としたセーターにちょんまげの男がポケットに手を突っ込んで気配を消しながら、抜き足差し足で歩いていくさまが面白いですね。
こういった取りとめもない空想に遊べるのもソフト&ムーディなレンズの美徳です。
ところで、今日、北新宿のレンズ磨き名人の御宅に野暮用があって訪問した時、深大寺撮影会の作例の先行公開をさせて戴きましたが、名人は"Enlarging Elmar"に一番ご興味を示し、細工が凝った某シネ改Mは良く写ってますねぇ・・・でもエルマーが私はいちばんスキですねぇ、とのご感想でした。
- 2008/11/22(土) 23:31:44 |
- URL |
- charley944 #SFo5/nok
- [ 編集]
kinoplasmat さん、詳細を教えていただきありがとうございます。
あらためてkinoさんのホームページに作例を拝見しましたが、だいぶ様子が違うような気がします。
今回枚数が撮れなかったので軽々しい比較はできませんが、次回はkinoさんの書かれているように中央部を生かした撮影を意識してみます。
コーティングがフレアの軽減などよい方向だけならよいですが、発色に影響がある場合が多いのでとうもその辺が気にかかります。
ヘクトールは無断でコーティングされて帰ってきたのですが。
わたしはレチナハウスはたいへん信頼していたので、意外に思いました。
しかし、コーティング前と比較できたので問題なくよかったと思います。
そのヘクトール、タンパール、それからズマレックス、マウンテンエルマーとこの時代のライツのブラック望遠レンズシリーズは魔力を秘めてます。
一本一本が個性の塊です。
Rayxar のスナップシリーズは、たいへん素晴らしいです。
深度が深いのか、2メートルでも顔全体を美しく表現できるのですね。
ファンタシー映画を見るようです。
- 2008/11/23(日) 08:47:24 |
- URL |
- 中将姫光学 #sKWz4NQw
- [ 編集]
charley944 さん、おはようございます。
なるほど、岸壁の母ですか。確かに演歌の世界ですね。
和服はどの角度から撮っても絵になって、先人のデザイン力に感心します。
Y崎氏は、レンズを一本一本磨く中で、ご自身の理想のレンズを確立されたのだと思いますが、このエルマーがそれにいちばん近かったのではないでしょうか。
興味深い話です。
- 2008/11/23(日) 08:56:44 |
- URL |
- 中将姫光学 #sKWz4NQw
- [ 編集]
夜遅く、失礼します。
この稀有なレンズ。そのモノクロプリントの実情はと言うと、ピントの芯は良いものの、どの様に画面にメリハリを付けたら良いのやら全く謎です。女性には、顔の皺が見えなくなるという俗説に対応出来るものの。あるいは、K伊兵衛やO省二各氏の鱗・・・。
モノクロ再現に辛いレンズ群が、デジタルカメラ特性ですばらしい色合いを出している例を沢山見ています。このレンズについても、現代のフイルムカラー時代においてすら、色にごりがある印象を持ちつずけていたものです。
今回の色再現とモノクロの再現性について、私も当分悩んでみたいとおもいます。鱗を払うためにも。
なお、撮影画面の背景に存在する人物については、ノーコメントとさせて頂きます。
- 2008/11/24(月) 01:32:36 |
- URL |
- Treizieme Ordre #-
- [ 編集]
Treizieme Ordre さん、こんばんは。
貴重なコメントをいただき、ありがとうございます。
撮影者にも、プリンターにも難解なレンズということになりますでしょうか。
レンズの特性を生かすか、自分の主張を前面に出すかは、撮るのもプリントするのも同じですね。
美しいプリントを拝見して感銘を受けました。
これはたいへんな技術を要するのでしょうが、ここまで完結できれば、写真は本当にすばらしいものとなります。
色再現については、より人の目に近くということになるのだと思いますが、見たときにはすでに過去ですので、その場で比較するなどの努力を払うべきでしょう。
教えていただくことが多く、感謝です。
- 2008/11/24(月) 23:33:59 |
- URL |
- 中将姫光学 #sKWz4NQw
- [ 編集]