fc2ブログ

人才市場的美人

M8/Topcor 5cmF1.5
自分がどんなものに興味を持ち、どうやって撮るか。
楊さんのそんな話を聞きながら歩き、彼が実際に撮影するところを見ていると、わたしがやりたいと思っていたことをすでに体現していることが分かりました。
やりたいと思っていたというよりは、今まで考えていなかった、わたしがやりたかったことがこれなんだと分かったと言った方がよいでしょう。

散策して向こうからやってくる人を観察します。
普通の人であればそのままやり過ごしますが、なにか面白いと感じるところがあれば、積極的に撮影します。
栄養失調のようなひょろっとした人が丸々とした巨犬を散歩させている、女の子3人組がおんなじ仕草でアイスクリームをぺろぺろしながら歩いている、歩道を長いパイプがじゃましていてみんな迂回しているのに勇敢な女性がジャンプで飛び越えようとしている、クラクション禁止の道路標識の真下でふたり組が何やら大声で会話している…。
急いで歩いていると見過ごしてしまいそうなそれらが被写体です。
次から次へとというほどではありませんが、さすが深圳の街中を歩いていると、困らない程度には写したくなるものが出てくるものです。

最初、楊さんは、その撮影意図を説明していましたが、わたしにはすぐ飲み込めましたので、すぐにこれはという人を見かけると説明不要にお互いのアイコンタクトで、よし撮りましょうとなりました。
わたしには興味深いものでも楊さんには響かないものもあります。
逆に楊さんがこれはと撮影姿勢を撮ってこちらを見るのに、わたしには彼の意図が分からないということもありました。

外国人に面白く感じても地元の人にはそれが理解できないということがあります。
たとえば服装ですが、みんな上着を着ているちょっと寒いくらいの日でしたが、なぜかシャツ1枚でしかもそのボタンを全部はずして太鼓腹丸出しで歩く小太りの青年がいましたが、これはお互いに面白く撮影。
一方、ジャケット、スカート、ブラウスがみんな柄物でコーディネートとか調和とかにまったく気を使わないOL風女性をわたしは撮りましたが、楊さんにはその理由は分からなかったようです。
恐らくジャケットもスカートもブラウスもいちばんのお気に入りで、これからデートか就職の面接でも受けに行くのではないかと思いましたが、あまりにも不釣り合いなので、わたしは写真のタイトルを「1+1+1=0」にしたいなどと説明してなんとなく分かってもらったりします。

作例写真は、中国語で人才市場と呼ばれるハローワークのようなところで、たくさん貼り出された求人案内を多くの人が真剣な目で見つめています。
写真は、なかなかきれいな若い女性でしたが、そんな彼女の顔をここまで曇らせるほど深圳の求人は物価の上昇に追い付いていないことを示す社会的な作品、のつもりです。
やはり、これらも楊さんの関心を惹くモチーフではないようでした。

わたしのそんなセンスも楊さんのセンスも、スナップと言う枠組みの中では理解されるものだろうとは思います。
じっさい、楊さんの作品は、中国各地で展覧会にのぼり始めていて、じょじょに注目されているようです。
ドイツでは、何枚かのプリントが売れて数十万円を手にしたと言っていたので、あるいはヨーロッパの愛好家などには評価されているのかも知れません。

展覧会を開いた中国での反応はどうだったのでしょうか。
深圳、広州、北京と広がって言っているようですので、一定の評価があることは間違いないと思います。
しかし、他の出展者を見ると作風はまったく違っていて、大雑把にいえば見てもなんだか分からないアート風というカテゴリーに入りそうな写真がほとんどですし、中国のインテリ層に受けているのもそんな写真のようです。
たぶん楊さんの写真は市井の人を撮った平凡な写真とみなされているケースが多そうな気がします。
本国ではほとんど認められず、海外のごく一部の愛好家から評価される異端の写真家と言えるかも知れません。

言うまでもありませんが、楊さん自身はけっして異端な人でも風変わりな人でもありません。
ちょっと強面で、撮影時の眼光鋭さとか、意志の強さなどはひしひしと感じられますが、カメラを置いて雑談している限りは、絶えない笑顔が逆に印象に残っています。
今になって思えば、撮影中のわたしに対する気配りは徹底していて、楊さんの優しさに慣れないスナップを安心して楽しめたのでしょう。
今回の大地震で海外の友人・知人からもメールを何通かいただきましたが、真っ先に心配してメールしてきたのが、この楊さんでした。
【M8/Topcor 5cmF1.5 F1.5】
スポンサーサイト



thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Tokyo Kogaku Topcor 50mmF1.5 | trackback(0) | comment(0) | 2011/03/23 Wed
<< 万民招待所歓迎你 | home | 草莓妹 >>

Comment


Comment form


管理者にだけ表示

Trackback

この記事のトラックバックURL
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

| home |