丹巴を朝早くに出発し、次の目的地、康定を目指します。
百数十キロ、バスで3時間ほどの行程ですが、前日の思わぬ展開から1日がかりの行程へと変更になってしまいました。
一度利用した面的(メンディ。軽ワンボックスのタクシー)の運転手が、こんな話を持ちかけてきました。
丹巴から康定までふたつのルートがある。
ひとつはバスルートで、これは近いがあまり面白くない道だ。
もうひとつのルートが素晴らしい。
途中、温泉があり、美しい雪山と草原があって、ヤクや馬が草を食んでいる。
美しい風景の連続に目を瞠るだろう。
時間は倍の6時間かかり、普通700元かかるルートなのだが、ふたりの娘を康定の大学に送り 届けなくてはいけないので、400元に大幅値引きしよう。…
300元のディスカウントはさほど魅力的ではありません。
普通にバスで行けば30元程度のはずです。
しかし、女子大生とドライブで温泉にも浸かれ、ちょっとかわったルートで、しかも通常より300元安いと言うと様子は変わります。
ただ、この親父はどうも胡散臭いのが気になります。
美人谷に行く時も、あそこの連中は普通話ができないから苦労するぞ、あんなとこへ行くならオレの家に泊れ、と大ボラ吹いて言うこと聞いてくれません。
着いたら追加料金寄こせとかもめそうな雰囲気もぷんぷんしていますが、まあ愛娘の前であまり阿漕なこともしないでしょう。
人助けだと思って仕方ないなあくらいの芝居をうって、了解しました。
きっと、満足させるからな、ガハハーと独特の豪快笑いを残して、面的は去っていきました。
ガハハーの親父とふたりの女子大生を乗せた面的は、約束の時間よりも早くわたしを待っていました。
しかし、どうも様子が変で、あいさつに出てきたのは、その3人に加え、弟、その妻、その息子、妻の母親といて、わたしを加えると8人の大人数です。
寿司詰めで賑やかな軽ワンボックスの面的。
すっかり女子大生とのドライブの期待は砕かれました。
出発前から早くも出し抜かれた気分です。
出発後も、事前説明とかなり違う展開にいらいらさせられます。
景勝地は走る車の中から眺めるだけ。
温泉に期待して短パンを用意していましたが、これも道端にちょろちょろと湯が沸いている程度のもので浸かってくつろぐことはできません。
みんなに倣って湯で顔を洗って潤すのみです。
ヤクが群れる草原では写真を撮りたいから停まってくれと頼みましたが、やつらは噛みつくので危険だ、車の中から撮れと相手にしてくれません(ほんとか?)。
運転席の親父と助手席のわたしの間には険悪な空気が流れていたかも知れません。
しかし親父と狭苦しい後部座席で会話が盛り上がり、車内は家族旅行の雰囲気そのものです。
わたしは、話が違うじゃないか、何が満足させるだ、と文句のひとつも言いたい気分ですが、この雰囲気をぶち壊す勇気まではありません。
何か言ってはガハハーと笑っているのを苦々しく眺めるだけです。
それでも、昼頃になって塔宮の町に着いて、塔宮寺の見学と昼食に一心地つきます。
いや、この塔宮も中国語読みターコンから、美人谷の美女が打工(アルバイトの意味で、これもターコンと似たような発音をする)しているところと勘違いしていて、自分の語学力の問題とは言え失望させられたのでした。
塔宮は、かなり標高の高い位置にあるのでしょうか。
空気がたいへん乾燥していて、視界が蜃気楼のようにざわつき、夢の中にいるような感覚です。
写真も、意識したつもりはないのですが、かなりアンダーになったのがまた不思議です。
レンズは、Zunow35/1.7 、Super Rokkor 50/1.8 、に続く Macro Switar 75/1.9 です。
7、8、9トリオは、わたしにとって最強の下位打線です。
特にこの Macro Switar 75/1.9 は空気感を映し出すのが得意ですので、このような場面で力を発揮してくれます。
昼食は、さすがに御馳走してもらいましたし、この地で食べたヤクのヨーグルトは美味でした。
しかし、その後の道のりも満足というには程遠く、何かわざわざ遠回りしたというだけのように、ようやく夕方になって康定の町に着いた時には疲れがどっと噴き出してくるような状態です。
いや、やっとひとりになれると安心したというべきかも知れないですが。
どうだ楽しかっただろう、ガハハーと言い残して、親父はわたしを安宿の前に降ろして立ち去っていきました。
娘たちを町はずれの大学に連れて行くためです。
言い忘れていましたが、その女子大生たちは、ふたりがふたりともなかなかの美人でした。
【M8/Macro Switar 75mmF1.9 F1.9】
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thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真