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大家感謝

M8/Sonnetar 50mmF1.1
明日、28日の夜から年末年始の旅に出る予定ですので、今日が今年最後のブログの更新になります。
みなさまには、この場でたいへん失礼ですが、たいへんお世話になりまさましたことを深くお礼申し上げます。
自分の勝手放題で続けている拙ブログには進歩がないどころか、ネタの枯渇と作例のマンネリという退歩が顕著になるばかりですが、一時大流行だったかに見えたレンズ愛好家ブログがすっかり下火になっている中で、その火が消えてしまわぬようにと勝手に続けている次第です。

おととい、昨日と書いたように、レンズ愛好家にとっては厳しい時代が続くものと思われますが、そんな時だからこそ、みんなで連携して逆風を乗り切っていければと思います。
レンズは、消耗品ではありませんし、機械式カメラがそう言われたような耐久消費材というのとも違うと思います。
死蔵したり独占するのではなく、貸し借りしたり情報交換することによって、みんなで理解を深めていければ好いですね。

例えば今日の作例ですが、F1.1のゾンネタールは立体的な表現にすぐれた大口径ならではの表現を得意とするレンズだろうという思い込みがありました。
ところが、見てのとおり、立体感どころか、横向きの女性は妙に表面的に見えて来ます。
まるで、ミュシャの絵のように。
散々使ったはずのゾンネタールでも、何気なく撮った1枚で先入観を180度変えさせられるということがあるのが、レンズ趣味の面白いところだと思いますがいかがでしょう。

そういえば、Wi-Fiが使えるということで何年振りかでマクドナルドに入ってみたのですが(中国では時々利用しています)、ここでキンドルではSDカードから撮影した写真を取り込むすべがないことに気付かされました。
同様のOSを使っているNexus7の方はアダプターの使用で可能と聞いていたので、キンドルもいけると思って購入したのでショックが大きすぎます。
旅先で撮った写真を夜に眺めたり、撮った写真を出先からすぐにブログにアップするという目論見がすべて外れることになりました。
まさに甘い認識によって損したというアマゾンです。

午前3時近くなって、ようやく旅のパッキングも終わりました。
これを買ったがためにPayPalのリミットを超えて、eBayとはしばらく決別しようと誓ったレンズを装着したM8は活躍してくれるでしょうか。
新年早々のブログ再開で自信満々にレンズを紹介できれば、最高の2013年の滑り出しになります。

さあ、そろそろ寝なくてはいけない時間になりました。
みなさま、どうぞ好いお年をお迎えください。
【M8/Sonnetar 50mmF1.1 F1.1】
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thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
MS Optical Sonnetar 50mmF1.1 | trackback(0) | comment(6) | 2012/12/27 Thu

明年目標会消失

M8/Sonnetar 50mmF1.1
昨日、2013年にはレンズはなるべく買わないと、切実な願望を書いたのですが、それよりもずっと前に建てた誓いの方が怪しくなってきたことに昨日気付きました。
その誓いとは、ライカの新しく発売されるデジタルカメラ、ライカMを購入するということで、なぜ怪しくなったかと言えば、昨日も書いたように円安が思いのほか進んでいるからです。

最近の円/ドル為替相場は、1ドルが86円を超えていますが、ライカMについてライカ社が発表し、よし、発売したら即買うぞと宣言した頃は、78円くらいだったのではと記憶しています。
アメリカでは7000ドルで発売予定と聞いていますが、そのまま掛けると546000円から602000円へと56000円も上がったことになります。
発売を直前にしてプレミアが付いてしまったかのようです。

国内の定価はどうなるのでしょうか。
ライカでは777000円とアナウンスしているようです。
大々的に発表しながら円安になったので発売前に改定するということはないのではと思いますが、発売後しばらくしてからちょろっとマイナーチェンジしておいて、定価も上げますなどという姑息な手は使ってくるかも知れませんね。

いずれにしても、わたしは税込みで80万円以上もするような実用カメラを買う覚悟はありません。
Mを買うと決めたときもさらに円高になったりとか、ヨーロッパ、アメリカ、香港の安い店をリサーチするとかで、50万円切って買うつもりでいたので大大大誤算です。
円安はいったいどこまで進むかですが、そんなことが分かれば為替取引で大金持ちになれるでしょうからライカMも国内正規品を買えるので、実際には1ドルいくらで、あるいは絶対額としてMが日本円でいくらなら買うかを考えておかないといけないかも知れません。

こんな風に考えていると、もうどうでもよくなってきて、発売と同時に買えなくてもいいやとなってきてしまいました。
M8を買った時のように中古の格安物件になるのかも知れません。
昨日はレンズが、今日はライカMが、自分からどんどん遠ざかっていくようなネガティヴな気持ちになっています。
やはり、PayPalの突然のルール変更や、安倍総理の勝ち誇ったような発言に、いとも簡単に左右されてしまう力無き存在なのだと再認識した次第です。

さて、作例の星祭祈祷会はクライマックスに向けた法要がおこなわれているようです。
力強い読経にカメラを持った部外者はその場にいることを拒否されるような気持ちになり、しばし遠くから見学したのち龍口寺を後にしました。
わずかな時間でしたが、年末のあわただしさの中で、地元に伝わる伝統行事を見学できたことは、今年の締めくくりとしては最高の時を過ごせたと思います。
龍口寺の森を歩いていて、偶然、木々の間から法要を見れたことも、今年が幸運のうちに過ぎたことを象徴しているのだと感謝の気持ちも感じられました。
【M8/Sonnetar 50mmF1.1 F1.1】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
MS Optical Sonnetar 50mmF1.1 | trackback(0) | comment(0) | 2012/12/26 Wed

浴冷水

M8/Sonnetar 50mmF1.1
先月中国に行ったときに持参して以来ですから、かれこれ丸々5週間続けてゾンネタールを使っていることになります。
最初は悪戦苦闘を強いられたゾンネタールですが、色収差の問題を除けば期待通り、ないしは期待以上のレンズだったので、使っていて楽しかったからです。

もうひとつり理由が、新しいレンズがまったく入手できなくなったからということもあります。
前々から何度も何度も繰り返し書いたように、しぎらく前からレンズの価格相場は高騰してしまいましたし、これだけ散々レンズを蒐集してしまうと、欲しいレンズはもうあまりなくあっても高価なものばかりとなって、レンズを買うという行為の意味合いが以前と変わってしまいました。

加えて、いま円安が進んでいて、今後さらにレンズから遠ざかるのではと予想しています。
すでに10%ほど円安になっていますので、外国から買うレンズは10%増となると泣きっ面にハチです。
安倍政権が発足したことによる動きのようですので、新総理は企業の方ばかり向いて、わたしたちレンズ愛好家のことを一切顧みないことに憤りを覚えます。

そんなことよりも真面目に怒り心頭に発するできごとは、eBayの支払いシステムPayPalが10万円までしか使えなくなったことです。
突然の限度額設定に支払いできずにせっかく落札しながら、流すことになってしまったレンズが2本あります。
メールで問い合わせても梨のつぶてで、これまで散々利用してきたのに、いきなりの恩をあだで返すeBay&PayPalには距離を置くことを決断しました。

間もなく年始を迎えるにあたって、少し気が早いですが、レンズの購入はぎりぎりまで控えたいと2013年の目標をたてることにしました。
安倍総理とPayPalのせいで、というわけではなく、わたしの防湿庫とレンズケースは満杯で、何を所有しているかの記憶もあいまいになってきています。
改造を待つレンズヘッドもまだ10本近くあったはずなので、それらを2ヶ月に1本ペースくらいで改造依頼できれば十分過ぎるでしょう。

年始にする今年の目標は、これを入手したい、こういうことをしたいとするのが一般的ですが、レンズを(なるべく)買わないというネガティヴなものであっても悪くはないでしょう。
もちろん、S21とか高千穂光学の5cmF1.5とかが安くでてきた時など、そこには例外が存在することは言うまでもありません。
今年もあと1週間を切って、気合を入れて来年のことを考えてみました。

気合と言えば、作例は、龍口寺星祭祈祷会での荒業(?)です。
江の島では真冬の寒中神輿も見ましたが、体を動かして気合注入の神輿よりも、精神集中のみで冷水をかぶる方がより厳しいように思えました。
思わず、みんなが息を飲んだ瞬間です。
【M8/Sonnetar 50mmF1.1 F1.1】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
MS Optical Sonnetar 50mmF1.1 | trackback(0) | comment(2) | 2012/12/25 Tue

最后一周

M8/Sonnetar 50mmF1.1
先々週の横浜、先週の鎌倉に続いて今週は藤沢へ散策に向かいました。
今週は木曜にブログ収めを考えている最終週なので、何か面白い企画でもできれば良かったのですが、時間もないので、地元で済ませてしまうことをご容赦ください。

ただ、江の島に近い龍口寺で龍口寺星祭祈祷会・茶筅供養会があるとのことでしたので、時間がないときにはありがたかったですし、おごそかな祭事で1年を締めくくれて良かったと思います。
わたしの自宅は藤沢市の北のはずれで、龍口寺は南端なので、縦長の藤沢で移動距離はそこそこということになりますが、市内の移動というのは気楽でよいですね。

横浜、鎌倉に続いてこの日も晴天に恵まれました。
わたしは自他ともに認める雨男ですが、ひとりで行動する時は好天というケースが多いような気がします。
いや、ひとりなので天気が悪ければ中止していたので、行動すれば好天というのは当然のことでした。

小田急で終点の片瀬江の島まで行って龍口寺まで歩くのですが、この絵の電の絵の島駅をとおる通りがかなりの混雑で驚かされました。
3連休の中日ですが、気温の下がった真冬にこんなに人が出てくるのですね。
幸い風が無かったので気温は低めでしたが、太陽が出ている時間も長く、それほど寒さを感じませんでした。

早足で10分ほどで龍口寺に到着です。
天気は悪くなく、人出がかなりあって、祭事があるというのに龍口寺には、檀家さんやら関係者を除くと外部の人はほとんどいないようでした。
わたしのような、観光気分の撮影目的の人は皆無のようです。
行動しやすいのはいいですが、ちょっと寂しい気がします。

お寺巡りであればみな鎌倉に行くのでしょうし、江の島に来た人はみな島に向かってしまうからなのでしょう、龍口寺はいつ訪れても人気が少ないのが残念です。
鎌倉に近く、江の島付近に立地するというのにこれはもったいないことです。
鎌倉の有名な寺と見劣りすることのない、よいところだと思うのですが。

作例の建物なんて、わたしは藤沢市内でもっとも美しい建築のひとつではないかと思っています。
切り妻が三重に重なるところはすごい迫力ですし、サイドもガラス張りで美しい廊下が見渡せるのも大好きです。
迫力があり過ぎる外観だからこそ、着物の女性がやわらかな雰囲気で調和をつくっており、この美観にすっかり引き込まれてしまいました。
【M8/Sonnetar 50mmF1.1 F1.1】
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MS Optical Sonnetar 50mmF1.1 | trackback(0) | comment(0) | 2012/12/24 Mon

左腕上的宝宝

M8/Sonnetar 50mmF1.1
鎌倉の散策は、妙本寺で紅葉を見て終わりとなりました。
ここで、鎌倉まで来たメインの目的のために、下馬の交差点をわたって由比ヶ浜方面へ向かい、江の電の踏切を通り過ぎます。
最初の信号が、今日の本来の目的地の六地蔵です。
と言ってもお地蔵ら参ったわけではなく、腕時計のベルトを新調するために来たのです。

少し前に財布を作ってもらった革製品をオーダーできる店で、時計のベルトを頼んでいたのですが、待つこと1ヶ月、完成したとの連絡をもらいました。
店をたずねてその場で革ベルトに1つだけ穴をあけてもらい、腕に通してみます。
思っていたとおり完璧です。
これで、腕時計をするようになってからの長年の悩みが解決できたと確信することができました。

ステンレスのストラップを付けていれば問題ないのだと思いますが、革ストラップはすぐにクセが付いて耐久性も低いのに手を焼いていました。
いつも同じ穴で止めるため、その位置にクセができてはずした時など、そこで革にかくんと角度がつくなどしてしまい見てくれがよろしくありません。
そして、やがてはその位置が切れたりほつれたりで、交換を余儀なくされるのです。

わたしの場合は1年もたずに交換を繰り返していました。
最初は量販店で2000円程度のものを買っていたのですが、もったいないので中国に行った折に購入する数百円相当のもので間に合わせることになります。
エコの時代になんと無駄をしてきたことか。
それに、ずっと手に付けているアイテムだけにもっと愛着の持てる物にすべきといつも考えていました。

革の店で腕時計のストラップのオーダーができると聞き関心を持ちます。
革が厚めで耐久性は向上すること、ペンケースや財布をオーダーしてみて人間の肌にとてもよく馴染む、つまりはずっと付けっ放しになるストラップに向いていることを知りました。
しかし同様のバックルを使っていたのでは、耐久度は多少はよくなるでしょうが、結局は大差無いのではとの危惧はぬぐえません。

そこで教えていただいたのは、Dバックルと呼ばれる腕時計用バックルで、これは別名バタフライバックルの名のように金属が左右に広がることで腕から着脱できます。
ストラップの穴に通す金属はずっとそのままで、通したりはずしたりする必要が無いのでその部分に対するダメージは最少限で済むはずです。

まだ使って10日ほどですが、使用感はすこぶる好く、これなら夏場の汗のケアなどに注意すれば3年とか5年とか持つのではないかと思えるほどです。
それよりも腕に付けた感触が最高で、革の厚さとやわらかさが、これ以上が考えられないほどに肌にフィットしてくれています。
昨日書いたキンドルよりも、やはりこちらを自分のためのクリスマスプレゼントにしたいと思っています。

さて、作例ですが、この付近にはいくつかのお店が連携して地域を盛り上げようと、6の付く日にイベントを行っています。
たまたまその日にストラップを取りに行ったわけですが、店頭にコーヒーの店とホットワインの店が出ていました。
暖かい日でしたが、そすがに日が落ちてくるとちょうど熱い飲み物が欲しくなります。
どちらにするか悩みましたが、きれいなお姉さんが作ってくれるホットワインにしてみました。
確か南ドイツではクリスマスにホットワインを飲む習慣があると聞いたことがあったからでもあります。
俗っぽい言い方ですが、ワインとストラップで心も体も暖かくなって、家路をめざすことができました。
【M8/Sonnetar 50mmF1.1 F1.1】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
MS Optical Sonnetar 50mmF1.1 | trackback(0) | comment(2) | 2012/12/23 Sun

很大的七吋

M8/Sonnetar 50mmF1.1
子どもの頃ならいざ知らず、給料をもらえる大人になると、自分へのクリスマスプレゼントを買っている人ってけっこういるのてはないでしょうか。
そういった統計があるわけではありませんし、誰かに聞いたこともありませんが、ちょっと思い切った買い物をするときの口実にはボーナスが出たからというよりも、自分への説得力と他人への照れ隠しに効果があるように思えるからです。

わたしの場合、20年近く前にライカM6を購入したのが、まさに自分へのクリスマスプレゼントでした。
味をしめたということではありませんが、それ以降もクリスマスプレゼントは時々というか、毎年使っているような気がします。
ここ何年かはすべてレンズのために。

ここのところレンズ購入は封印状態でしたので、ついに何か大物を買ったかという序になっていますが、残念ながらそうではありません。
価格で言うとずっとしょぼくなりますが、プレゼントとはタブレット端末です。
しかも最安と言えるKindle Fire HDです。

カメラを含めて、新しい器機メディアにまったく疎いわたしですが、タブレットはレンズ仲間の某氏が使いこなしているのを傍目で見ていて、いいな、いいなと感心していました。
しかし、本体が5万円だとか、通信費が毎月数千円と聞いてはとても気軽に手を出すアイテムではなくなってしまいます。

一度あきらめて、すっかり忘れかけていた頃、カタルーニャからやって来たダヴィドがタブレットを駆使しつつ旅に役立てているのを見せつけられてしまいました。
母国の情報を得たり、地図で現在地や行き先を確認したり、写真をストレージしたり、わたしとのメールのやり取りに使ったり、もちろん旅先の情報収集にも活用でき、たんなにもすばらしいものかと感動を覚えるほどです。
その時は、ここまで便利になると旅の楽しみを失わせるのではと、高くて買えない言いわけを言ってみたりしたのですが、そんな折にキンドルの発売告知です。
2万円を切って買えるとのことで、機能は5万円のものより劣るのでしょうが、本体価格としてはかなり魅力的です。

自宅には無線LANのモデムが入っているので、少なくとも自宅ではオンラインで使えるし、無料のWI-FIも今ではけっこうあるとの話も聞いて、発売数日前にええいと予約をしてしまいました。
キーボードが無くてもメモ帳のように使えるし、クラウドを所有できるとのことだったので写真のストレージにも大きな魅力を感じました。

直前の予約にも関わらず本体は発売日の翌日にやってきました。
マニュアルは付属せず、とんだ知識不足でこれまで悪戦苦闘が続いています。
ただ、思わぬ収獲はいくつかあって、例えば本は古典モノや名作の類ばかりですが、無料でダウンロードできるものが何千冊もあって、少なくともこれらを読むことでタブレット端末代の元はとれそうです。
わたしがタブレットを使うのを冷やかす人がいたら、違う違う、これは本を読むために買ったんだ、何かしようなんて気はさらさらないね、と誤魔化すことにしましょう。

さて、妙本寺には、いちばんの紅葉がありました。
ただ、いかんせん到着が遅く、すっかり暗くなった中での紅葉観賞ですが、また、それもよしとしましょう。
この時はまだキンドルは手許に来ていませんでしたが、これだけ薄暗くなっても紅葉に囲まれたなかで読書できるのですから、そういうこともやってみたいなあと思います。
とにかく、本体の価格分は本を読んで取り返さないとと、自分へのプレゼントだけに実利的になっているのです。
【M8/Sonnetar 50mmF1.1 F1.1】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
MS Optical Sonnetar 50mmF1.1 | trackback(0) | comment(0) | 2012/12/22 Sat

幼稚園選挙

M8/Sonnetar 50mmF1.1
瑞泉寺を出た時はまだ余裕があったのですが、いちおう紅葉を捉えられたことでホッとしたことが悪い方向に左右してしまいました。
次は若干離れているものの瑞泉寺からはいちばん近い、杉本寺に向かってみることにしたのですが、階段を登りかけて人の気配がないなと、途中引き返してしまったのです。
次は、当然、報国寺あたりになるのですが、こちらも閑散としているかも知れないと悩んだ末、踵を返すように妙本寺方面へ歩き出したのです。

杉本寺から妙本寺方面へは、ちょうど山越えの1本道があるのですが、地図には釈迦堂口切通し通行禁止と書かれています。
これはどういう意味なのか。
がけ崩れか何かで完全に通行できないのか、あるいは危険があるので通れなくしているが自己責任で通るのは構わないのか…。
確認の意味も含めて通ってみようかと悩みましたが、やはり通れない場合の時間の問題を考えてこの道は回避することにしました。

通らなかったにも関わらず、朝比奈峠からの幹線道路を使わず、その山越え道に近い小道を歩いたり悩んだりしたことで、妙本寺到着もやや遅れることになります。
ふだんならそういう寄り道的な散歩はむしろ望むところですが、時間の限られた中ではやはりマイナスでした。
というよりは、冬場には時間の余裕をもって散策すべしというところなのでしょうね。

妙本寺の山門付近で人の流れに出くわすことになります。
次々にお堂のようなところへ人が吸い込まれていくので、法要か偉い人の法話でも聞くのかと思いました。
ところが、その建物には選挙の投票所であるむねの貼り紙がしてあります。
この日、12月16日が投票日だということを思い出させてくれます。
わたしも帰宅時に自宅近くで投票に向かうことにしていました。
ただ、ノンポリのわたしはこの時点でまだ誰にどの党に票を入れるか決めかねていたのですが。

建物に近づいてきて気付いたのですが、お堂のような建築物には「比企谷幼稚園」の額が出ています。
もともとお寺の建物だったと思うのですが、それを幼稚園として使用し、さらに選挙の時には投票所としてしまうというのが不思議です。
転用の転用ということですね。
さしづめレンズに例えれば、シネレンズをライカマウントに改造してもらって、アダプターを使ってミラーレスで撮影しているというところでしょうか。
【M8/Sonnetar 50mmF1.1 F1.1】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
MS Optical Sonnetar 50mmF1.1 | trackback(0) | comment(0) | 2012/12/21 Fri

年軽人跑去

M8/Sonnetar 50mmF1.1
鎌倉宮から瑞泉寺までなかなか魅力的な道が続いています。
まず歩き出すと、鎌倉宮の方から絶妙のタイミングで筝の演奏が聞こえてきました。
恐らく琴教室のようなレッスンだったのではないかと思いますが、お宮の塀に沿って木の植わった小道に、なんと情緒のある響きでしょう。
それから途中に、近くの農家が野菜などを売っていたのですが、ヤキイモも焼いていて、おいしそうな甘い香りが冬らしく鼻をくすぐります。
耳と鼻を続けさまに刺激されると、あとは眩しい紅葉を拝めるかどうかです。

瑞泉寺は先日書いたように実に久し振りだったのですが、近づくにつれて思い出すことがありました。
入口近くに小屋があって、手作りの土鈴のようなものをおじいさんが売っていたのです。
以前は通り際にちらっと眺めるだけでしたが、今回は1個求めてみようかと考えたのですが、記憶違いだったかその小屋が見つかりませんでした。

もしかしたらぼんやり歩いていて見過ごしたのかもと思いました。
と言うのは、瑞泉寺に入ってからも簡単な1本道だったはずなのに、どこかで道を間違えてしまったからです。
途中、こんな道を通るのはおかしいと気付きましたが、それはお墓参り專用の道で、観光での立ち入りが禁止されているところのようでした。

ところが、これがとても幸運だったと気付いたのは、瑞泉寺を見終わって後にしたときです。
なるほど、観光案内所で聞いたように瑞泉寺の紅葉はなかなかに見事でしたが、午後3時過ぎの境内には太陽は射し込んで来ることはありません。
一方、お墓参りへの道ではごく一部でしたが、陽光が見事に紅葉を輝かせています。
撮影するか同課は別として、この日わたしが見たかったのは、こんなきらきらとした紅葉でした。
ついに耳と鼻と目が満たされた気持ちです。

もちろん撮影はしますが、こんな外れた場所では人通りもないだろうし、一部の例外を除いて必ず人物または生き物を取り込んだ作例を掲載するこのブログでは、使えないなと思っていました。
それが、どうしたことか、叫び声をあげた少年が駆け足で坂を下って来るではないですか。
撮影後だったのですが、遠くからでも聞こえた叫び声でM8をスイッチオンすることができ、どうにか彼の走り抜ける後姿を収めることができました。
完璧とはほど遠い紅葉かも知れませんが、はるばる歩いたあげくみちを間違えたのと、なぜか現れた少年という2つの偶然のおかげで作例をアップでき、鎌倉まで出向いた甲斐があったと感激しています。
【M8/Sonnetar 50mmF1.1 F1.1】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
MS Optical Sonnetar 50mmF1.1 | trackback(0) | comment(0) | 2012/12/20 Thu

紅葉没有了

M8/Sonnetar 50mmF1.1
今日の作例は鎌倉宮からです。
3~4年前にここ鎌倉宮や北に上がった覚円寺で美しい紅葉を楽しんだことがあったのでかなり期待して足を向けたのですが、あきらかに紅葉は終わってしまっています。
観光案内が言うように、もう瑞泉寺しか残っていないのかも知れません。

鎌倉は相模湾に面した温暖な気候だからでしょう、毎年紅葉もずいぶんと遅くまで見ることができるのが特徴です。
日当たりがいいところでは1月まで見られるなど、山間が早く始まるところもあって、鎌倉では長く紅葉が楽しめるイメージがあります。
今年の冬は寒い日が続いたので、紅葉も早々に終わってしまったということかも知れません。

さて、作例は、今回もF2.8に絞ったままになっています。
ここで絞られていると気付いて、次から開放で撮影することになります。
半逆光くらいに太陽に向けているのに、露出計の適正値のシャッタースピードが1/8000に届かなかったため、ようやくそこでこれはおかしいとなったのです。
レンズは開放だ、と唱えているのに、撮影時には意識から消えているというのではいけませんね。

F2.8まで絞れば画質はかなり上がり、開放の絵と比較すると完璧のように見えます。
少なくとも中心部は間違いなくそうで、完璧ではなく不完全なものに美学を感じる人には、恐らくシャープ過ぎのように思うことでしょう。
ところが周辺部までよく見てみると大きな問題があることに気付きます。
昨日の作例でも、今日の作例でも左右上隅の木は激しく流れています。
開放で撮るよりはかなり改善されているのかも知れませんが、F2.8で非点収差の影響が残るというのは意外な発見でした。

中心部はすごくシャープで解像度もかなり高いことは、あらためて確認できます。
F4かF5.6で周辺が大幅に改善される可能性はありますが、ゾンネタールは風景を撮るレンズではないということでしょう。
開放かその近辺でポートレイトには向いているでしょうし、とくにスナップにもふさわしいレンズだと思います。
中心を活かすホロゴンさんがこのレンズを絶賛するわけですね。
【M8/Sonnetar 50mmF1.1 F2.8】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
MS Optical Sonnetar 50mmF1.1 | trackback(0) | comment(3) | 2012/12/19 Wed

我也同意

M8/Sonnetar 50mmF1.1
鶴岡八幡宮から、東へ向かうと、白旗神社、荏柄天神社、そして鎌倉宮となぜか寺ではなく神社が4つも並んでいます。
鎌倉にも、その八幡さまをはじめ、銭洗弁天とか佐助神社などの有名どころもありますが、やはり寺の方がずっと多くて、この神社の密集度合いは不思議を感じます。

神社には長い参道が付きものですが、近年の都市計画などで幹線道路や鉄道などが参道を分断するように通っているのをよく見ます。
荏柄天神社の場合はそれほど無粋なものはなく、鎌倉に多い並行する3本の路地が古い町並みの風情をかすかにとどめているように思えて好い味わいがあります。

もうひとつ面白いのは、大鳥居が建つまん前に樹がX字に交差していて、その鳥居を隠してしまっていることです。
いえさ、樹は鳥居だけでなく小山の上の神社までをも覆い隠していました。
参拝者にとっては邪魔物なのではと心配になりますが、自然の門として大切にしてきたなどの謂れはありそうです。
確かに荏柄天神社から見下ろすと鳥居と樹が一体化して、大きな門に見えなくもありません。

この作例を見て思い出すことがあります。
先日、カタルーニャからやって来たダヴィドと高山、白川郷を旅したときに彼が言った、この景色は残念ながらアグリーだという言葉です。
agreeではなくugly、つまり醜いという意味ですね。
彼が言っているのは、電線のことです。

日本人だって醜いとは思っているが、住んでいる人にはライフラインだし、では地下に埋めるのがいいかと言えば日本には地震が多く台風の水害もあったりするので万一の時の復旧が難しいことを考えて、むかしから見慣れた電線を懐かしきものとしてそのまま使っているのだと、ksmtさんに教わった話を援用して説明しました。
ダヴィドは納得しつつも、日本の技術があればどうにかなるだろうにと反論したそうです。

技術云々ということならば、地下埋設よりも、画期的自家発電装置が開発されて、建物ごとに設置が義務化されることで電線そのものが日本からなくなるという時代が来るかも知れません。
それはソーラー発電器のような屋根に設置される大きなものになる可能性が高いと思われます。
それを見たダヴィドは、日本の美しい瓦屋根や茅葺の屋根にあんなものを載せるとはアグリーだと言うかも知れません。
するとわたしはこう答えるでしょう。
日本は醜い屋根を犠牲にして、クリーンなエネルギーを選択したのだが、君はそれに同意するや否や、と。
【M8/Sonnetar 50mmF1.1 F2.8】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
MS Optical Sonnetar 50mmF1.1 | trackback(0) | comment(0) | 2012/12/18 Tue

不坐公交車去

M8/Sonnetar 50mmF1.1
依然、更新が遅れまくっていますが、山手を散策した翌週に鎌倉を目指しましたので、今週は(あるいはこれから7回分は)そのあたりの作例を続けます。
天気は上々で、わたしは冬場でもひとりの散策ではかなりの薄着なのですが、それでも上着は不要なくらいに感じました。
後で聞くと気温は18度くらいまで上がったというので、まさに小春日和な1日です。

レンズは5週連続のゾンネタールですが、初使用の中国と2回目の飛騨では使い方が分からず失敗し、ようやく3回目の横浜でコツをつかんだもの、今回また大きなミスをやらかしてしまいました。
撮影前に後群が所定位置かを確認するためレンズを着脱した際に、絞り位置が大きくずれてしまったようです。
これからの作例の何枚かはF2.8位置になっています。
ゾンネタールで後群の確認は撮影前の儀式になっていましたが、装着後には必ず絞り値を確認することを一連の儀式に加えないといけません。

今回はF2.8付近と大きくF値がずれていたので、途中で気付きましたが、それでも違和感を覚えつつもしばらく撮影を続けています。
もし、F1.1とF1.4の間くらいで止まっていればまったくそれと気付かずに終わっていたかも知れません。
絞りにクリックストップが付いていることのありがたさを実感しましたが、いずれにしても開放しか使わないのですし、焦点移動してしまう後群も触る気がないのですから、以降はテープで固定することにします。

鎌倉を散策する時は、だいたい北鎌倉駅で降りて円覚寺からスタートすることが多いのですが、今回は紅葉をみたいとの目論見もあったので、鎌倉駅まで出ることにしました。
横須賀線の列車が北鎌倉駅を出るとすぐ円覚寺の紅葉が見えますが、葉がだいぶ枯れている様子が分かります。
鎌倉駅脇の案内所で紅葉のことを聞くと、やはり、もうどこも終わっていて瑞泉寺まで行ってくださいと地図を手渡されました。

ズイセンジと聞いてどこのお寺と分かるほど鎌倉に精通している訳ではありませんが、地図のマーキングを見て、ああ、あそこかと分かりました。
もう何年か行っていない、鎌倉宮の先にあるかなり遠くにある古刹です。
案内の人も、○×番のバスで行ってくださいと説明しています。
最近減量が停滞気味のわたしは、もちろん徒歩を選択したのですが。

鶴岡八幡宮は毎度足を向けているのでパスするつもりでしたが、長い参道で巫女さんふたりが並んで歩いている不思議な光景を目にするこができたので初日の作例とさせていただきます。
絞ったことと関係あるのか、シャドーが潰れて妙にデジタル臭さを印象付ける絵になったようです。
構図もいまいちのうえに手前に人影入り、良い出足しとは言えません。
【M8/Sonnetar 50mmF1.1 F2.8】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
MS Optical Sonnetar 50mmF1.1 | trackback(0) | comment(0) | 2012/12/17 Mon

夜之鋼琴

M8/Sonnetar 50mmF1.1
最後にやっと訪れたのが7つめの洋館、山手111番館でした。
イギリス館のすぐ近くで、港の見える丘公園の中にあり、坂を下りきったところが元町・中華街駅という便利なロケーションです。
ただ、公園にある洋館というと、民家園や他の古建築を移築してつくった公園の一部のようで、住宅地の中にあるエリスマン邸などに比べるとわたしはちょっと劣るように思えてしまいます。
単に先入観の問題ですが、あちこちで古い町並みや古村落を訪ね歩いているので、古い建物にはそれに見合う環境を求めてしまうのです。

ただ、閉館間際の111番館では幸運が待っていました。
ブラフ18番館でフルートアンサンブルを聴き、外交官の家でルネサンス・バロック期の音楽を聴くことができ聴覚を満足せていたのに、111番館でもピアノが演奏されていたのです。
しかし、それはリサイタルとかBGM的に演奏していたという訳ではなく、ここでピアノの練習にうちこんでいたようでした。

練習といっても近く開かれるコンサートに向けてのものだそうで、ゲネプロとまではいかないのでしょうが、ほとんどリハーサルのレベルですから本番さながらです。
しかも、途中で演奏を止めてまた少し戻って弾き直したりするものですから生のコンサートよりもある意味興味深いものがありました。
それにしても、これだけ多くの人が出入りしている中で、演奏を続けるというのはすごい集中力です。
路上ライブする人たちだってそうだよと言われるかも知れませんが、狭い空間を通りかかる人はすぐ近くを通っているのですし、彼女はそれらに背中を向けているのですからこちらが冷や冷やしてしまいました。


数時間の洋館駆け廻りで図らずも感じたのは、日本で活動する音楽家についてです。
趣味で演奏している完全なアマチュアを除いた音楽家は、日本にどのくらいいるのだろうかなどと考えてしまいました。
日本には音大や音楽学部のある大学が40ほどあるそうで、それぞれの規模はけっして大きくはないと思われますが、仮に平均50人の卒業生がいるとすれば、毎年2000人の音楽家が誕生することになります。
もちろん彼ら全員が音楽家になる訳ではないのですが、多くはできれば音楽にかかわるかたちでの仕事に就きたいと考えているはずです。

医学生であれば、国家試験に受かればまずは医師としての職を得ることは可能で、実際、国内の医師は不足しているほどなのに、音大生は状況がだいぶ違います。
医師が勉強してきた知識や経験によって人を病気や怪我から救えるように、音楽家も人を楽しませ幸福な気持ちにすることができるのです。
ところが、音楽家はせっかく演奏技術や音楽性を身に付けても、それを伝える機会を持てないという人が日本中にいっぱいいるのだということを考えなくてはいけません。

フルートアンサンブルはコンサートの形式だったにも関わらず20名ほど、ルネサンスはほんの数人、ピアノは練習なのでわたしひとり、それぞれを聴いていた人の数です。
天候に恵まれて来場者の多かったこの日の洋館のことを考えるとなんともさびしい数字といえます。
それでも、音楽家に対して門扉を開いて一般の人に音楽に接する楽しみを与え、音楽家に聴衆の前で演奏する機会をつくる山手西洋館の取り組みはすばらしいと思います。
山手の洋館といえば音楽だよね、などと定着するよう、この試みがもっと広く浸透することを願って止みません。
【M8/Sonnetar 50mmF1.1 F1.1】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
MS Optical Sonnetar 50mmF1.1 | trackback(0) | comment(2) | 2012/12/16 Sun

位置一様但是内容不一様

M8/Sonnetar 50mmF1.1
山手234番館から次のイギリス館まで少しだけ歩きます。
大した距離ではないのてすが、すっかり日が落ちてしまっては、もはや絶望的な距離のように思えて来ます。
それでも着いてみると、かなりの人が見学しているのに驚かされます。
考えてみれば、まだ5時少し前ですし、この時間帯にここにいるということはこれから山手や中華街で食事をするということなのでしょうか、うらやましく思います。

イギリス館は装飾を排したシンプルな内外装の建物です。
当時としてはかなりモダンなつくりの建築家にとっての意欲作だったことが察せられますが、21世紀の今となっては新しくなく伝統的でもない、中途半端な存在のようにも見えます。
そんなこともあって暗くなったなかで、撮影場所に難儀することになります。

結局、以前にも撮ったことがある大きなシャンデリアの下での作例になってしまいました。
2年前に同じような位置で撮っていますが(http://zunow.blog51.fc2.com/blog-entry-1744.html)、同様の暗い中のイメージにも関わらず、前回の方が圧倒的に好い雰囲気です。
超大口径レンズは暗い中でもすべてを満遍なく捉えようとして一般的な絵になってしまうのに対し、明るいものの収差の大きいレンズはハイライトで収差がより目立ちシャドーを省略するのが良いのでしょうか。

理由不明ですが、少女が上を向いているのが印象的です。
クリスマスツリーの横なので、聖夜にサンタが入ってくることを楽しみに、ずっと煙突を見上げるの図ということにいたしました。
大人がプレゼントを期待して首を長くして待つというと何かいやらしいことのように思えて来ますが、無垢の少女が同様の状況になると、なんて素敵なんだろうと感じてしまうのが不思議です。

ここのところ年齢のせいで時間の流れが異様なまでに早く感じていたのですが、12月に入るやそれが加速してしまいました。
まるで新幹線の中で生活しているかのようです。
ついこの前まで11月ももう終わりかと嘆息していたら、もう12月も折り返し地点になっていたのでびっくりです。

そんな状況のせいで、このブログも更新が滞りがちなのをお詫びしなければなりません。
もう2012年もカウントダウンに入っていて、わたしもラストスパートに向けてギアチェンジしなければなりません。
疲れたとか寒いとか言っている暇もなくなりました。
【M8/Sonnetar 50mmF1.1 F1.1】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
MS Optical Sonnetar 50mmF1.1 | trackback(0) | comment(0) | 2012/12/15 Sat

薄蘭的聖誕節

M8/Sonnetar 50mmF1.1
エリスマン邸はペーリックホールのすぐ隣でしたが、次に向かった山手234番館は斜向かいに位置しています。
並びには有名なえの木亭というカフェがあり、ちょっと先へ進むとすぐ外人墓地が見えます。
このあたりが山手のハイライトといえるのでしょう。

山手234番館で展示されていたのはオランダのクリスマスです。
イギリス館とここは建物としてはモダンな印象で、室内もいかにもクラシックな他の洋館と比べると異質な感じのため、なにをどう撮るか戸惑うところです。
そういえば、去年も同じことを思いましたっけ。

去年はここで何を撮ったのだろうと確認しようとして恐るべきことにいま気付きました
それは、去年ではなく、おととしだったのです。
そういう記憶違いはよくあることだと諭されそうですが、記憶違いということではなく、わたしの脳内時間のようなものがすごいスピードで進んでいることに恐怖を感じるのです。
去年の11月12月に中国で撮った写真などは、つい最近のもののように思えるのに、あれからもう1年経っているのかと時の進行具合が不安を誘います。

それはそれとして、今年、234番館で気になったのは、内部ではなく赤い帽子の少女でした。
ベーリックホールからその存在に気付いていたのですが、エリスマン邸、234番館と同タイミングで廻っているところを見れば、彼女もかなりあせりつつ洋館巡りをしていたということでしょう。
向こうも行く先々でわたしを見かけたはずで、ストーカーと思われないか少し心配になったくらいです。
作例では、完全にモノトーンの中で、説明のボードのなかの聖書と吊るされた飾りの絵、それに彼女の帽子だけがカラーで、しかも赤で統一されているのでインパクトのある絵になったのではと期待したのですが、いま見るとまったくそういう風には写っておらずがっくりです。


ところで、やっとダヴィドからメールが届きました。
koh taoという小さな島に滞在していると書いてあります。
中国語で島のことをタオ(綴りはdaoです)というので、てっきりコー島、小島にいるのかと勘違いしてしまいました。
タイ語ではkohの方が島の意味なのだそうで、調べるとタオ島という結構大きなリゾートアイランドのようです。
カプセルホテルやら安宿に泊まっていた彼も、タイではかなり優雅に楽しんでいるのでしょう。

カプセルホテルといえば、彼はその存在を知っていて泊まれることを喜んでいました。
ではメイド喫茶を知っているかと聞けばいいやと答えたので、浅草に行った帰りに秋葉原へ連れて行きメイド喫茶も体験してもらうことにしたのです。
言うまでもなく、わたしも初体験で、店に入るや否やふたりしてとまどっていたのですが、ダヴィドはいろいろ話しかけたり、彼女たちの振舞いにオーバーアクションで答えたりしているうちに彼女たち以上に注目される存在になっていました。

彼は日本語メニューが読めないはずなのに、ケーキセット(女の子とのポラロイド撮影付き)というメニューをオーダーしています。
店内ではずば抜けて光っていた女の子がアテンドしてくれていて名前がマリアとスペインでも一般的なものだったためなんだかんだと打ち解けて、ポラロイドも実に好い雰囲気のカットになっていました。
日本でのわたしのいちばんの思い出だと、それは財布に大切にしまわれています。
きっと、タオ島のバンガローの中、ロウソクの光の下でマリアとの写真を見ながら、わたしにメールをくれたのではないかとそのときのことを思い出しました。
【M8/Sonnetar 50mmF1.1 F1.1】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
MS Optical Sonnetar 50mmF1.1 | trackback(0) | comment(2) | 2012/12/14 Fri

聴着莫扎特

M8/Sonnetar 50mmF1.1
ベーリックホールの次のエリスマン邸は隣接していて徒歩1分の至近距離です。
かなり薄暗くなつてきて残り4つの洋館を廻り切れるか不安になっていたので、この距離すらかなりの早足です。
こんな調子では、ロクな作例が撮れない危惧がありましたが、やはり以降は時間が経つほど質が落ちていくのが我ながらよく分かります。
外光が弱まってその分室内の光源が主力になるのですから、M8では光温度をうまく調整してあげなければ不自然になること極まりありませんが、時間の余裕がないとそんなことすら手を抜いてしまいます。

このエリスマン邸から、どこの国をテーマにクリスマスの飾り付けをしていたか、記憶になくなってしまっています。
記憶にない以前に、どこの国かを確認する余裕もなくなっていたのでしょう。
本来であれば、横浜市緑の協会が主催する横浜山手西洋館「世界のクリスマス2012」というイベントを楽しみ、その中でお裾分けいただいた瞬間を撮影させてもらって、それをブログに紹介すべきところです。
やらせ記事を捏造する記者のような罪悪感を覚えなくもありません。

今日の作例は、昨日のやや相似形で、今度はこのレンズの前ボケの美しさを強調しようと狙ったものです。
ただ、これくらい暗くなると、レンジファインダーのピントをささっと合わせるのがかなり苦しくなります。
テーブルセットに驚いたのか好い表情を見せてくれたせっかくの一瞬でしたが、やや前ピンになってしまい、思ったよりアンダーで(そのためピンボケが誤魔化せている?)、発色もダメという3拍子が揃ってしまいました。
まあ、こんなものでしょうね。


話しは変わりますが、いま、めずらしく音楽をかけながらこのブログを書いています。
ここはぜひともおととい言及した家具の音楽といきたいところですが、手もとの音源ではバロック以前の音楽がバッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータだけで、かけてみたところあまりに今の雰囲気と合致しなかったので、モーツァルトのピアノ協奏曲をかけ直しています。
小さなスピーカーをPCの脇に置いて、BGMのようにしているのですが、ふだんこういうことをしたことがなかったので、新鮮度味があって好い感じです。

なぜそんなことを突然思い立ったかといえば、ホロゴンさんのブログでそのスピーカーが軽妙な文章とともに紹介されていて、感化されやすいわたしはまったく同じものを購入してしまったのです。
スピーカーといっても、USBから電気をとるちっぽけなもので、PC用アクセサリーと呼んだ方が近いような物体です。
抜群に好い音を出すというほどではないのですが、大きさや価格の割には愛嬌のあるサウンドを奏でていて、なるほどホロゴンさんが取りあげるほどの不思議な魅力をもっているのが分かりました。

このことを書こうと思ったのは、最近のニュースで芸能人が袖の下をもらってネットオークションであたかも安く購入できてラッキーというような捏造記事を書いていたことが報じられたことにあります。
もしや彼ら同様、ホロゴンさんもメーカーから20万円くらいもらって、スピーカーの広告塔になったのではとの疑問が頭をもたげたのでした。
影響を受けやすいわたしが、まっ先にそれに乗っかったということですね。
ホロゴンさんは、きっとその20万円でR-D1を買ったのに違いありません。
残額でスピーカーも。
【M8/Sonnetar 50mmF1.1 F1.1】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
MS Optical Sonnetar 50mmF1.1 | trackback(0) | comment(2) | 2012/12/13 Thu

黄金太陽

M8/Sonnetar 50mmF1.1
古楽器によるバロックの調べに打たれて、またしても外交官の家で足止めを食いました。
ずっと聴いていたいという誘惑にかられますが、わたしには長年の旅で身に着けた目的地まで帰着するという本能があります。
あるいはこれは、子どもの頃に熱心に見た、母をたずねて三千里の影響でしょうか、いくら町の人に親切にしてもらって居心地の良さを感じても、母に会うまでは先へと進まねばならないという強い覚悟があるようなのです。
素敵な家具の音楽を楽しませていただいた演奏家のおふたりに厚くお礼を述べて、つぎの洋館を目指しました。

続いて向かったのがペーリックホールですが、各洋館がある程度近い距離で並んでいるのに、イタリア山からこのペーリックホールの間のみ少し距離があって、普通に歩くと10分かかってしまいます。
ペース配分を明らかに失敗したわたしは、すでに4時近くなって残りの4館を廻り切るべく、競歩のような歩きぶりで突き進んでいきました。
山手を散策するにふさわしい優雅さを失った、なんとも恥ずべく行為だったと反省しています。

山手の洋館は、イギリス館を除くとすべて玄関で靴を脱いでスリッパに履き替えることになっています。
建築当時から日本の習慣を尊重していてそうだったのか、室内保護のため内部公開されるようになってからのことなのかは分かりませんが、床はたいへん清潔なのでスリッパを履かずに歩くのがわたしは好きです。
いずれにしても、1歩中に入ったらペースダウンしてゆっくりと見学しなくてはなりません。

クリスマスの装飾はベルギーがテーマでしたが、ペーリックホールは山手の洋館の中で恐らくいちばん大きな建物で、それを利用してベルギーのこと、カリオンのこと、ベルギーでのクリスマスのことを詳しく説明しており、多くの人が熱心に読んでいました。
ベルギーと言って思いつくもの、チョコレート、小便小僧、トラビストビール、EU本部(違ったかも)、フランダースの犬…、うーん、こんなものではわたしもきちっと説明を読まなくてはいけないのですが。

2階の西に面した部屋は確か子ども用の寝室で、比較的地味なクリスマス装飾でしたが、この部屋には光り輝くものがありました。
西日です。
低い陽光がタンスを照らして、写真額やアクセサリーを金色に染めています。
光の強さが強過ぎず弱くもならないように計算されたかのようなカーテンが効いていて、これほどの美しい光線は見たことが無いと感じました。

ベーリックホールの作例はこれでいこうと決断して、まずは露出を見るために1枚試写します。
露出計の適正から2段オーバーで撮ってみましたが、これでちょうど好いように思われます。
あとは窓辺に誰か立ってくれれば作例完成と思った矢先、これ以上ないくらいの雰囲気いっぱいの女性が通り過ぎるという幸運に恵まれました。
この1枚で満足して次に向かうことになります。

さて、その作例を見ると、あれだけの逆光の中でゴーストやフレアの影響がほとんど出ないのに驚かされます。
いつもハイライトで目立っていた色収差も最少限うっすら見られるのみです。
ボケがまた出色です。
謎の2線ラインの反射ラインが気になるのを除けば、とても美しくシャドーに浮かんでいます。
悪条件で力を発揮するタイプなのか、あるいは、名前のとおりゾンネに馴染むレンズなのかも知れません。
【M8/Sonnetar 50mmF1.1 F1.1】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
MS Optical Sonnetar 50mmF1.1 | trackback(0) | comment(0) | 2012/12/12 Wed

家具之音楽

M8/Sonnetar 50mmF1.1
イタリア山庭園には、フルートコンサートのあったブラフ18番館の他に外交官の家があります。
すなおに行けば次は外交官の家に行く順番ですが、庭園全体に冬の午後の好い光線が差していたり、18番館前に黄葉の積み重なった魅力的なベンチがあったりと寄り道の誘惑にあふれています。
しかし、コンサートが終わったのが3時ですから、残り2時間で6つの洋館を巡る荒業が待っています。
後ろ髪を引かれつつも外交官の家に突入しました。

ここでも幸運が待っていました。
女性奏者ふたりによるルネサンス・バロックの音楽のアンサンブルです。
作例では2本のリコーダーのアンサンブルを許可もらって撮影したものですが、リュートやサズというトルコなどで用いられる弦楽器に持ち替えての演奏もあり、音楽がバラエティに富んでいます。

なんだお前はルネサンスやバロックの音楽も聴くのかと聞かれたら、実は回答に窮してしまいます。
聴くのはせいぜいバッハの器楽曲どまりで、他にはルネサンスやプークラン、ブクステフーデはもとより、ヘンデルすら聴いたことがありません。
ですから、ここてで奏でられた明るく、やわらかで、ときにメロウな音楽はまったく知らないものばかりです。

でも、目の前で素敵な奏者が息の合った演奏を聴かせてくれるというだけで好いのです。
フランスのクリスマスの装飾がほどこされた室内をますます異空間にしてくれたのが、このルネサンス・バロックの音楽でした。
これら音楽をわたしはむかし誰かに教えてもらった言い方を使い、家具の音楽と呼んでいます。
意味は、部屋に置かれた家具のように自然に空間に溶け込んでいて、センスの好い家具が部屋の雰囲気をよりよくするように、家具の音楽も室内を静かに盛り立ててくれ何かの邪魔をすることはありません。

ルネサンス・バロック期の音楽を愛する人はこんな聴き方を肯定することはないのかも知れませんが、室内アンサンブルによって奏でられるこれら音楽ほど家具の音楽と言う言葉にふさわしいものはないと思います。
例えば、バッハ、モーツァルト、ベートーヴェンの重要な曲はじっと姿勢を正して聴き入ることを強要されるようなところがありますが、ロマン派以降でも規模やスケールの大きさからやはり家具の音楽に合致するものはなかなかなく、やはりルネサンス・バロックの音楽にこそ家具の音楽の称号が似つかわしいと言えます。

また、家具の音楽という表現そのものもわたしのお気に入りです。
サロン音楽とかムードミュージックとかAORとか、近いことを言い表そうとした単語はいくつかありますが、家具の音楽という素朴な表現こそが、わたしの考えるところをよりうまく言い当てています。
ときに聴きたくなる頭や体の違う部分を少しだけ刺激してくれる音楽です。

援用して家具の写真という言葉を考えてみました。
押しつけがましいところのない、自然に見えても少しだけ主張の感じられる、それでいて毎日見ていても飽きのこない写真。
かなりクドイ表現になってしまいましたが、こう書いてみてある人のブログを思い出しました。
それは誰のだと書くことは控えますし、ご本人はわたしの勝手な思い込みとは無関係のところできっと撮影されていることでしょう。

そう書いてみて、このすばらしい音を奏で、説明までしてくださった方の音楽に、勝手に家具の音楽と命名したこともひどいことだったと今気付きました。
あくまでもわたし個人の感想とお断りしたうえで家具の音楽と再度呼ばせていただき、また聴きにいかせていただきますとお礼の代わりを申し上げます。
【M8/Sonnetar 50mmF1.1 F1.1】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
MS Optical Sonnetar 50mmF1.1 | trackback(0) | comment(2) | 2012/12/11 Tue

長笛三重奏

M8/Sonnetar 50mmF1.1
怒涛のダヴィドの日本滞在のお付き合いでしたが、彼が帰国した翌日くらいまではホッとしたくらいだったのに、いまでは空虚で寂しさを感じています。
世話の焼ける子どもほど可愛いということなのでしょう。
いつまでもそんな調子ではいけませんので、土曜は横浜に散策に向かいました。
昨年、山手西洋館でクリスマスの装飾をしているのを見に行って、かなり楽しませてもらったことを思い出したからです。

洋館のクリスマス装飾と言っても、いまあちこちで見られる壁に派手に電飾を付けるなどという安易なものではありません。
日本、韓国、中国、ヴェトナム、タイ等々で正月の過ごし方、祝い方が違うように、ヨーロッパでもクリスマスは国による違いがあり、それを各洋館がひとつの国をテーマに現地の一般的なクリスマスの飾り付けを施した室内を公開するというイベントです。
洋館は7つあって、それぞれ違う国のクリスマス装飾が楽しめるので、去年同様、1日1つずつ作例をあげればちょうどよいと考えました。

スタートは、石川町駅から急坂を一気に上がったところにあるイタリア山庭園のブラフ18番館からです。
洋館では、土日に頻繁に無料コンサートが開催されますが、世界のクリスマスの期間中はスペースの都合からかコンサートはお休みになるようです。
ところが、唯一ここブラフ18番館のみ、フルートのアンサンブル・コンサートがあるとの情報があったので、真っ先に向かったのです。
テーブルにクリスマスのディナーのセッティングがされていたので、椅子が並べられず立ち見になりましたが、じゅうぶんにありがたいことです。

それ以上にありがたかったのが、カラフルなドレスに身をまとった3人の演奏家がみな美人だったことです。
もちろん演奏もすばらしく、木管楽器の音量に見合った建物のホールに美しく響きました。
音響は好いとは言えないのですが、適度な距離で聴けたため、3本のフルートの音が適度に分離して聴こえ、同じ楽器がひとつとしてでなくアンサンブルとなっていたのが印象に残りました。

タダで聴いておいて不平を言うのも失礼ですが、演奏されたのがすべてクリスマス関連の曲だったというのがもったいないような気がします。
時節柄、クリスマス曲を交えるのはいたしかたないことですが、わたしは年の瀬ということでシリアスな曲を聴くとふだんより胸に迫ってくるように感じることが多くあります。
年末に第9がよく演奏されるのは、何も合唱だけが聴きたいという人ばかりではなく、1楽章の宇宙的な音楽に1年の終わりを感ずるという人もいるからなのではないかと思うのです。
ブラフ18番館がオーストリアをテーマにクリスマスの飾り付けをして隣の部屋にモーツァルトの絵が飾られていたのを見ていただけに、モーツァルトの小品が聴けたらなあとの勝手な感想を持った次題です。

さて、作例ですが、狭く暗い室内に3人横並びで背後に青空を控えた窓というとても厳しい条件をそのまま反映したようなものになってしまいました。
3人が3人と甲乙丙つけがたい美人だったのに、これではご本人たちに申し訳ありませんが、右の演奏家だけ斜光線を受けてソフトな好い雰囲気で写っているので、そのまま採用してしまいます。
演奏者の息使いもはっきり伝わる演奏は、ほんとうにすばらしかったんですが…。
【M8/Sonnetar 50mmF1.1 F1】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
MS Optical Sonnetar 50mmF1.1 | trackback(0) | comment(0) | 2012/12/10 Mon

他走了

M8/Sonnetar 50mmF1.1
両親を相次いで亡くしてから、レストラン・バーをほぼひとりで切り盛りしているダヴィドですが、その仕事ぶりはあまりにテキパキとしていて、いまここにいる彼が同一人物とは思えないところがあります。
昨年の滞在では、夜、客がいる間はビールを飲み、オランダから来た老夫婦と話しをしながら、ちらほらと彼の働きぶりを感心しながら眺めたものです。

ようやく最後の客が帰ると、ダヴィドは、さあ、今日は何を作るかなと言いながら、またキッチン戻りほどなくしてふたり分の料理とともにテーブルに現れます。
いつもビーフやチキンがメインですが、カタルーニャ料理を振舞ってくれたのを覚えています。
スペインとフランスの中間にある田舎の料理が旨くないはずがありません。

わたしだって、このときはワインセレクト係りという重責を担っていました。
といってもここのハウスワインが3種類あって、赤2種と白1種のうちから選んで今日はこれをと言うだけです。
ボトルの開栓すらダヴィドがさっとこなしてしまうので、このささやかな宴でわたしの役割はこのワイン選びと、食べること、飲むこと、しゃべることだけでした。

そういえば、彼とホロゴンさんと奈良を散策していたとき、古本屋があって店頭で世界美術全集というような本が売られているのが遠くからでも見えて、ダヴィドがここにわたしの住んでいる村が出ているはずとページを繰りはじめたことがありました。
わたしは彼がゴシックの巻を見ているのに気付き、それ違う、こっちだとロマネスクの巻を手渡しました。
するとホロゴンさんばかりかわたしまでもびっくりするくらい、ページを進める度にこれは隣村の教会、これはうちの村の教会の壁画という具合に彼の住む村を説明してしまったのです。

世界美術全集の1巻の中心になっているほどの村に住む彼は、その教会の壁画にある栄光のキリストのような力強さにあふれる存在です。
それが、日本に来るとどうしてこうも変わってしまうのでしょう。
もしかしたら、日本に来たダヴィドの目には、彼のレストラン・バーではなにもできずに頼りなさ気だったわたしが新宿の大都会の雑踏にあって逞しく生きているなあと見えたのかも知れません。


日本最後の夜は、高層階にあるレストランでちょっとだけ贅沢な晩餐を楽しみました。
予想通りダヴィドは大喜びで、子どものように夜景や料理にはしゃぎまくっています。
食後、高層ビル群を背に駅に向かっているとき、彼の携帯電話が鳴りました。
彼の村の姉からで、わたしも去年はお世話になったと礼を言うと、また来年こっちに来てねと言われます。
不思議なことに立て続けに電話が鳴って、今度は彼の親友のチャビからです。
同様にあいさつすると、やはり、来年スペインで会おうと言われました。
その機会が訪れれば、彼とわたしの様子がまた逆転しているかが、確認できることでしょう。

翌日、羽田から出国するというので、午後休暇をもらって見送りにでかけました。
行きは成田から来たので帰りは羽田でいいのか心配になりましたが、確認するとEチケットを見せて大丈夫だと胸を張っています。
でも、ほんとうは大丈夫ではありませんでした。
羽田というのは本当でしたが、バンコク行きは上海乗り継ぎで、その上海の到着空港は紅橋で出発が浦東だと羽田のチェックインで判明したからです。

カウンターの航空会社の女の子は、ほんとうにたどたどしい英語で乗り換え手順を説明しますが、ダヴィドは理解できず、わたしが翻訳するという事態になってしまいました。
彼と長らく付き合うことでわたしのひどい英語も少しは上達したということのようです。
乗り継ぎ時間は3時間あって、移動は1時間半程度なので心配ありませんとカウンターの子は言いますが、彼はヴィザを持っておらず、言葉の通じにくい上海でバスかタクシーに乗って時間内に移動できるのか不安でなりません。

彼とは、到着時の新宿と同様、強く抱擁して別れました。
長い時間だったように思いますが、お互いの言葉はシンプルで、日本でのようにこの度はたいへんお世話になって…、のようにならないのがすっきりしていていいです。
わたしが最後にかけた言葉はグッドラックでしたが、よく使うこのフレーズが、こんなにもふさわしく感じられたのは初めてのことです。

翌日、メールが届きました。
やはり乗り継ぎは間に合わなかったと書いてあります。
よく読むと、やはり中国は日本とはまったく違う、いろいろな人がバスで行け、渋滞するからタクシーが早い、いや地下鉄が確実などとばらばらなことを言うので地下鉄に乗ったがチェックインカウンターがクローズしていた。
でも、別のところに言って説明したら30分後の便に乗せてもらえて、無事、バンコクに着けたとのこと。

それから地震のあった日にも大丈夫かとメールが届きました。
大丈夫、大丈夫と返信しましたが、その後、メールは来ていません。
バンコクに数日滞在したあと、どこかのビーチに行くつもりだと話していたので、きっといまごろはどこかの海辺のバーでビールでも飲んでいるのでしょう。
【M8/Sonnetar 50mmF1.1 F1】
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MS Optical Sonnetar 50mmF1.1 | trackback(0) | comment(2) | 2012/12/09 Sun

飛騨、神戸和宮崎

M8/Sonnetar 50mmF1.1
白川郷では早朝に起きて散策しました。
まだ明けきらぬ空気の中で見る合掌造りの古建築群は、霜の降りた白い大地に浮かび上がってまるで夢の中にいるかのようです。
せっかくの美景も、朝寝坊のダヴィドはもちろん、前夜早起きして散策したいと言っていた同宿の若い奥さんも明日の朝は寒くなるよーとの宿の主のひとことで断念してしまい、わたしの独り占めです。

豪勢な朝食の後、半分凍っている車に乗り込んで、奈良を目指しました。
といっても岐阜で借りた車を奈良で乗り捨てでは高くついてしまうので、また岐阜駅に戻って車を返却し、列車で奈良に向かいます。
岐阜から京都まではすぐ隣でそこで乗り換えてまた隣の奈良に行くのでそれほど遠くないとダヴィドに説明していたのですが、車内で何かがおかしいと気付きました。
岐阜と京都の間に滋賀があることをすっかり忘れていたのです。
滋賀といえばksmtさんでしたね。
どうかご許しを。

午後に奈良に着き、ここではホロゴンさんに来ていただき、世話の焼けるダヴィドの面倒を手取り足取りみていただきました。
ダヴィドのような超個性派は、並の人間では対応できません。
それを軽くこなし、しかも性格的に同調されていたホロゴンさんには深く感謝する次第です。

その後、ダヴィドはひとりになって関西を堪能したようです。
京都ではウクライナからの留学生と親しくなり日本論を交わしたそうですし、大阪では奈良で出合った英語がさっぱりできない女性たちと素敵なディナータイムを過ごしたようでその彼女から最高に楽しかったとわたし宛にメールが届き、神戸では念願の神戸牛を鉄板焼きで食べたと感激の電話が彼から来ました。
レストラン・バーを経営する彼にとって神戸牛を食することは最大の願いだったそうで、バルセロナ自治州レイダ県の高級レストランでその名を知って依頼それを食べる日を心待ちにしていたとのことでした。
今まで食べたビーフの頂点だったと感想を言っていましたが、その言葉は、高山での飛騨牛のときも、帰国前夜の宮崎牛のときも聞いたような気がします。

大阪で食事のあと若い男性にクラブに接待されたと言っていました。
高山に泊った時さるぼぼのキーホルダーが可愛かったので、ダヴィドにプレゼントすると彼も気に入って胸ポケットにずっと付けていました。
ダヴィドのヨーロッパのおっさん的風貌とのミスマッチが受けたのか女子高生から可愛いと言われるくらいだったのですが、たまたま高山出身のクラブのDJの目に止まって会話がはずみ彼がはたらいているクラブに招待されたということのようです。

関西のノリが関東とは違うと言うことはダヴィドも肌で感じたそうです。
言葉が通じなくても物怖じせずに意思を通じ合わせられるようなところがあるということなのですが、そういうノリは彼には経験なく面白がっているようでした。
それならずっとそっちにいてもいいのではと提案したのですが、もし、土曜にこちらに戻るようならいっしょにバルサを観ようとひとこと添えてメールを送りました。
バルサとはわれわれの共通の楽しみであるFCバルセロナのことで、これが彼を現実に引き戻すことになったようで、彼は東京に舞いもどって来ます。
わたしが薦めた高速バスではなく、新幹線でもなく、なぜか成田着の飛行機だったのがダヴィド流でした。
【M8/Sonnetar 50mmF1.1 F2】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
MS Optical Sonnetar 50mmF1.1 | trackback(0) | comment(0) | 2012/12/08 Sat

他的視線

M8/Sonnetar 50mmF1.1
わたしはカタルーニャ人だと、スペイン人とは違うことを強調していたダヴィドですが、ラテン系であることに違いはなく、そんな彼のテンポには何度も戸惑いを感じさせられる場面がありました。
その最大のものは、日本に来ると言う連絡です。
金曜の朝、メールをチェックすると、彼から来週か再来週に日本に行きたいと思っているとのメールが突然届いていました。
実はその金曜日にわたしは中国へ飛び火曜の朝に帰国したのですが、帰還早々メールチェックすると前日の日付で明日成田に着くので迎えに来てくれとのメールが来ているのに気付きます。

結局、彼はわたしより数時間遅れて成田に着いたのですが、さすがに迎えにまた成田へというわけにいきません。
午後になって電話がかかってきたので、京成のスカイライナーではなく、アクセス特急というのに乗って、途中乗り換えて新宿まで来るようにと指示すると、果たして2時間ほどで彼はやって来ました。
西口地下の交番前にいるというので迎えに行くと、かなりおおげさに抱きついてきて、久し振りだと激しい人通りの中30秒も抱擁しあいました。
すぐに、これまでの行程を話し出すので、すまんが今仕事中なので、続きは夕飯のときに聞かせてくれと、彼の手を引いて漫画喫茶に連れて行かなくてはならなくなりました。

彼はたぶんわたしより2~3歳下ですが、タウールでレストランを切り盛りする姿はとても頼もしく、さらには村のことバルセロナのことカタルーニャのことそれに自分のことを語る姿も静かでかつ力強く、わたしは彼を兄のように慕っていました。
ところが、日本での彼は少しスケールダウンして見え、日本に合わせようとしているのか、東京の人の多さに圧されてしまったのか、別人とは言わないまでも、あれっ、彼ってこんなだったっけという感想を持ってしまいました。
これが、ホーム&アウェイの洗礼というものなのかも知れず、わたしもあちらではそんなものなのでしょう。

外国人をバスに乗り遅らせるほど長話ししたことは昨日書きましたが、基本的にはかなりマイペースで、朝も起きるのはゆっくりその分身支度はテキパキかといえばペースアップの素振りもなく、時としてイライラさせられることになります。
ランチ後のカフェの他に、ランチとディナーでは必ずビールを飲むのが習慣で、日本人やアメリカ人のようにがぶっと一気に飲むのではなく、少しずつちびちびといった感じで飲んでいきます。
ゆっくり味わっているようで、わたしもヨーロッパを旅行すると思うのですが、これはとても好いことです。

そんなダヴィドですが、前にも触れたようにそうとう日本のことが気に入ったようです。
日本に来た外国人のほとんどが思う日本人の礼儀正しさについては、彼も真っ先に言及していて、だから日本人は信用できると言っていました。
わたしも、そんな環境で生活しているから、日本人は海外へ行くと犯罪に合いやすいし、逆に中国や韓国などからスリとかピッキングの犯罪集団が来て困っているというと、納得しています。

新宿に着いた翌日に言っていたのが、不揃いのビルが並ぶ町並みの美しさでした。
ふつう日本人はパリやロンドン、ウィーンなどヨーロッパの都会へ行くと、高さや幅、外観などが揃った建物が並んでいるのを美しく感じるので、彼がまったく反対のことを言っているのが不思議でした。
彼に言わせると、整然とビルが並んでいるのがあたりまえという意識から新宿のビルの並び方を見ると、とても個性的で限られたスペースで精いっぱい表現できることをしようとしているようで、見ていて飽きないとスマートフォンに動画撮影しています。

こう書いていくと、ヘンなところにばかり感心する変わり者と誤解されかねないですが、先鋭なセンスとユーモアの心を常に持ち合わせた、典型的なヨーロッパの青年だとわたしは思っています。
彼は、携帯があるから気にしないのかカメラを持っていません。
そこで、日本滞在中使ってとわたしのコンパクトデジタルを貸したのですが、慣れないカメラをかなり鋭い使い方で楽しんでいたのが印象に残りました。

作例はそんな彼らしさを伝える1枚で、これはわたしが撮影したものですが、彼がここへ来いと呼んで、姿勢をもっと低くほらと、建物の陰で金魚が浮かび上がり、建物が上下に写り込み、さらにどんよりした雲も浮かんでいると、その位置と角度からのみ見える絶妙のポジションであることを教えてくれたのです。
ただ、結果には50mm標準のわたしと28mm広角の彼との大きな違いがありました。
だから彼の望む絵を撮るためには、わたしはずっと後方まで下がらなければいけなかったのですが、カメラに関心のない彼にはそのことは分からないかも知れません。
ダヴィドが見たらこれは違うと言いそうですが、彼の撮ったような作例としてこれをアップしなくてはと思いました。
【M8/Sonnetar 50mmF1.1】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
MS Optical Sonnetar 50mmF1.1 | trackback(0) | comment(0) | 2012/12/07 Fri

他的女的朋友們

M8/Sonnetar 50mmF1.1
恒例のコーヒータイムにちょうどよく合掌造り民家の喫茶が見つかりました。
ダヴィドのためにコーヒーを濃く淹れてとお願いして、自らはぜんざいを頼みました。
ここのぜんざいは、囲炉裏に置かれた鍋が常に熱々なうえに、おかわり自由というこのお店の名物のようです。
外気温は4~5度と寒く、ぜんざいの甘さが全身に沁み渡りました。

囲炉裏の1辺にふたりずつ掛けるようになっていて、この囲炉裏には4組8人が坐していましたが、向かいの女の子がふたりが英語ができるのでダヴィドはその横に行っておしゃべりを始めてしまいます。
ずっとむさい男のヘタな英語に付き合わされていたので、彼女たちふたりとも美人ですし(作例ではそれが分からずで申し訳ないです)、確たにわたしよりずっと英語は達者のようですので、放っておいてわたしはぜんざいに専念します。

ダヴィドは30分も話していたのではないでしょうか。
せっかく白川郷まで来て、日も短かいというのにこのままではもったいないからと彼らをうながして散策を再開しました。
その白川郷はもとより、郡上八幡、高山といずれもすばらしいところでしたが、今回はダヴィドが主題ということにしているので、写真や説明などは省略させていただきます。
いずれ何かの折にと思っていますが、できれば今すぐにも再訪してゆっくり歩きたいなあと考えています。

5時にはほぼ真っ暗になったので宿に戻ったのですが、夕飯は6時半からだと言うので割引してくれるという温泉に行くことにしました。
宿からだと歩いて15分ほどのようですが、真っ暗ですし、帰りに湯冷めしたら風邪をひくからと車で向かいました。
途中、部屋で飲むための地酒を探そうと、村落で唯一あいていたみやげ物屋に立ち寄ります。
するとぜんざいの店でダヴィドが会話していた女の子たちがみやげ物を物色していました。

日本人にしか見えなかった彼女たちは実は香港人だそうで、どおりで英語が上手いわけです。
4人で話すとわたしがあきらかに劣っていますが、心優しい3人はわたしのレベルに合わせてくれていてどうにか着いていくことができます。
話を聞くと、彼女たちは高山に宿をとっていて夕方移動するつもりだったのに、バスに乗り遅れて次のバスまで時間つぶししているとのことでした。
我々は高山に寄ってから来たので、どこそこが良さ気だなどと説明して(実際にはろくすっぽ高山を見ていない)、では、気を付けてと分かれました。

さて、温泉ですっかり温まっていい気持ちで宿に戻ると、路上にヘッドライトで写し出された人影があります。
彼女たちです。
急停車してどうしたのか聞くと、バスの時間にはまだ1時間あって、みやげ物屋も閉まったので仕方なく散歩しているとのこと。
日中で4~5度ですからもう0度前後に下がっているのではと思われ放っておくわけにはいきません。

宿の許可をもらって、彼女たちにはわたしたちの部屋でバスの時間まで待ってもらうことにしました。
相当参ってしまっていたのでしょう、彼女たちは申し訳ないと何度も何度も礼を言います。
ダヴィドはノープロブレムとか言っていますが、わたしは、いや君があんなに長時間彼女たちと話してたからこんなことになったんだ、だから神さまが彼女たちにわれわれを導いたんだよ、われわれこそ彼女たちに謝らなくてはとたどたどしく言ったのがみんなに受けて、わたしも面目を保ちました。

宿の旨い食事のことも省略させていただいて、わたしたちはバスの時間の10分前にバス停に向かいます。
ところがそれからずっと待てど暮らせどバスはやって来ません。
理由は不明ですが、20分経過したところでこれはもう来ないのだろうとあきらめて、わたしは高山まで送るからと彼女たちにしょぼい英語で説明します。
彼女たちの嬉しそうな顔は忘れられるものではなく、それを見ただけで往復1時間半の道のりはまったく苦に感じられないほどのものでした。

食事に付き合い、そのあとバーで再会を願って乾杯してから彼女たちをホテルまで送り届けます。
そのバーは前日にも訪れていて、めずらしい外国人客として歓迎してもらい、また明日も来てねと言われてダヴィドがもちろんと約束した店です。
いい加減な約束をしてとあきれていたら、期せずしてその通り再訪することになりました。
バーでの会話も大いに盛り上がったので、当初彼女たちには災難でしたが、関わった人みんながハッピーになれた素敵な夜でした。

さて、彼女たちは、前にも書いたように香港から来た美人ふたり組みです。
わたしの年末年始の休暇の予定が、香港経由で中国をふらつくことと決まったので、昨日そのむね彼女たちにメールすると、では香港で食事にインバイトしたいと返信がありました。
先日のことは気にせずと返事を書くと、友だちが香港に来るのだから当たり前とまた返信が着きます。
ダヴィドのおかげで、1ヶ月後に大きな楽しみができました。

とは言え忘れられないことがひとつあります。
彼女たちとホテルの前で別れる時、わたしは車内で熱い両手握手をして好いお別れだと思いました。
ところが、ダヴィドは助手席から降りて、彼女たちとハグしたうえに、頬にキスしているではないですか!
【M8/Sonnetar 50mmF1.1】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
MS Optical Sonnetar 50mmF1.1 | trackback(0) | comment(0) | 2012/12/06 Thu

美少年

M8/Sonnetar 50mmF1.1
わたしはスペインに3度行ったことがあると言っても驚く人はいないでしょう。
スペインは国土が広く国中に観光地が点在しているので、3回行ったくらいでは足りず、何度も何度も訪れる人がたくさんいるからです。
しかし、その3度のスペインはすべてバルセロナとカタルーニャ地方にだけ行ったのだと言えば、多くの人が驚くようです。
スペインには好いところがたくさんあるのに、なぜカタルーニャばかりなのか、と。

それを説明していたらダヴィドの話まで辿りつけなくなってしまいそうなので省略しますが、ひとことで言えばわたしがバルセロナとカタルーニャを取り巻くあらゆることが大好きなのです。
もともとFCバルセロナのサッカーを観たくてバルセロナに行き、ガウディの建築を訪ねるべくバルセロナを歩き、ロマネスク建築の至宝を味わうべくカタルーニャを廻ったのですが、そのハイライトとも言うべきタウールという寒村にあるサン・クリメンテ教会に胸を打たれ、その教会と接するレストランバーのオーナーであるダヴィドとの出合いに感激して、バルセロナとタウールが自分の心のふるさとのように思えてならなくなってしまいました。

ダヴィドはどんな半生だったのでしょうか。
生まれ育ったタウールは小さな村ですが、たいへん有名なロマネスク教会が3つもあったため観光客はむかしからあったようで、父親がはじめたレストラン・バーはそこそこに繁盛していたようです。
成績が優秀だったようで、彼は高校を卒業するとバルセロナの大学へ進み、英語を中心に広く語学を勉強しました。
そのころの写真を見せてもらいましたが、作例のでっぷりした姿がウソのように華奢で金髪を長く伸ばした美少年です。
ベイシティローラーズ(古い!)の写真だと言っても通用するでしょう。

卒業後、彼は英語を極めるべくアメリカに1年滞在します。
わずか1年の間に、ニューヨークで知り合った女性と同棲したり、レストランでアルバイトしたり、あるいは田舎からやって来た友だちと2ヶ月レンタカーの旅をしたりとさまざまな経験を積みます。
遊び過ぎとの反省があったのでしょうか。
その後、カナダのエドモントンの大学に留学したのですが、それからほどなくで彼にはとても辛い知らせが届きました。父親の突然の死です。

悲劇はそれに止まらず、翌年にはなんと母親までもが急逝してしまいます。
急遽タウール村に戻り、残された姉たちと家族会議をおこない、人に譲ってしまうか悩んだレストラン・バーを彼が引き継ぐ大決断をしたのでした。
彼がその前にどのように考えていたのか聞きませんでしたが、留学までするくらいですから、あるいは今ごろは国際的なビジネスマンかカタルーニャ議会を代表する政治家になっていたかも知れません。

ただ、この時の決断があったからこそ、わたしは彼に出合うことになります。
人口150人の小さな村には英語を話す人はほぼいませんので、あのとき彼がそのままカナダに止まっていたら、わたしはタウールで誰とも口を利くことなく、ただ美しい村との印象を持っただけで再び訪れることはなかったと思います。
そのタウール初訪問は1994年、アメリカワールドカップが開催された年です。
思えば、ダヴィドがレストラン・バーで仕事を始めてまだ間もないころだったはずで、そんなころに出合ったからこそ彼の方でも遠方からやってきたわたしを暖かく迎えてくれたのでしょう。

さて、旅は進んで、午前中に高山を出発して昼過ぎに念願の白川郷に到着しました。
いわずと知れた世界遺産ですが、実はダヴィドのいるタウールを含む周辺一帯のボイの谷も世界遺産に登録されています。
歴史背景こそ違いますが、それぞれ港町のバルセロナと名古屋から車で3時間のタウールと白川郷は古い建築のある山間の村という共通点があるので姉妹村の協定でも結べばいいのになどと言ってみます。
ダヴィドも、そうなれば、またその関係で日本に来れるかもねと笑っています。

そうだ、思い出しましたが、彼は地元ではカタルーニャ語で会話し、公用語としてのスペイン語も日常的に使っています。
英語は前述のとおり問題ありませんし、同的に勉強したドイツ語やフランス語も会話可能とのことでした。
カタルーニャ語に似ているというイタリア語とポルトガル語も普通にしゃべれるそうで、東欧以外のヨーロッパと南北アメリカ大陸では言葉がまったく不自由しないということになります。
わたしはさすがに日本語は問題ありませんが、中国語もぺらぺらだと誤解されているようです。
ボクたちふたりが旅行すれば地球上のほとんどの地域で言葉の問題がなくなるねと、いかにもそんな企画を考えていそうなそぶりで話すのです。
【M8/Sonnetar 50mmF1.1】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
MS Optical Sonnetar 50mmF1.1 | trackback(0) | comment(0) | 2012/12/05 Wed

和尚喜歓吃牛肉

M8/Sonnetar 50mmF1.1
昨日、友人のことをスペインから来たと記してしまったかも知れません。
これは、本人が聞いたら怒りだすかも知れない重大な過ちでした。
彼は、バルセロナから車で3時間くらいのいなか町で暮らすカタルーニャ人です。

折りしも日本のニュースでも報じられたように、先日、カタルーニャ州議会が選挙をおこない、独立支持派が票を伸ばしたことで、カタルーニャ独立の機運がますます高まっているところです。
彼が日本で出合った人には自らをスペイン人とは言わずカタルーニャ人だと紹介し、もしかしたら世界一新しい国になるかもと言ったのは、彼らを代表しての発言だったのですね。
当然、パレスチナのことにも強い感心を持っていて、昨日のニュースで国連で国家と認められたと言っていたよと伝えると、それはすばらしいと他人事とは違う反応を示していました。

彼の名は、ダヴィド・バルダジ。
英語で他の人と話す時は、自らをデイヴィッドと英名で呼びます。
高山では作例のあたりに古刹が並んでいて、それぞれに○○寺、××寺と日文、英文で書かれていたので、彼はjiはtempleのことかと気付きました。
じゃあ、ボクの名前はバルダテンプルだねと言って笑います。
失礼ながら彼の髪はかなり薄いので、わたしもバルダ寺のダヴィド和尚と密かに呼んだりしていました。

郡上八幡を駆け足で見てまわってからランチをとり、さあ、高山を目指すぞと考えていたところ、思わぬことで出発が遅れました。
ひとつは、彼の長年の週間である食後のコーヒーです。
何度か缶コーヒーで妥協してもらったことはありましたが、基本は濃厚に淹れたコーヒーにミルクたっぷり砂糖は2~3個をゆったりと飲まねばなりません。
さいわい八幡で見つけた喫茶店はこんなわがままな要望を聞いてくれたので、彼も幸福そうな顔でコーヒーをすすっていました。

もうひとつは、東京で食事をするときに店の前に置かれた食べ物のサンプルに彼が関心を持ったことに端を発します。
あまりに精巧にできた食品サンプルにこれは食べることができるものなのかと聞かれましたが、つくりもので食べられないと答えると、さすが日本人はこんなものにもこだわるのかと感心しながら、ジャパニーズ・プラスチック・フードなどと呼んでいました。
なんと、その工房が郡上八幡を歩いていて偶然にもあって、ちょっと見て行こうとなってしまったのです。

その後は高速を飛ばしましたが、高山に着いたのは予定を大幅に遅れた4時半になってのことです。
あわてて有名な古い町並みを歩いてみましたが、すぐに日が暮れてしまいちょっとがっかりでした。
宿は、前日の某ホテル予約サイトで高山で唯一空き室のあった旅館に素泊まりです。
食事は、いたるところで見かけた飛騨牛を食べに行くことにしたのですが、街中でもなかなかレストランが見つかりません。
某店のオーナーによると、ほとんどの観光客が旅館で食事するので7時くらいには店を閉めてしまうとのことです。

さんざん歩いてようやくここぞという店を見つけたのですが、ダヴィドが乗り気ではありません。
店名がフランス語なのでフランス料理のようだが、どうせ高価なビーフを食べるのであれば、日本食レストランで食べたいともらしています。
ではと再び歩き出すと、かなりおしゃれな店が見つかり、メニューを見るとそれほど高くなさそうです。
お腹すいたし、疲れたしで、条件反射的にのれんをくぐってしまいました。
かなり奮発したこともあり、いろいろな肉を食べられてダヴィドは大満足だとご機嫌でよかったと思います。
ただ、彼は気付きませんでしたが、ここは日本食ではなく焼肉屋です。
コリアン・レストランだと告げるべきか悩みましたが、彼の顔を見るととても真実を伝える気持ちにはなれませんでした。
【M8/Sonnetar 50mmF1.1】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
MS Optical Sonnetar 50mmF1.1 | trackback(0) | comment(0) | 2012/12/04 Tue

朋友突然過来

M8/Sonnetar 50mmF1.1
先週末は3連休でしたので、これを利用して飛騨と奈良を旅してきました。
3日間ではかなりの駆け足でしたが、天気に恵まれとても楽しい旅になりました。
学生時代に1度高山を訪れたことがありますが、飛騨方面を旅するのは初めてに近いものがあり、この地域の文化のすばらしさ、それを誇りにする人たちにわずかながらも触れることができた満足感もあります。

ところで、今回は、ひとり旅ではないですし、レンズの仲間との旅でもありません。
スペインから突然やって来た友人が旅のパートナーです。
初来日ですからパートナーというよりは、彼がメインでわたしはガイドだったわけですが、わたしがガイドに徹したかといえば、飛騨で見るものにことごとく感動して彼よりも旅を楽しんでしまったかなとの反省もあります。
旅を前日に決めた時、飛騨を案内すると言うと何度も行ったことがあるんだと聞かれ、いいやほとんど初めてと答えたら、大笑いして自分も旅をしたくて行くんだなと察してくれるような間柄なのでまあよいですが。

そう、旅は前日に急遽決まったのです。
彼の滞在は2週間で京都には行ってみたいと言っていたので、ではともに京都へ行くかと考えたのですが、京都のような国際的な都市なら彼ひとりで歩いてなんら支障はないでしょう。
もっと違うところはないかと考えて、ハッと閃いたのが高山や白川郷への道でした。
ひとつは、これだけ日本の伝統やいなかの良さを体感できるところはなかなかないだろうということと、東京から西進することで、日曜に分かれることでスムーズに京都方面に向かえると考えたからです。

そこまで考えてからもうひとつアイディアが電光石火浮かんできました。
飛騨から関西は近いので、日曜に奈良まで行って、当地のホロゴンさんに会い、奈良を案内いただきつつその後の関西の歩き方を伝授してもらったうえでわたしは東京へ戻るというのはどうだろうという案です。
ホロゴンさんの写真では、中国、ネパール、パキスタン、トルコ等のものを見せていただいていて、語学も堪能そうで、何よりスペインから来る友人と性格面で合うところがあるように思われたのです。

ホロゴンさんは忙しい方ですが、突然の電話に快諾してくれました。
たいへんなご迷惑をおかけすることになってしたしまったにらも関わらず、表情に出すことなく、初めから古い友人のように接していただいたことにお礼の言葉もありません。
とにかく、ホロゴンさんの了解によって、急遽決まった旅も不安なく進めていくことができたのです。

新幹線は3連休のため自由席になってしまいましたが、30分並んだことで座って名古屋まで行くことができました。
在来線に乗り換えて岐阜駅からレンタカーで東海北陸自動車道を北上していきます。
寄れたらぜひと思っていた郡上八幡ですが、予定より1時間遅れだったものの、強引に立ち寄ることにしました。

美しい町並みにはふたりとも感激だったのですが、まず歩きはじめて最初に見つけた車に紅葉がかぶさるように乗っかった場面でした。
それ自体面白かったのですが、彼にとってはヨーロッパにない軽自動車のコンパクトさがたいへん新鮮だったようです。
特にミジェットを見た時は、購入してスペインに持ち帰ることも検討していたようです。

モコという名前を見た時は大笑いしていました。
どうしたんだと聞くと、スペイン語でモコって何という意味か知っているかと聞かれます。
知らないと答えると、鼻水だ、どうしてこんな名前なんだと笑っていたのです。
モコは日産のようですね。
スペインや南米の人が来日してはこの名前を見て笑われているのを、フランス人社長はご存知ないのでしょうか。
【M8/Sonnetar 50mmF1.1】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
MS Optical Sonnetar 50mmF1.1 | trackback(0) | comment(2) | 2012/12/03 Mon

袖子長一点

M8/Sonnetar 50mmF1.1
恵東のシリーズの最後は、かつてよくそうしたように、旅で出合った美女の作例で締めくくらせていただきます。
美女という表現にはほとんどの方が同意してくれないかも知れませんが、形容詞としての美という文字は絶対的な基準があるわけではないので、わたしの価値判断で美女だということにしました。
ピカソの各時代、シェーンベルクの十二音技法を取り入れる前後、キノ・プラズマート2インチF1.5の描写、どれもが美しいという人と、どこがだという人に2分されるはずですから。

むしろ見ていただきたいのは、彼女たちが着ている上着です。
いずれもかなり大きめのものを着ているのですが、お兄さんのおさがりを着ているとかそういうふうではなく、想像するに高校を卒業するまで着なくてはいけないので、その時の自分の大きさを想定したサイズの服を買っているのではないでしょうか。
これは丈の長さではなく、あくまで袖の長さのことです。

家が雑貨屋をやっていて、住んでいるのはかなり大きな建物で、かつ先祖を祀る祠堂が併設されているので一見そこそこ裕福なように見えます。
しかし、農業以外にこれといった産業があるように見えないいなかの村では、それほど現金収入があるわけもないのでしょう。
彼女たちの方から自主的に服を倹約しているようで、何か切ないものを感じました。

右側の女の子が雑貨屋の看板娘の肖美蓉で、3日前の少女は彼女のお兄さんの娘なのでおばさんということになります。
お兄さんは30歳くらいに見えるので15歳程度は離れた末っ子ということですね。
隣のちょっとだけ長身の女の子は楊勝意。
斜向かいの家に住んでいて、同学年の幼なじみです。
お兄さんがいるというので、お姉さんがいないか聞きましたが、残念ながらいないそうです。

美蓉は(美容ではありませんよ、念のため)将来イギリスに行くことが夢だと語っていました。
好きな科目は英語ですし、時間があると英語の音楽を聴くのが好きだと少し恥ずかしそうに教えてくれます。
外国に行くのであれば大切なのは現地の人とコミュニケーションをとれるかどうかなので、もっと勉強しないといけないねと、自分の英語力・中国語力にフタをして目標をもって学習する意義を説きました。
初めて会った外国人とこうしてやり取りで来ていることに自信を持つことができた彼女は、がんばろうと思ったに違いありません。

彼女たちとは電話番号を交換しようとしましたが、ふたりとも携帯電話を持っていませんでした。
少しだけ恥ずかしそうに中学生だから、まだ、とうつむく姿がまた切なさを思い出させます。
幸いなことに家にはPCがあって、メールアドレスがあったので、これを交換することにしました。
ここのところずっと忙しくてメールを書く時間がとれませんでしたが、今度の週末にメールしてみようと思います。
返信はくるでしょうか。
【M8/Sonnetar 50mmF1.1】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
MS Optical Sonnetar 50mmF1.1 | trackback(0) | comment(0) | 2012/12/02 Sun

向下一個古鎮

M8/Sonnetar 50mmF1.1
皇思楊村から10キロ圏内にもうひとつ古鎮があると情報を得ていたので、続いてそこを訪れるつもりでいました。
というよりは、皇思楊村は一度来ていますので軽く流して、もうひとつの村の方をメインに見て回るつもりだったのです。
しかし、スイカを食べ終わったあとも、中学生少女の家で雑談をずっとしてしまったため時間がなくなってしまいました。
お母さんには、よかったら娘を嫁にあげるから日本まで連れて行ってとまで懇願されましたが、立ち去るときに、では日本に連れて帰りますと冗談でかえして彼女には、バス停まで送ってもらいました。

だいぶ待ってようやく遠くにバスが見えて来ました。
彼女たちに、では英国式でとことわってハグして別れたのですが、停まるはずのバスは満員のためそのまま素通りしてしまい、なんとも気まずい雰囲気になります。
どうしたわけか次のバスも超満員で停まってくれません。
まるで、この村に泊って行けと言うかのようです。

そういうわけにもいかないので、バイタクとかないかなあと聞くと、多祝鎮まで行けばあるはずと言います。
ではみんなで歩いていこうとなりました。
言い忘れましたが、彼女たちふたりの他におとといの写真の女の子と愛犬も付いて来ていました。
桃太郎の鬼退治のような奇妙な取り合わせの一行に見えたことでしょう。

意外に近かった多祝鎮にはわずか10分ほどで着き、なるほどすぐにバイタクも見つかりました。
ですが、女子中学生との行動で舞い上がってしまったのか、わたしは行こうと思っていた村の名前が思い出せなくなっていました。
増光鎮の古鎮だとだけ覚えていたのでそう伝えますが、バイタクのおやじさんは首をひねっています。
では増光鎮付近の古い家があるところは知らないかと言うとそれなら分かるというので、バイクに跨ります。
彼女たちとはここでお別れですが、さすがにバイクが集まっているところでの再度ハグをする勇気はありませんでした。

20元というのを彼女たちとタッグで17元まで値切ってもらいましたが、バスでは近く感じられた距離がバイクでは案外遠く、3元も値切ったのは悪かったかなあとも思いました。
さあ、着いたぞと古い家の前で停めてもらった時は確かにそう思ったのですが、ちょっとしてからこれはヤラレたと気付きます。
古民家はこの作例の家だけで、ここはどこからどう見ても古鎮ではありません。
家の人たちには事情を話して、近くに古い家が集まっているところはないか聞いてみたものの、彼らは首を横に振るばかりでした。
結局、古鎮は見つけられず日も陰って来たので帰途に付いたのですが、尻すぼみのデイトリップになってしまったようです。
【M8/Kino-Plasmat 1inF1.5 F1.5】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Meyer Kino-Plasmat 1inF1.5 | trackback(0) | comment(0) | 2012/12/01 Sat
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