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法国的鏡頭

M8/Cinor 50mmF2
撮影時間の短い出張ですので、大きなカメラはできれば持って行きたくありません。
パルナック・ライカに沈胴レンズを付けてポケットに忍ばせてというのが理想的のような気がします。
しかし、いつものようにライカM8で、これはポケットに入りませんので、出張用のカバンを肩から提げて隠すようにしまいます。

レンズは、SOM Berthiot Cinor 50mmF2 です。
詳細はつまびらかではありませんが、Cinor というのは、名前から分かるようにシネ・レンズに与えられたネーミングのようです。
所謂Cマウントの状態で売られていましたが、黒い鏡胴は一連のボレックス用レンズとの共通性を感じます。

ライカ・マウントへの改造はいつものとおりMSオプティカルに依頼しました。
16mmシネ・サイズの細身の鏡胴ということと、あるいは戦前の製造と思われるクラシックな外観から、特別にズマールのヘリコイドに移植してもらいました。

50mmF2 の古いレンズということで、オーソドックスなゾナーかダブルガウス型の構成が予想されます。
しかし、宮崎さんからの回答は4群6枚ですが、ガウスではなく意外にも、クセノタール型となっています。
つまり、後群が1枚1枚の2群ではなく、1枚2枚張り合わせとなっています。

一旦は納得ですが、疑問が頭をもたげます。
クセノタールは戦後の設計のはずです。
その前身とも言えるレイのユニライトも、キングスレークの「写真レンズの歴史」を調べると1944年の設計となっていました。
戦前のレンズに見えるこのシノールがクセノタール型というのは、どうも合点がいきません。

もしかしたらと気付いて、あらためてキングスレークをあたるとやはりそうです。
1931年にルドルフが設計したF2.7のミニチュア・プラズマットがまさに同様のデザインでした。
キングスレークは、ミニチュア・プラズマットを複合型に位置付けて、前群は通常のガウス型で、後群はプラズマットの後ろ半分を用いていると書いています。

年代が合致するのか不明ですし、F2.7とF2という大きな違いはありますが、何らかの関係がある可能性は皆無ではないでしょう。
ミニチュア・プラズマットは35mmカメラ用としては、成功したとは言えず、希少なレンズのひとつと言えます(kino plasmat さんのホームページに紹介があります)。
あるいは、日の目を見たとは言えないミニチュア・プラズマットを再設計したのがこのシノールではないかと、関連付けたくなるのですが、この辺は根拠がまったく無く、わたしの想像ないしは希望の範疇を出ません。

ksmt さんも、ミニチュア・プラズマットを追い求めて、ついに同型のキヤノンのレンズを見出したということを書かれていました。
こんなことからも、数少ないミニチュア・プラズマットの系列というものに位置付けたいのですが、回答が得られるわけではありません。

なお、キングスレークのミニチュア・プラズマットの記載は、次のように続きます。
「このレンズは特に良いところもなかったので、すぐに製造打ち切りになった。
性能の良かったレンズはこれより前の1926年に出たF2.9マクロプラズマットで…」
けっして性能の悪いレンズではないと思うのですが。

締めくくりに以下の記述があって、系列に仲間がひとり加わったことを喜びたいと思います。
「ミニチュア・プラズマットは4個の部品が絞りを中心にし+-:+-の順に並んでいる。
この配列をベルテレが復活させて、コンタックス・カメラ用の35mmF2.7を設計した。
このレンズをビオゴンと名付けた…」
【M8/Cinor 50mmF2 F2】
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thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
SOM Berthiot Cinor 50mmF2 | trackback(0) | comment(2) | 2010/03/31 Wed

突然去那里

M8/Cinor 50mmF2
朝の尾道散策の写真を1週間続けることになるはずだったのですが、思わぬ幸運が待っていました。
遅くまでかかるはずだった仕事が、翌日持ち越しになったことで時間がぽっかり空いてしまいました。
夜の接待まで3時間近くとれたため、どうしようかとなります。
そこで、頼んで連れてきてもらったのが鞆の浦です。

鞆の浦は、尾道の隣の福山市にありますが、尾道駅付近から車で1時間近くかかります。
行き帰りの渋滞も考えれば現地には30分も滞在できないでしょう。
それでも、こんな機会が今後起こることはないでしょうから、頼み込んでいっしょに出掛けてみたのでした。

さすがにカメラを持って来ていることは内緒ですので、鞆の浦で橋をかけるか否かでたいへんな話題になっているのでぜひ見てみたかったのですと強引な理由を押し付けたのでした。
実は、仕事先の方で鞆の浦近く出身の方がいて、雑談の中で鞆の話が出ていたのも布石になったりしています。

最初に訪れたのが、福禅寺ですが、ここには対潮楼という座敷があって、畳に坐して眼下の海や島を眺められる名所になっています。
ここでカメラを出してはバレバレですので、素知らぬ顔でひとり先に抜け出したことが、なかなか絵になるシーンの目撃につながります。

先に来て、次はどこへいこうかねえと作戦会議を立てているのは、おばあさんとそのお孫さんでしょうか。
吹きさらしで寒い境内で、日向に腰掛けてふたり地図を食い入るように見つめます。
ふたりしてスポーティな出で立ちに、荷物満載のバックパックが存在感いっぱいです。

わたしはあくまで仕事の合間にちょっと覗きに来ているだけです。
しかし、彼らは、わたしに代わってこの土地を旅してくれているかのようです。
頑張れと声をかけたかったのですが、胸にしまいこみました。
スーツ姿でこんなところにいて、あまり話しかけるのもヘンな気がしてしまったのです。
【M8/Cinor 50mmF2 F2】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
SOM Berthiot Cinor 50mmF2 | trackback(0) | comment(10) | 2010/03/30 Tue

黒猫白猫

M8/Cinor 50mmF2
2年半振りになりますが、尾道へ行ってきました。
その2年半前は出張だったのですが、今回も悲しいことに2泊3日の出張です。
スケジュールも前回同様で、朝から日中は仕事が忙しく、夜は接待やらお付き合いやらがあるようです。
結局のところ、朝早く起きて1~2時間近隣を散策するより手はないようです。
M8に標準レンズ1本を忍ばせての出張になりました。

初日のハードな仕事と12時近くまでの接待の明くる朝、6時に起き出して仕事先へ出掛ける8時までさっそく散策してみました。
駅前のビジネスホテルを出て線路に沿って東の方向へ歩いていきます。
すぐ踏切があるので、ここを山側に渡るとすぐに古寺めぐりコースの案内があります。

地図で見ると、線路に沿ってお寺がいくつも並んでいます。
数えるとなんと24もあって驚かされます。
アップダウンの激しい細い道を行くので正確ではありませんが、ちょうど中間にある千光寺公園行きのロープウェイ乗り場まで30分、地図の右端の海龍寺までさらに30分というところでしょうか。

ぎりぎり往復できる時間ですが、それではただ行って戻って来るだけでつまらないです。
では、半分のロープウェイ乗り場辺りまで歩いて、商店街を抜けて帰ってくることにしましょう。
ビジネスホテルの朝食代600円は、わたしのランチ1食分よりずっと高いので、途中コンビニでおにぎりでも買わないといけません。

のんびり歩きだします。
今日は冷え込みが厳しく起きるのにもたつくほどでしたが、天気が上場で歩くとすぐに温まってきます。
それでいて空気がきりっと冷たく気分を引き締めてくれます。
寒い日の散歩のよいところです。

しかし、平日で朝早いのと寒さのせいでしょうか、前回のようには地元の方の姿を見かけません。
空は青く、前方に見えている向島の間の海は陽の反射できらきらしています。
あとは、散歩してる人とか、通学途中の学生とか、掃除している人、包丁がまな板にあたる音とか朝の調理の風景を連想させるもの等々そんな演出が欲しいところです。

ようやく出合ったのが、黒と白の猫でした。
逆光で1枚目は真っ白でしたが、この2枚目はハレ切りして少し見られる絵になりました。

現代レンズで光をシャットアウトしてもいい感じになるのでしょうが、わたしはオールドレンズが写しだす光や撮影時を思い出させるまぶしさが写り込むのも好きです。
フレアの白い対角線が、黒猫と白猫をすっぱり分けているのは、自然の演出です。
【M8/Cinor 50mmF2 F2】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
SOM Berthiot Cinor 50mmF2 | trackback(0) | comment(4) | 2010/03/29 Mon

在銀杏樹的前面

M8/Hektor 5cmF2.5
この日の散歩ももう終了です。
帰り道、鶴岡八幡宮に寄って見てこなくてはというものがありました。
ニュースでも報道されましたが、3月10日、樹齢千年の大銀杏が強風で倒れたのを見ておきたかったのです。

倒れた銀杏でしたが、根はしっかり残っていたためここから芽吹き、さらには幹も隣に植え直してこれが根付くよう神事が行われたと続報がありました。
80人の神職と巫女が祝詞を上げ、宮司は「今まで我々は大銀杏に見守られてきた。これからは私たちが大銀杏を見守ってあげたい」と語ったとのことです。

1219年、三代将軍源実朝が銀杏の木に隠れていた甥の公暁に暗殺されたことから、隠れ銀杏の愛称も持つ大銀杏は歴史を見続けてきた証人であり、市民から愛され続けた鎌倉のシンボルでした。
それが、倒れてしまったわけですが、あらためて神事を受けて再生するのです。
それは、どうしても見ておくべき、大切なものでした。


ふたつの大銀杏に手を合わせた後、撮影すべくカメラを構えていると、後ろから声がかかりました。
わたしが持っていたライカに関心があったようで、話しかけてこられます。
ライカ・ファンは少なくないでしょうからこういうことはたまにはあります。
むしろ、誰かがライカを使っているとこちらが声をかけることの方が多いかもしれません。

なにしろM8というデジタルカメラに、1930年代のニッケル・ヘクトールを光らせ、さらにUV/IRフィルターまで先端に付けて、ウッドグリップで固めています。
そんな姿が話しかけのきっかけだったようです。

いずれにしても、撮影していて声をかけられるなんて、普通にありがちな話です。
しかし、声をかけてこられたのは、普通の方ではありませんでした。
写真家でした。
しかも、土門拳賞を受賞されているような方です。

この日はほぼ徹夜をして鎌倉を歩いたので、途中からかなりぼんやり状態になっていました。
長い時間のようで、恐らくはわずかな時間、いろいろな話を聞くことができました。
この時の会話は鮮明でしたが、帰りの電車で眠ってしまったため、目が覚めたときあるいはこの出来事自体も夢だったのではと真剣に思ったりもします。

しかし、自宅に戻りはやる気持ちを抑えつつ写真データをPCで確認すると、そこにはまさにその写真家を撮らせていただいた写真がありました。
夢ではなかったようです。
ご本人の了解を得ていませんので、こんな程度しか書けませんが、やはりわたしにとっては夢のような出来事だったとだけ報告させていただいて、鎌倉散歩の締めくくりといたします。
いずれ、続編を報告できることを期待しつつ。
【M8/Hektor 5cmF2.5 F2.5】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Leitz Hektor 5cmF2.5 | trackback(0) | comment(6) | 2010/03/28 Sun

三大之一

M8/Hektor 5cmF2.5
建長寺で粘り過ぎました。
時間を気にしつつ、鎌倉宮方面を目指すことにします。
鎌倉街道をまたしてもせかせか下って行きました。
わずか5分で鶴岡八幡宮に着きますが、ここは西側の門から入って敷地を横切ってしまおうという作戦です。

明月院と建長寺がずいぶんと静かだったのに、八幡様にはすごい人がごったがえしています。
メインの階段を降りようと思っていたのに、ここは上り専用ですので、前方の階段から下りてくれと指示されてしまいます。
こんなのは初めてです。

源頼朝の墓、鎌倉宮と参ったところで、かなり陽も傾いてきたので、そろそろ折り返すことにしました。
だいたい予定通りという感じです。
しかし、せっかくだからと寄ったのが荏柄天神社です。
何年か前に一度来たきりと実に久しぶりの参拝です。

ここも菅原道真を祀ってあるということで学問の神社との印象があります。
3月末のこの時期では学生の来訪も無く、閑散としているのではとの不安がありました。
しかし、ここが意外なほど人出でにぎわっていて、狭いスペースに思い思いのひとたちが歩いています。
観察するに、ここが好きだから来たとか、好いと聞いて来たとか、少なくとも通り道だから来たが期待以上に好かったという空気を感じます。

鶴岡八幡宮と鎌倉宮のあいだで地味な神社と誤解していましたが、調べるとたいへんな神社だということが分かりました。
神社の起こりは、長治元年(1104年)晴天の空が突如暗くなり、雷雨とともに黒い束帯姿の天神画像が天降り、神験をおそれた里人等が社殿を建ててその画像を納め祀った縁起に始まります。

その後、鎌倉幕府を開いた源頼朝が鬼門の守護神として社殿を建てたのに始まり、足利氏、北条氏、豊臣氏、徳川氏に守られ続けます。
そのため関東各地に分社を持つ荏柄天神社は、福岡の太宰府天満宮、京都の北野天満宮と並んで3大神社と呼ばれるそに至ります。

樹齢900年と言われる大イチョウが有名ですし、四季の花々も愛されているようです。
道真との縁でしょう、毎年筆供養が行われます。
また、絵筆塚には154人の漫画家が描いた河童の絵がレリーフになって貼り付けられています。
祭神が道真で学問の神社かと思えば、勉強の邪魔になる漫画が一方で祀られているのがユニークですね。

西洋人女性が絵筆塚を見てなにか誤解して顔をそむけているように見えます。
各地の神社で見る男性信仰のシンボルと間違えてしまったのかも知れません。
不謹慎なオチで失礼しました。
【M8/Hektor 5cmF2.5 F2.5】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Leitz Hektor 5cmF2.5 | trackback(0) | comment(0) | 2010/03/27 Sat

達磨先生没倒了

M8/Elmar 9cmF4
わたしのライカ事始めはⅢFと沈胴エルマーに始まりますので王道と言っていいでしょう。
しかし、すぐに道を踏み外してしまいます。

ライカを始めたものの常として交換レンズが欲しくなるのですが、本来進むべき広角レンズではなく、なぜかまた標準レンズを買ってしまったのでした。
それが、ジュピター3 50mmF1.5で、安いからということもありましたが、何しろ大口径のレンズで暗い中でも被写体を浮かび上がらせるんだとか力が入っていました。

そうするとⅢFとのマッチングが気になり始めました。
クロームのボディにブラックのジュピターがあまりに似合わないということがまずありましたが、F3.5のエルマーではどうにかなっていたピントが、ことごとく外れ始めたのです。

それでM6ということになりました。
こう書くと、ジュピターが使いたくてライカM6を買ったという、本末転倒な冗談のように聞こえるかも知れませんが、今だからこそ正直に言いますが、それは事実です。

冗談のような本当の話はもうひとつあります。
遠回りしつつもやはり広角が欲しくなって買ったのはアベノンの21mmF2.8でした。
やはりこれも経済的選択なのですが、35mmに行かずにいきなり21mmというのがまずふざけています。

そして、このレンズを活かすための外付けファインダーとして買ったのが、ライツ製のSBKOOという21mmファインダーです。
たいへん高価なファインダーで、いくらで買ったのかはすぐ忘れなくてはと振り切り去ったので思いだせませんが、少なくともアベノン21mmよりもかなり高価だったことは間違いありません。
撮影時にフィルムを感光させるのは、ファインダーではなくレンズだということを知らなかったのかもしれません。

こんな調子ですからライツの名作レンズの良さなど分かるはずもありません。
ましてやエルマー9cmF4という渋いスペックのレンズなどは。

作例は、建長寺の法堂ですが、諧調豊かでやわらかな描写がなんとも言えません。
法堂の荘厳さと美しい光線が織りなす空気感は、エルマー9cmにしか描き出せない世界のような気がします。
ライカを始めたころ、こんなことが分かっていれば、ここまで道を踏み外すことはなかったでしょうに。
【M8/Elmar 9cmF4 F4】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Leitz Elmar 90mmF4 | trackback(0) | comment(6) | 2010/03/26 Fri

古木和新鏡頭

M8/Elmar 9cmF4
それまでのAFコンパクトカメラが物足りなくなって、本格的にカメラを始める気になったのは今から十数年前のことです。
当時から旅にあきくれていたので、小型でよく写るカメラが欲しいと選んだのはエルマーの付いたライカⅢfでした。

知的カメラという好い小文を最近読みましたが、わたしもまったく同感です。
使用する機会はあまりありませんでしたが、机の上に置いてあると、ゲーテ全集が並んでいるのと同じくらいの知性の香りが漂います。

撮影時にはさらに知的気分を高めます。
シャッタースピードを合わせ、フィルムを巻き上げ、ピント合わせして、フレーミング、そしてレリーズ。
ファインダーをのぞいてシャッターを押すだけのコンパクトとは違うのだよ、とカメラばかりか撮影者本人までが知識人になった気分です。

しかし、撮影結果は惨憺たるものでした。
それまで写真の基礎知識を身につけてこなかったため、露出というものが存在することを知らなかったというわけです。
36枚撮って、許容範囲は数枚で、他は真っ白か真っ黒でした。

写真の入門書を読んでようやく露出の意味を知ります。
この時に購入した安い追針式の露出計が仕組みを理解する助けになりましたし、針を追いかけて合わせるというアナログ的な露出合わせが、知的というムードをより高めてくれて露出計そのものまでがお気に入りとなったのでした。

そしてもうひとつ、ライカを始めたときに露出で苦戦したことが、現在のレンズ趣味につながる端緒になっていたようです。
計算が面倒という理由で、さらにはエルマーは絞りを動かすこと自体もたいへんなため、開放中心で撮ることが当たり前になっていったのです。
撮影結果も、かえって絞ったものの方がかっちりと写っていて、少し前にコンパクトで撮っていた写真に近いということも、それを後押ししました。

あらためてみるとずいぶんと屈折したライカとの付き合いはじめだったようです。
ⅢF購入から1年経たずしてM6も導入してしまったので、カメラの扱いはかなり一般的になったと自負しますが、レンズの趣味についてはいきなりの暴走こそなかったものの、やはりどこか人とは違う方向性に突きすすんでいたのだと振り返ることができます。

パルナックを使っていた頃からエルマー9cmは持っていましたが、ほとんど使わなかったし、あまり気に入らなかったということは昨日書いたとおりです。
ずっと後になって知ったのですが、ⅢFなどの距離計の二重像部分は9cmの焦点距離のフレームの大きさと同等なのだそうです。
当時このことを知っていたら、もう少しエルマーが好きになっていたかも知れなかったのですが。


さて、作例は建長寺の古木・柏槇です。
これで"びゃくしん"と読むのだそうです。

以下、リーフレットの解説を紹介します。
新日本名木百選。
仏殿の前栽として参拝道の両側に7本の柏槇の古木があります。
この庭は中国宋代の前庭様式を踏襲したもので、古木の中には幹回りが7mのものもあり、創建当時から760年もの歳月と幾度かの火災を生きぬいてきた貴重なものです。
大覚禅師のお手植えと言われています。

1250年頃の古木を1931年製造の真新しいエルマーで撮りました。
このエルマーのニックネームは達磨。
カラーですが、墨絵の世界を表しているような気がします。
【M8/Elmar 9cmF4 F4】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Leitz Elmar 90mmF4 | trackback(0) | comment(0) | 2010/03/25 Thu

合理是什么?

M8/Elmar 9cmF4
しばらく建長寺の写真が続くので、今日はレンズのことに言及します。
というよりは、恥ずかしながらのレンズ自慢と言った方が正鵠を射るでしょうか。

この日は先週に引き続いて、戦前ライツレンズを虫干ししよう企画で、春の日差しの中でブラックとニッケルに栄養注入させています。
先週、山崎光学に出掛けた折、友人のSクンが大切なレンズの修理を依頼したのですが、それがヘクトール5cmF2.5でした。
相当にお気に入りのレンズのようで、なけなしの修理費を捻出してでもオリジナルの輝きを取り戻したいという意気込みにあふれていました。

そういう気持ちは伝染するもので、ヘクトールってそんなに凄いのかなという疑問が頭をもたげ、早速自分で所有するものを試用することにしました。
ただし、レンズはエルマーに切り替えましたたので、ヘクトールについては後日説明させていただきたいと思います。


さて、エルマー9cmF4ですが、ライカのレンズの中でも悲しいくらい安く市場で見かけるレンズです。
わたしも、ライカを初めてかなり早い時期に購入しています。
当時の愛機ⅢFで時折使ったのですが、パルナックライカでの使いづらさとあまりに普通によく写るという印象か、どうにもわたしから遠ざける結果となってしまいました。

ライカ事始め当初から、よく写るレンズより写らない玉、クセ玉の方に関心が向いていたということに気付いて嘆息しいてしまいそうです。
ただ、基本的にはライカスクリューマウントで90mmクラスのクセ玉というのは、あえて言えばタンバールくらいしか存在しないのですが。

製造数が多くいつでも買い戻せるという感覚もあって、9cmエルマーには縁のない生活でした。
しかし、自分の首を絞めてしまいます。
それは、この間コンタックスやライツのブラック・ニッケル・レンズのことをチェックしていたことに端を発します。
エルマー9cmの初期タイプ、いわゆるダルマ・エルマーにも、ブラック・ニッケルで距離計連動するものが存在することは知っていましたが、玉数がかなり少なくて、その割に安価に取引されていることに気付きました。


こうなるとダルマー(ダルマ・エルマーの略称? にしてダルマイヤーとは関係なし)を探さざるを得なくなります。
そして某オークションサイトを通じて、なかなかの良好ダルマーを送料・税金込み5万円以内という目標条件でゲットしてしまいます。
英名デブ・エルマーも、手に取ってみるとヘクトール7.3cm似の鏡胴が格好いいのです。
鏡胴が太いと操作性がいいということも、この時気付きました。

こうなってくると、あとは写りに対する先入観を拭い去ることができるかが最大の関心事です。
払拭するためということで力みが出てしまい、少し露出オーバー&アンダーなものが多くなってしまいました。
作例は、ややオーバーながら見た目に近いような気もします。
それでも見ていて目が落ち着かないのは、適正露出ではないということなのでしょう。
【M8/Elmar 9cmF4 F4】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Leitz Elmar 90mmF4 | trackback(0) | comment(6) | 2010/03/24 Wed

他是755歳的

M8/Elmar 9cmF4
明月院で春の訪れをじゅうえぶんに感じましたので、建長寺に移動します。
ゆっくり歩いて10分くらいでしょう。
気分的にはのんびりと歩きたいところですが、うっかりすると今日のルートを廻りきれないというあせりが頭をかすめます。
悲しくも歩調はどんどんと加速していくようでした。

有名度でいえば、建長寺は鎌倉で1、2をあらそうところだと思います。
建長寺のある巨福山は鎌倉五山の第一位ですので、名実ともに鎌倉を代表する寺院と言っていいでしょう。
しかし、どうも周囲の人には不人気というか、ここへ誰かと来たという記憶がありません。
円覚寺や明月院が定番コースになっているだけに、不思議な気がします。

拝観料も300円ですので、歴史や規模で比較すると割安な感じがします。
何しろ広いので、団体の入場でもない限りゆったり歩けるのもいいです。
もう少し見直されてもいいかも知れません。

写真の梵鐘は、1255年に製造されたものだそうで、建長寺創建当時から伝わる貴重な遺産として国宝に指定されています。
だからという訳ではないのでしょうが、カップルがあんぐりと大きな梵鐘を見上げている姿が印象的でした。
13世紀の音をぜひ聴いてみたいものですが、残念ながら国宝なので突くことはできないようです。

鐘楼のはす向かいにある法堂の脇にベンチがあります。
陽のあたり方がちょうどよく、ぽかぽかしていて気持ち良い座り心地です。
少し休憩することにしました。
あわてて、ここまで歩いてきてしまった時間を取り戻すことにしたという訳です。
【M8/Elmar 9cmF4 F4】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Leitz Elmar 90mmF4 | trackback(0) | comment(5) | 2010/03/23 Tue

下午去鎌倉吧

M8/Hektor 5cmF2.5
せっかくの三連休、せっかくの好天続きでしたが、いろいろあって閉じこもって過ごしていました。
ようやく最終日の今日、5時間ほど時間ができたので、短時間で往復できるところはと考え、やはり鎌倉へ出掛けてきました。
午後にぱっと時間ができて、半日弱を散策に過ごせる鎌倉が近いことを感謝しなくてはいけません。

せめてコースを工夫したいところですが、北鎌倉から八幡様経由で鎌倉駅に南下するオーソドックスなものになりました。
これは距離もほどほどで、撮影するものにも事欠きません。
何より山間の北鎌倉周辺は、静かさは保障されていますので、のんびりした散策にもってこいです。
そればかりか、今回はすばらしい出合いもあって、ゆったり転じて充実した散策になりました。

2時頃北鎌倉駅着で、日没前には鎌倉から帰途に就きますので、途中名刹をはしおりながら歩くことになります。
円覚寺、東慶寺、浄智寺は今回寄らずに、明月院だけで駅付近はやり過ごし、しばらく訪れていなかった建長寺を覗き、鎌倉宮あたりまで一気に進んで、鶴岡八幡宮を通って帰宅するルートです。
それぞれに30分以上はいられるでしょうから、散歩としてはじゅうぶんです。

そういうわけで、最初の作例は明月院からとなります。
ここも昨年末に ksmt さんの案内で、ジオさんと3人で来て以来なので、もうあれから3ヶ月になるのかと時間の経過の早さに感慨も一入になります。
そういえば、あのときジオさんはこんな話をしていたとか、ここで8.5cmのブラック&ニッケル・ゾナーをじっくり構えていたなあとか、何かを考えるより早く思いだすことばかりでした。

その時と同じような時間に着いたはずですが、12月と3月では陽のあたり方が違います。
空気も違うでしょう。
そして、早くも春を待ちわびていた花が咲いていて、若い緑がそれを支えていました。

やや遅めの時間帯がよかったのでしょうか。
シーズンによってはたいへん混雑する明月院でも、この時は人出が適度で、階段に人がぞろぞろというとはなく、レンズに収まってくれる程度にまばらに人が歩いている程度です。
こんな時は、鎌倉が庭のように感じるときです。
自分のものだと思う訳ではなく、自分たちがここを歩いているのだと実感するということです。
【M8/Hektor 5cmF2.5 F2.5】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Leitz Hektor 5cmF2.5 | trackback(0) | comment(4) | 2010/03/22 Mon

喝着珈琲照相

M8/Elmar 3.5cmF3.5
東大周辺なら安くて美味しいボリューム満点の店があるに違いないと探し歩きます。
しかし、わたしたちふたりはこの日不振なうえ、そういう嗅覚はまったく働かず無駄にうろうろ歩きまわるだけでした。
あきらめて駅に向かうと、今度は食事処が並んでいてどうにか遅い昼食にありつけます。

大久保の山崎光学へ向かおうと地下鉄春日駅に降りようとすると、近くから小滝橋車庫行きのバスがあるとの表示が出ていました。
これはラッキー、バスもすぐやって来て、一気にレンズ修理に話が盛り上がります。

今度は車窓からSクンが中古カメラ店を発見して、ちょっと寄ってましょうとひと停留所先で降りて店を覗いてみます。
こじんまりとしたお店でしたが、少なくともライカ関係のアイテムは良心的な価格タグが貼られています。
キヤノンの広角レンズが格安だったので、悩んだうえに購入します。
Sクンの観察眼からレンズを入手できたということで、運気も上昇傾向にあるような気がしてきます。

再度、小滝橋車庫行きのバスに乗り、早稲田から高田馬場駅前を抜けるとほどなく小滝橋通りが見えてきました。
終点の前ですが、ここで降りた方が近そうなので咄嗟に下車すると、やはり見慣れた山崎光学まではほんの5分の道のりでした。

土曜日も山崎さんは仕事しているようで、聞くと、土曜は来訪者が多いのであえて休まないのだそうです。
忙しい中、尋ねて行くのは申し訳ないと思いつつ、レンズ・ユーザーとのコミュニケーションを大事にする山崎さんの姿勢に頭が下がります。
ユーザーも、山崎さんも、双方が納得できるレンズ修理を心がけているということでしょう。

わたしは、だいぶ以前に頼んでいたレンズの修理が完了したので受け取りました。
かなりひどい状態だったので、なんであんなレンズを買ったのか山崎さんから訝しがられましたが、何しろ珍しいレンズだったので背に腹は代えられなかったんですと説明します。
このレンズは修理前にすでに使用していましたので、今度の撮影に使ってみて、修理によって性能を取り戻したところをぜひ見たいと思います。
その時は、先ほど買ったキヤノンもいっしょに持っていくことにしましょう。

山崎光学初挑戦のSクンは、愛用のヘクトール5cmF2.5を差し出し、修理可能かを恐る恐る聞いています。
山崎さんに、これは直りますねとの力強い返事を聞いたSクンは嬉しさを隠せません。
これこそが、直接のコミュニケーションで相手を納得させる山崎さんのスタイルの賜物といえるでしょう。

山崎光学から新宿西口までは、歩くと30分ほどかかります。
しかし、お互い足取りは軽く、もう暗くなって撮るのも難しくなっているのにカメラを構えたり、あらたなレンズの話題で盛り上がったりと、30分がまったく長く感じられません。

本日最後は、いつものカフェで反省会です。
Sクンは、わたしの修理からあがったレンズがすっかり気に入ったようです。
というのは、もともと50mmの画角から一歩踏み込む75mmが気になっていたのですが、高価なズミルックスや興味が湧かないコシナを試す機会が訪れないうちに、70センチよりも寄れる50mmレンズでも同様の効果が得られると気付いたところ、まさにこのレンズが50センチまで寄れるレンズだったからでした。

寄れるといえば、このエルマーも70センチまで距離計連動できるように改造してあります。
その近接での撮影をしていないことを思い出して、遅ればせながらカフェのシートにかけたまま隣の椅子を撮ってみました。
籐と金属の描き分けがなかなかに決まっているように思います。
ボケも二線などのいやらしさがなく、広角のそれとしては自然で好感が持てるような気がします。
三週間後には、Sクンのヘクトールが同じ場所から、別の絵を描き出しているはずですが、同時期のエルマーとの違いが今から愉しみです。
【M8/Elmar 3.5cmF3.5 F3.5】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Leitz Elmar 3.5cmF3.5 | trackback(0) | comment(2) | 2010/03/21 Sun

走像大学生

M8/Elmar 3.5cmF3.5
お昼はどうしようかという話になって、東大の学食なんてどうだろうと話はまとまりました。
ふたりとも懐具合を気にしないといけない程度の持ち合わせですし、このあと最後にレンズ修理が待っています。
やはり食事は安くてボリュームがあるだろう、学生食堂というのは正しい選択に思われました。

池之端から東大のある本郷は目と鼻の先のはずです。
ところが、日本の最高学府とは縁もゆかりもなかったわれわれふたりは、東大がどこにあるのかいまひとつ分からずあちこち迷うことになります。
さいわい通りがかりのおじいさんに丁寧に教えてもらって、辿り着くことができました。

はて、東大は一般人が入ることができるのでしょうか。
いちいち学生証を見ることはないでしょうが、わたしにおいては明らかに学生にも教授にも見えない怪しい人物としてストップがかかるかもしれません。
去年でしたか、明大教授がかつての教え子に殺害される痛ましい事件もあったので、警備は厳重なのではないかも知れません。

少し小さくなって門を通り抜けましたが、警備の親父さんはいぶかしがるでもなしに普通に通してくれます。
いや、それどころか、不思議なことにキャンパス内を道路が通っていてタクシーとかトラックとかが普通に走っています。
誰でも入って来て良いということのようです。
オープン・キャンパスという言葉を近頃よく聞きますが、こういうことのことなのでしょうか。

少しこそこそした態度はあらため、俄然強気になって大手を振って歩き始めます。
とにかく腹が減ったので学食を探さねばなりません。
案内の地図があってそれはすぐに分かったので、そうなると余裕をもってスナップしながら、しかしどことなく早足で歩を進めます。

途中、入試合格者の番号が貼り出されている掲示板があって見入っている人がいたり、犬を散歩させている親子がいたり、もう春休みなので学生よりも近所の人が散歩に利用している様子がうかがえます。
マントをはおった個性的な女子学生がぜっこうの被写体に思えましたが、後ろに目が付いているのか写真には撮られまいという意思を感じるほどに、わたしのレンズをかわして歩き去ってしまいました。

どうもカメラを持ってやってくる人もけっこういて、わたしが見たのは女性ばかりでしたが、みな一眼レフを手にキャンパス内を撮り歩いていました。
作例の女性も一眼レフでこの建物を撮影していましたが、途中ポラロイドに切り替えてなおも熱心にここを撮影していました。

わたしも負けじと低い姿勢から目を惹く彼女の青いスカートにピントを合わせてスナップします。
1枚目がだいぶ左に傾いてしまったのですが、これが彼女の積極的な撮影態度を表しているようで、また建物の右側は超広角で捉えたみたいでなんだか面白く、平凡な水平写真をやめて採用しました。
あるいは学生かと思わせる若い女性でしたが、撮影フォームはかなり堂に入っていました。

実はこの建物の地下が目指す学食だったのですが、悲しいことに土日はお休みだったのでした。
落胆。
40分待ちの等伯に写真に騙される東照宮、団体で落ち着かない旧岩崎邸…。
どうも、この日は行動がぴたっと決まらない、そんな1日だったようです。
【M8/Elmar 3.5cmF3.5 F3.5】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Leitz Elmar 3.5cmF3.5 | trackback(0) | comment(2) | 2010/03/20 Sat

安静的地方

M8/Elmar 3.5cmF3.5
岩崎邸に入ってレンズを交換しました。
同じエルマーですが、こちらは3.5cmの広角です。
室内はいくつかの灯りと窓からの自然光だけでかなり暗かったのですが、ISO160のまま手ブレ覚悟で撮影して廻ります。
1/8~1/60あたりで、ほとんど手ブレはなかったようです。
普段のスナップとは違って、動かないものを撮るので呼吸を整える余裕があるからでしょう。

困ってしまったのが、ここもすごい人がやって来ることでした。
わたしたち同様、等伯展にあぶれた人なのか、等伯も見たし岩崎邸も見なくてはという人なのか、ひっきりなしに入場者を集めています。
団体で来られる人たちもいて、少し賑やかなのは、どうしても洋館の雰囲気とマッチしません。

そしてそれに輪をかけるのが、邸内の警備員の仕事熱心振りでした。
階段を降りる人がいれば、はい1列で降りてー。
立ち止まる人がいれば、はいそこ止まらない、右回りで見てください。
写真を撮るのに壁に背中をあてている人がいれば、はいすみませんが、よっかからないでー。

これはいったい何事でしょうか。
社会主義の某国でも、ここまで徹底した規則の押し付けは体験したことは無かったです。
もう少し落ち着かせていただけないものでしょうか。

作例は、レース越しのやわらかな光に心奪われて、といったところのものです。
実は撮影位置に立ち入り禁止のロープが張られていたので、ここで撮影する人はみんな同じような写真を撮っているだろうと思われます。
結果もみんな似たり寄ったりでしょうが、微妙な差異を書き出してみることにします。

エルマーでは暗部の表現が弱いようで、階段下のシャドーが全部まっ黒になってしまっています。
しかし、カーテンの下部分の色や階調の再現はなかなかよく出ているようで、これはライカ・レンズで撮った甲斐があったところです。
影がブルーに転びやすい状況でしたが、この時のM8は調子が良かったようで、影は影として表現されているのが好ましいです。

また、普通は人が立ち去ったところで撮るところを、わたしの場合人が来るのを待って撮っているのが、最大の特徴だと言えるでしょうか。
【M8/Elmar 3.5cmF3.5 F3.5】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Leitz Elmar 3.5cmF3.5 | trackback(0) | comment(0) | 2010/03/19 Fri

新旧対決

M8/Elmar 3.5cmF3.5
旧エルマーの話題をもう1日だけお許しください。
少し気になって、文献をあたってみようと思いましたが、一般のライカ本のようなもので旧エルマーに言及しているようなものは皆無か極めて少ないようです。

古いクラシックカメラ専科にふたつほど旧エルマー絡みの記事を見つけました。
ひとつは№19で「新旧エルマー比較レンズテスト」があります。
エルマックス、旧エルマー、戦前ニッケルエルマー、赤エルマーの4本の比較というたいへん意欲的な企画です。
しかし、残念ながら肝心の比較した作例はありません。
それぞれのレンズのF値ごとの特徴が書かれていますが、4者の描写の差異について突っ込んで欲しかったと思うのはわたしだけではないでしょう。

もうひとつが№32の「くたびれエルマー50mmF3.5の描写」です。
これは、ニッケル・エルマーの描写が通常のエルマーより素晴らしく、あるいはエルマックスか旧エルマーではないかとテスト撮影します。
繊細な写りに、旧エルマーではないかと結んでいます。
シリアル番号なしのショート・エルマーでインフィニティ・ストッパーの裏の番号が「0」ですので、一般に知られる旧エルマーの条件は満たしていますが、決定的な確証は得られていません。

ここで唯一分かるのは、ライカのメカニズムを図解するなど、かなりマニアックな本でありながら旧エルマーの判別法についての情報はまったく持っていないということです。
№19の企画では、すべて交換レンズとしてのエルマーを使いながら、旧エルマーのみボディ固着のレンズで比較しています。

今ではインターネット上などで情報が広まったため、旧エルマー判別法もこっそり掲載してるサイトもあるのかも知れません。
しかし、依然としてライカに精通した中古カメラ店などでも、正確に旧エルマーを見分けているとは言えないのが現状のようです。

タンバール9cmやヘクトール7.3cmなどのレンズで掘り出し物を見つけるのは今やほぼ不可能となつていますが、旧エルマーは何食わぬ顔をして安価に売られている可能性は非常に高いと言えます。
努力次第で、1920年代半ばの繊細かつ力強い旧エルマーの写りを愉しむことが可能となるかも知れません。


さて、散策の方は、不忍池を抜けて池之端の旧岩崎邸を訪れました。
等伯展をキャンセルしたところで、わたしはどうしたらいいのか分からなくなるところでしたが、さすがSクンは冷静に考えてそれではここはいかがでしょうと案内してくれたのです。

岩崎と聞いても岩崎宏美くらいしか連想できないわたしは、ここで殺人事件のドラマでも撮影したのか名などマドンナたちのララバイ(でしたっけ?)を口ずさみます。
しかし、いただいたパンフレットを読むと、あのジョサイア・コンドルが設計した近代建築の傑作だそうで、三菱の岩崎弥太郎の岩崎だったのでした。

解説を読まなければ、さすが岩崎家ではすごい洋館に暮らしていたのだなと感心するところですが、実はこの洋館はパーティなどに使用された別館的存在だったようです。
敷地内には20棟の建物があったのですが、現存するのはこの洋館と隣接する和館、西部劇の駅馬車が繋いでありそうな雰囲気の撞球室のみです。
こんな天井の高い洋館では、毎日を暮らすには落ち着かないでしょうから、意外に地味な建物に寝起きしていたのではと想像してみます。

ともあれ、1896年と古い旧岩崎邸を1925年ころの新しい旧エルマーで撮影してみました。
【M8/Elmar 5cmF3.5 F3.5】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Leitz Elmar(Nickel) 5cmF3.5 | trackback(0) | comment(3) | 2010/03/18 Thu

有多少?

M8/Elmar 5cmF3.5
昨日、今日と使用しているレンズは、エルマー5cmF3.5です。
実は、昨日の作例だけで次のような感想をいただいていたのですが、あまりの鋭さに唸りました。

「重厚なボケがいいですね。崩れ具合も自然です。
しかも、全然にじみが無いという事も凄いです。
もしかしたら、旧エルマーなのでしょうか?」

そう、正解です。
使用したレンズは、最近譲っていただいた旧エルマーです。
では、旧エルマーとは何のことで、普通のエルマーとどう違うのでしょうか。

わたしも、ごく一般的なことしか知らないのですが、そのよく知られたことを書いておきます。
ライカ1型が1924年に製造開始されたとき、装着されていたレンズは、ライツ・アナスティグマット5cmF3.5でした。
これは最初の200~300台ほどで、エルマックス5cmF3.5に変更になります。
これも製造数1200~1400本ほどと短命に終わっています。

アナスティグマット、エルマックスともエルマーそっくりの外観ですが、3群目が2枚ではなく3枚貼り合わせでコストダウンをはかってエルマーに変更になったとされています。
あるいはエルマーの構成では、ツァイス・テッサーと同じになってしまうため、さらに高性能を目指して、またはパテント逃れで3群5枚としたものの、費用対効果がないと判明したか、絞り位置が違えばテッサーのパテントをくぐれると判断したのかとも邪推されます。

このエルマックスから切り替わったのが旧エルマーです。
当時のライツ社はゲルツ社からガラスの供給を受けていたのですが、1926年にドイツの主要カメラメーカーが大合併をおこない、ツァイス・イコン社が設立されます。
イカ社、エルネマン社、コンテッサ・ネッテル社と並んでドイツ4大カメラメーカーとされていたゲルツ社も、このときにツァイス・イコン社となりました。
しばらくライツ社へのガラス供給は続いたものの、ついに1929年それはストップしてしまいます。

その後ライツは、同じツァイス傘下のショット社からガラス供給を受けることになります。
つまり、ゲルツ社のガラスを使っているのが旧エルマー、ショット社のガラスを使ったのが新エルマーと呼ばれていまるということです。

カメラのシリアル番号が15000番くらいまでのライカに旧エルマーが装着されていたと言われています。
製造数は、14000本前後でしょうか。
だとすれば、ヘクトール2.8cm=9694本、ヘクトール5cm=9646本、クセノン5cm=6190本、ヘクトール7.3cm=7225本、ズマレックス8.5cm=4342本、タンバール9cm=2984本、エルマー10.5cm=3975本、エルマー13.5cm=5259本と比べるとけっこう多めかなと感じられる数です。

それなりに苦労なく見つけられるレンズかなという印象がありますが、例として並べたレンズはほとんど交換レンズとして製造されたものですが、旧エルマーはもともとライカⅠ型に固定装着されていたレンズだということを忘れてはいけません。
ライツでは、Ⅰ型を距離計連動のⅡ型、Ⅲ型へ改造していましたが、このときに装着されていた旧エルマーも距離計連動の交換可能なレンズに改造されています。

つまり、距離計連動に改造されたライカⅠ型とほぼ同数の旧エルマーが、レンズ交換可能なエルマーとして存在することになります。
その総数がすごく多いとは考えにくいことです。
どのくらいかということはまったく分かりませんが、恐らく数千本というところではないでしょうか。
何しろシリアル番号15000番以下のライカⅠ型はたくさん存在しています。

もうひとつ旧エルマーを入手困難にしている理由が、新エルマーとの判別方がはっきりしていないことです。
諸説ありますが、わたしには詳しいことは分かりません。
知っている人も企業秘密として公開することはないようですが、ヒントとなるような事柄はネット検索するといくつか分かります。

わたしの旧エルマーは、まさに譲っていただいた友人が旧エルマー研究家だったので、その違いを開設いただいたうえで手渡していただいています。
やはりそれも秘密事項ですのでここには記せませんが、それにより所有していた旧エルマーらしきエルマーは、残念ながら新エルマーと判明してしまいました。
旧エルマーの可能性が高いレンズを求めて探し求めるのは、ライカの趣味としてはかなり冒険的で面白いことと言えるので、ぜひ皆さんもチャレンジされてはいかがでしょう。


さて、作例は立札に書かれているように、上野公園内の東照宮です。
最初の美術鑑賞からつまずいてしまったので、ここで願掛けすればよかったのですが何かがヘンです。
門から後ろは実物大の大きな写真で、工事中の建物を隠していました。
またまたつまずいてしまったような感覚です。

それにしても参道を歩いているときはまったく写真だと気付かなかったのですから、わたしには旧エルマーの判別などできるはずはありません。
【M8/Elmar 5cmF3.5 F3.5】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Leitz Elmar(Nickel) 5cmF3.5 | trackback(0) | comment(3) | 2010/03/17 Wed

40分鐘排隊

M8/Elmar 5cmF3.5
先週末の午後、若き友人のSクンと東京を散策しました。
互いにライカを持っての散歩で近況報告し、美術鑑賞とレンズ修理出しも併せて遂行する計画です。
新宿で待ち合わせて、まずは長谷川等伯を見に上野へ向かいます。

山手線の中では、本日持参の機材自慢になるのが常ですが、なぜかこの日はSクン自作の手帳が話題になります。
トラベラーズノートという手帳は、革の表紙と中のノート部分を目的に合わせて組み合わせてつくるシステム手帳のようなものです。
トラベラーというだけに、旅に特化したノートページが多数用意されているのが特徴で、旅を重ねることで手帳はカスタマイズされていくという魅力的なコンセプトがあります。

Sクンの手帳がすばらしいのは、革表紙が若干高価なため、自ら手持ちの革を加工して表紙を作ってしまったことです。
これはメーカーのコンセプトとも合致していますし、器用にふちなどを処理していて完成度はなかなかのものです。
まだ、新品状態ですが、時間の経過とともに革は風格を付け足し彼らしいものへと変化していくことでしょう。


さて、楽しみだった等伯展ですが、入場までに40分待ちの案内が出ています。
長時間待って人混みの中での見学は、パンダを見るならいいでしょうが、美術鑑賞には適さないと判断しました。
上野公園内をスナップしながら進み、少しずつ場所を変えながら大久保に行くことにします。

それにしても、上野公園全体はすごい人出で、これだけ多いとかえってスナップもできなくなるものだと考えさせられます。
会話しながら時折足を止めてのスナップですので限度もあるのですが、何かを発見するとか技術的な進歩をみるなど得られるものはありません。

スナップが充実するよう"谷根千"へ行ってはどうかとの案も出ましたが、まずは上野公園内と不忍池をまわってみることにしました。
なにしろ高校の遠足以来、実に久しぶりの上野公園だったので、ゆっくり見て歩くだけでも楽しかったのです。
【M8/Elmar 5cmF3.5 F3.5】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Leitz Elmar(Nickel) 5cmF3.5 | trackback(0) | comment(1) | 2010/03/16 Tue

朋友請我客

M8/Macro Switar 75mmF1.9
そろそろ中国滞在シリーズを終えて、新しい散策の写真でスタートすべきところですが、写真が間に合いませんでした。
中国で新しい知己を得た報告を混じえて、もう1枚深圳のものを出すことにします。

先月も紹介しましたが、深圳には親しくしているカメラの修理屋さんがいます。
順平さんという親しみある名前です。
中国滞在初日にその順平さんのところを訪れると、翌日友人と飯を食べに行くので一緒にどうかと誘ってくれました。
もちろん断る理由はありません。
カメラに通じた中国人ふたりが来るというのが楽しみですし、中国で食事に誘われるといえばご馳走してもらえることを意味しますので、こちらもなかなか魅力的です。

佛山に出掛けた日の夜、遅れ気味に順平さんの店に行くとすでに3人は待っていました。
タクシーに乗って地下鉄国貿駅近くのレストラン街に出て、馴染みの一軒の扉を押し開けます。
しっかり個室が予約してあって、テーブルに付くや自己紹介が始まりました。

林さんは佛山出身ですが、佛山はつまらなかったでしょうとわたしに聞いてきました。
地元の人が言うのですからやはりつまらないところなのでしょう。
台山など周辺の楽しい町を紹介してくれます。
また、3人の中では唯一英語ができて、ときどき会話についていけなくなるわたしに助け船を出してくれました。

普段はM6を使ってスナップしているそうです。
そういえば、むかしドイツに行ったとき、成田で1泊トランジットの機会があって、銀座に行ったことを話してくれました。
また日本に来たがっていて、その時はいっしょにスナップではなく、呑みに行きましょうという話になりました。

もうひとりの王さんは、芸術家的空気を発しているような人でした。
北京出身ですが、深圳はそうとう長いようです。
今は中古カメラ店を市内に持っていますが、カメラに関する著作があり、雑誌の記事なども書いたりしているそうです。

林さんが Pure Chinese と呼ぶ王さんの北京訛りの中国語は、わたしには聞きとりにくいものです。
巻き舌を多用して流麗にしゃべる北京語はフランス語に匹敵する美しい言語と言われますが、そのフランス語が英語と比較してなんとも聞きとりにくいのと同様、南方の普通話に比べて別の言葉に聞こえます。

ビールがヘリコイドオイルのように、会話を滑らかにしたためいろいろな話が出ましたが、わたしが付いていけたのは3~4割というところでしょう。
いちばん印象に残ったのが、日本の調査捕鯨について話題になったことでした。
シーシェパードの存在も知っていて、3人とも全面的に批判していました。
食の伝統を尊ぶということと、中国人自体が食材を選ばず何でも食べる国民性ということがあるからでしょう。
食に関しては一衣帯水というところがけっこうあるのかも知れません。

たのしい会話においしい食事、のはずでしたがひとつだけ不満を述べさせていただきましょう。
そのレストランは、順平さん出身の湖北料理ではなく、林さん出身の広東料理でもなく、王さん出身の北京料理でもなく、ましてやわたしの日本料理ではありません。
なぜか黒竜江省出身の親父さんが経営する、韓国料理の店だったのでした。
【M8/Macro Switar 75mmF1.9 F1.9】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Kern Macro Switar75mmF1.9 | trackback(0) | comment(1) | 2010/03/15 Mon

不是看漫画的

M8/Macro Switar 75mmF1.9
画商ないしはギャラリー、画材屋、フレーム屋、アート・カフェ、あとは食堂。
大芬油画村には、こんな店々が集まっています。
数は少ないですが、もうひとつあることを忘れていました。
画集並びに美術書屋さんです。

前述した店はほぼ外からの客向けの店ですが、この美術書屋さんは食堂と同様、大芬油画村で働く人たちのために存在します。
ここで生活する絵描きたちや絵を学ぶ人たちは、書籍の中から画題を選んで模写するという訳です。

もっとも100元も200元もする高価な画集を個人で買うのはたいへんなことです。
模写のためのモチーフは、おとといの写真でも使われているように、どこかから切り抜かれて使用されます。
時にサービス判の写真サイズから模写ということもありますので、その出来は推して知るべしというレベルなことがほとんどです。

画集からインスピレーションを得て、オリジナルの芸術を生み出すというケースが皆無とは言いません。
しかし、ほとんどが模写の域から出ていないことはそれぞれの店に架けられた絵を見ればあきらかです。
絵を求める人がそれを望んでいるという事情もあるでしょう。
大芬油画村が油絵の村であって、芸術村という名前でない理由が見えてくるような気がします。

イラストのような画集を一心に見続ける少女は、まだ小学生にしか見えません。
絵画を勉強しているのか、こんな環境下に育って自然と絵に関心が向くのか、いずれにしても彼女は売らんがための模写をするために見入っているということではなさそうです。
あるいは彼女が、大芬油画村を変えていくのかも知れません。


Macro Switar 75mmF1.9 の開放では、人物スナップでピントを外すことはままあります。
昨日の作例がその典型で、被写体が広がっていてここにピントを合わすという部分があいまいな場合、しばしばやってしまうミスです。
一瞬のピント合わせを求められるようなケースでは止むを得ないということもあります。

しかし、今日の作例のように被写体が動かずこちらも壁の陰にいて気付かれにくい状況では、慎重にピント合わせできるので外してしまう確率はぐっと下がります。
このレンズは、スペックで心配されるよりはるかに楽にピントを出せるレンズです。

被写界深度の余裕ということがあるでしょうし、所謂ピントの良いレンズだからという理由もあると思います。
完璧な精度で調整されたマウント改造という信頼感ということが、何よりも大きいのかも知れません。
女の子の肌が冷たく表現されるのが不満と言えば不満ですが、やはり凄いレンズだというのが偽らざる感想です。
【M8/Macro Switar 75mmF1.9 F1.9】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Kern Macro Switar75mmF1.9 | trackback(0) | comment(3) | 2010/03/14 Sun

多少銭1斤?

M8/Macro Switar 75mmF1.9
フレームの確認はできましたので、あらためて写真を撮りたいと気合を入れ直します。
道路で描いているような人はさすがに昨日の作例くらいですが、オープンな場で描いているシーンは何度も見かけます。
でも、同じようなものばかり撮ってもおもしろくはないでしょう。

次に手っ取り早いのがこの辺で遊ぶ子どもたちを撮ることです。
しかし、これもどうしたことか、カメラを見つけると逃げてしまったり、キャーキャー騒ぎ立てたりで撮影に四苦八苦します。
素朴な子どもたちも、毎日やってくるカメラを持った観光客にすれてしまったのでしょうか。

おもしろいものを求め散策を続けます。
なんとなくいいかなと思えたシーンは2題ありました。
ひとつは、南アジア系の色黒で目がギョロギョロしたおっさんが、道の真ん中で椅子に腰掛けて携帯でビジネスのやりとりをしているところ。
もうひとつが、天秤を担いでやってきた野菜売りです。

ピントが悪いのを承知で後者を採用しました。
こんなところで売れるのかと思うが早いか、目の前で商談成立というのにびっくりさせられたからです。
やり取りを見ていると、天秤のお姉さんは毎日行商に来て、大芬油画村での信頼を得ているようでした。
たぶん、午前中は近くの市場で商売して、午後になって行商しているのでしょう。
働き者のお姉さんです。

深圳のような大都会でも、郊外ではこんな中国らしい素朴な生活のシーンが見られます。
それが、大芬油画村という観光化されたエリアで日常的に行われているのを目撃でき、この日いちばんの愉しい体験になりました。


Macro Switar の描写は素晴らしいものですが、ゆるいレンズが好きなわたしにはコントラストが高過ぎと感じられることがあります。
このくらいの半逆光だと、コントラストがほどよく落ちたうえ、中間色がよくのって、やさしい雰囲気が広がるのがいいと思います。

ただ、周辺のボケがずいぶん流れるのは気になるところです。
M8でこんなですから、フルサイズですとぐるぐるしてそうですし、光量落ちも危惧されます。
そこをあえてフィルムでも試してみたいのですが、まだそのチャンスは来ていません。
【M8/Macro Switar 75mmF1.9 F1.9】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Kern Macro Switar75mmF1.9 | trackback(0) | comment(2) | 2010/03/13 Sat

为什么拳击家?

M8/Macro Switar 75mmF1.9
じつは大芬油画村に来たもうひとつの理由が、写真用のフレームを探すことでした。
油画とは文字通りの油絵の意味ですが、絵ばかりではなく画材店はいくつかありましたし、額縁を売る店も2~30軒は軽くありそうです。
いくつかを覗いてみました。

アカデミックな大作を飾るのにふさわしい金色のデコラティブなものはもちろん、見るからに中庸なデザインの無難なものから、小さな現代アートにしっくりきそうな金属質なフレームまで、充実した品揃えがすぐに分かりました。
しかし、それらはすべてオーダーメイドで、完成品状態のフレームというのは売られていません。
何号の額縁という売られ方ではなく、あくまでこの枠のサンプルを選んでから何センチ×何センチのフレームを作ってくれと依頼して、何十分後かに完成したところに取りに行くのがここでのやり方のようです。

油絵ですから基本的にはガラスは入れません。
しかし、一部には水彩画店や版画店はありますし、水墨画のようなものもあって、ガラス入りのフレームも当然注文できます。

数軒まわってみて、おしゃれなフレームを多く取り揃えた店で、価格を尋ねてみました。
高級感あるメタリックシルバーの細いフレームにガラスを入れて半切サイズの写真にちょうどよいサイズということで聞くと70元という返事でした。
ガラスだと割れるのが心配なのでアクリルはないか聞くと、やはり在庫していて80元ほどになるとのことです。
900~1000円前後というところになります。

やはり安いことは分かりましたが、実際にオーダーするのであれば交渉する価値はありそうです。
それに複数枚の注文なら、確実に短歌は安くなるでしょう。
むしろ心配なのは、枠の種類が豊富すぎて迷ってしまうことではないかと思いました。
大きいサイズですと機内持ち込みもできないので、ガラスなら割れないように、アクリルでも傷つかないように丁寧な梱包を依頼する必要があります。

マットのことを聞くのを忘れました。
また、既成品のフレームでは壁掛けのための金具がレールで動くようになっていたり使い勝手の良い構造ですが、ここでの金具は固着しているだけです。
また裏板を止めているのはくさびのような金具で、付けたり外したりは面倒なのかも知れません。
表側はじゅうぶん美しいが、裏側はいたってシンプルというところです。
とはいえ、価格を考えればじゅうぶんに納得でしょう。

あるいは10枚くらいフレームを調達する必要があるかも知れないということで、安さを求めて確認してみました。
しかし、訳あってフレームはまったく不要ということになってしまいました。
無駄足になったわけですが、10枚は要らないまでも、自室に飾るのに1枚特注してもいいかなと今思い始めています。
【M8/Macro Switar 75mmF1.9 F1.9】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Kern Macro Switar75mmF1.9 | trackback(0) | comment(1) | 2010/03/12 Fri

新開的珈琲庁

M8/Macro Switar 75mmF1.9
佛山・広州の日帰り旅は敗北感にまみれたものとなってしまいました。
このままでは帰国して、2週間は続ける日記のブログに穴を開けてしまうという危機感も生じます。
翌日、別途用事もあったので、久々に大芬油画村にカメラを持って出掛けました。

それにしても日曜日の午後だというのに、あいかわらず人出が少ないのには驚きます。
たいへんな数の画商が軒を並べる油画村ですが、これでは1日1枚以上絵が売れているようなショップは皆無なのではと心配になります。
もちろん外商があったり、わたしの知らないところで取引も盛んなのかも知れませんから、余計な心配は無用なのでしょうけれど。

前回以来の数カ月の間には、一見すると油画村が変わるところはありません。
しかし、よくよく見ると微妙な変化は見てとれます。
若干の店舗が入れ替わったようですし、当然ながら展示されている絵は大幅に変わります。

前回知り合った絵を勉強に来ていた少女は、やはり残念ながら故郷西安に帰ってしまっていました。
メールで知ってはいましたが、もしかしたら戻っていたりなどと考えたのに至極残念です。
広い中国では知りあって、親しくなったと思うと、またいなくなってしまうということがよくあります。
彼や彼女は、すぐにわたしのことなど忘れてしまうのかも知れませんが、わたしの方ではブログに記したことで、いつかそれを読み返し感慨深く思いだすことでしょう。

今回気付いた最大の変化は、カフェが1軒増えていたことです。
老舗的な店がもともと2店舗ありましたが、あまりはやっているようにも見えなかったのですが。
日曜ですら、それほどの人通りがないということはお伝えした通りです。
これで商売になるのでしょうか…。

ですが、人を食ったような店先のオブジェを見てあらためて思ったのですが、別に画商というかギャラリーというかそういう店舗で営業しても、カフェとして営業しても絵を見てくれるお客さんに大差は無いような気がします。
むしろ風変わりなカフェを営むことで、興味を惹かれた人が立ち入る機会は増えるのではないか。
もしカフェが不発なら、とっとと営業形態を変更してそのスペースに絵画の展示を増やせばいいだけ。
そんな発想は十分に成り立ちそうです。

次回訪れた際、このカフェがどうなっているか、大芬油画村をまた訪れる理由ができました。

おっと、言い忘れるところでしたが、少しゆるくなってしまっていたゾナーに代わって、シャープで健全なマクロ・スヴィターにレンズ交換しています。
こういうところで変化を付けないと、これは、わたしなりの工夫のつもりです。
【M8/Macro Switar 75mmF1.9 F1.9】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Kern Macro Switar75mmF1.9 | trackback(0) | comment(2) | 2010/03/11 Thu

大拇指的故事

M8/Sonnar 5cmF1.5
昨日は、ブラック&ニッケルのレンズにのみ触れましたが、ライツにはオール・ニッケルのレンズもあります。
同様に確認してみましょう。
ただし、ここではレンズ交換できない、最初期のⅠ型ライカ固着レンズ、エルマックスとライツ・アナスティグマットは除きます。
では、広角から順番に。

1.ヘクトール2.8cmF6.3
2.エルマー3.5cmF3.5
3.エルマー5cmF3.5
4.ヘクトール5cmF2.5
5.ズマール5cmF2(固定)
6.ズマール5cmF2(沈胴)

以上の6本になると思います。
ただ、ズマールは固定鏡胴と沈胴の2種類があって、これを分けて2本とカウントするか悩みました。
光学系は同じですので1本と見なすべきですが、昨日エルマー9cmF4をダルマと細鏡胴で分けてしまったので、ここではやはり分けざるを得なくなりました。

実は次のもう1種があります。

7.クセノン5cmF1,5

クセノンは、ローレット・リングが3本とか4本とかで初期とか後期とか分ける話はよく知られていますが、ニッケルメッキの鏡胴があったことはほとんど知られていません。
「ライカレンズの見分け方」などごく一部の文献で触れられています。
それだけではなく、なんとわたしの友人がニッケル・クセノンを所有しているといいます。

ニッケル・クセノンは、この7本の中でもっとも珍しいレンズであることは間違いありません。
これを持っている友人が羨ましくてなりません。
続いて珍しいのは、1のヘクトールです。
さらには固定鏡胴のズマールが人気ともあいまって、なかなかに入手困難レンズとなっています。

しかし、昨日のブラック&ニッケルに比べてエルマー5cmを除くと高価なのは、やはり望遠よりも広角や標準の方が人気があるということでしょう。
わたしは、やっぱりニッケル・クセノンが欲しいです…。


さて、作例を説明させていただきます。
聚龍村でみたびの失望を味わわされたわたしは、広州のカメラ店に向かいました。
以前、M8用のウッドクリップを買った店に行って、今度は同素材のM8用サム・アップを購入する目論見です。

サム・アップは、巻き上げの必要のないM8やM9で、遊んでしまう親指レストのようなグリップの一種です。
ホールド性が高まるし、右手の疲労度も抑えられるとあったので、以前から欲しかったアクセサリーでした。
もともとはドイツだかアメリカだかのフォトグラファーが開発したものを、中国で独自コピーしたもので、値段も2/3ほどと、まあリーズナブルです。

そのカメラ店のみで売られているのですが、ここがまた一筋縄でいかないショップです。
前回、グリップを購入したときは、いついつ買いに行くからよろしくとメールして、了解の返事をもらっていたのに店では誰もそのことを承知していなくてグリップは売り切れているという共産的対応にあきれさせられました。

そして今回のサム・アップでは、サイトで出ていた価格よりも大幅にふったけてきました。
言い忘れましたが、ここはライカを中心に販売する銀座にあっても違和感のないような外観の立派な専門店です。
なぜ、ここで価格交渉しなくてはならないのか。
結局、サイトよりも微妙に高い値段が最終価格だと言い、不満を言うともうサイト上にはあげてないから欲しければ今買うしかないのよ、と強欲女性店長に足許を見られます。

さすがに腹が立ってきて、それならあきらめると店を出ます。
そこで頭を冷やすべく近くをスナップして歩いたのですが、そのときの1枚が作例の自転車のふたりです。
ピントが怪しいのは、その時のイライラが出てしまったとご容赦ください。

この日はまったくいいことが無かったので、ここでサム・アップも買っておかないと今日1日が無駄に終わってしまうような気がして、情けないことに件のカメラ店に戻ってしまいました。
ほくそ笑んでいたであろう強欲店長に対して、プライドもなしにサム・アップ購入の意思を告げるしかありませんでした。

屈辱的ですが、きっと店長の方がわたしの見えないところで、親指を立ててイエーとやっていたことでしょう。
せめて前回同様店員の女の子の写真でも悔しさまぎれに撮りたかったのですが、強欲店長はじめゾナーの被写体にふさわしい女性は存在しませんでした。

それでも新しいアクセサリーの入手は心躍るものがあったりします。
深圳に向かう列車の中で、その感触を確かめようとしましたが、うーんというのが率直な感想です。
ホールド性向上も右手の解放感も、どちらもわたしには感じられなかったのでした。
【M8/Sonnar 5cmF1.5 F1.5】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Zeiss Sonnar 5cmF1.5(Contax) | trackback(0) | comment(2) | 2010/03/10 Wed

進去不了

M8/Sonnar 5cmF1.5
先日、コンタックス用のブラック&ニッケル・レンズは10種類あることを書きました。
外観にこだわらない方には、おめでたい話だなあと思われるでしょうが、これらを必死に集めてようやく8本になったと自慢までしました。
ふと気付いたのですが、ライカにはブラック&ニッケル・レンズはどのくらいあるのでしょうか。

まず、今回はエルマー5cmなどのニッケルのみのレンズは除外します。
多く存在するブラック&クロームのレンズももちろんパスします。
これは申し訳ないですが、ライカに距離計連動しない、200mm以上のレンズなども対象外とさせていただきました。
そうして調べていくと、案外、ブラック&ニッケル・レンズは少なくということが分かります。

あらためて見てみると、標準レンズ、広角にはブラック&ニッケル・レンズが存在しません。
では1930年代くらいの古い長焦点レンズはすべて、ブラック&ニッケル・レンズかといえばまたちょっと事情が違ったりもします。
製造期間中、ずっとブラック&ニッケルで作り続けられたレンズはないのです。
いずれもブラック&クロームに途中で変更してしまっています。
それらを列挙します。

1.ヘクトール7.3cmF1.9
2.エルマー9cmF4(いわゆるダルマ)
3.エルマー10.5cmF6.3
4.エルマー13.5cmF4.5

わずかにこの4種類しかありません。
が、わずか少数だけブラック&ニッケルが作られたと文献で読んだものもありますので、一応記載します。

5.タンバール9cmF2.2
6.エルマー9cmF4(細鏡胴)
7.ヘクトール13.5cmF4.5

よく知られるように2と4には、ライカのバックフォーカスが標準化される前のノン・スタンダード・レンズというのがありまして、カメラのシリアル番号の下3桁が刻印されていますが、これは距離計連動しません。
距離計連動タイプの両ブラック&ニッケル・レンズはなかなか希少性が高いと思われます。

例えば、ダルマ・エルマーは製造数約2400本と言われていて、ノン・スタンダードとクロームのものを除くと恐らく現存するのは2000本以下と想像されます。
しかし、コンディションを気にしなければその不人気のためけっこう安く売られているレンズです。
エルマー13.5cmも同様かと思います。
これは、ブラック&ニッケル・レンズを珍重する人が少ないということを意味しているのでしょうか。


今日の作例に行きましょう。
期待を裏切った石湾に早々に見切りをつけ、広州に向かいました。
事前の調べで、石湾から広州宏村に向かう路線バスが出ていることを確認していました。
知っていても案外迷ったりするのが中国のバスですが、今回は交差点で信号待ちしているとそのパスを目撃したので、ダッシュでそのバスに乗り込むことができました。
しかし、事前リサーチでは45分とあった所要時間ですが、残念ながら倍近い1時間20分要して宏村に到着しました。

バスターミナルから清代の建築群が残るという聚龍までは徒歩圏のはずでしたが、時間が気になるのでバイクタクシー利用となります。
案の定30元と吹っかけられたのを、まあ妥協できるかという15元まで交渉してパイクの荷台に跨りましたが、今回もわたしが外国人とは気付かれていません。
ただ、広東語のやり取りではないので明らかに地元民とは思われていないでしょうが、少しずつ現地に溶け込みつつあるのが分かり、後部座席でにんまりを隠せません。

そうやって辿り着いた聚龍村でしたが、ご覧のとおりの工事中でした。
またしても高い壁が立ち入りを拒みます。
うーん、どうも今回は、招かれざれる場所を選んで進んできたかのようです。
【M8/Sonnar 5cmF1.5 F1.5】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Zeiss Sonnar 5cmF1.5(Contax) | trackback(0) | comment(1) | 2010/03/09 Tue

佛山没地震

M8/Sonnar 5cmF1.5
コンタックス・レンズをライカで使用するためのアダプターは、古今東西多くが世に出ているようです。
古くは、イギリスのクック&パーキンス、日本ではオリオンが知られていますが、現在では中国や南米で細々と製造されています。
これら現行品は、3万円前後で売買されているようです。

わたしも3年前、某オークションで入手しました。
中国製です。
日本への送料をケチるため、出品者の香港人に頼んで中国に渡航の際、香港でピックアップしました。
恐らくはコンタックス・ボディから外したヘリコイドにライカの距離計連動カムを接続し、アルミ削り出しのマウントを嵌めています。
見た目には、完成度の高さと手作り感が同居した、愛すべきアダプターと言えそうです。

しかし、よくよく使用してみると微妙に距離が合いません。
MSオプティカルに見てもらうとフランジバックがわずかに長くなっていたようです。
これは、正確に調整してもらい、いま完璧な状態にあると言えます。

そのアダプターにゾナーを付けて行ったのですから、中国へは凱旋帰国ということになるでしょうか。
実はこの後、広州のカメラ店に行ったのですが、別の中国メーカーによるコンタックス・ライカ・アダプターが売られていました。
聞くと35000円相当です。
この3年の間に中国経済は大きく成長しましたので、この5000円の値上げは致し方ないのでしょう。


さて、作例です。
南風古竈に大きく失望したわたしは、周辺を少し散策します。
ここを訪れる観光客をあてにした陶器屋さんが並んでいるのですが、土曜というのに人通りもまばらでした。
どこも開店休業状態ですね。

店番の女の子が、一心に本を読んでいたので、さっとスナップしたのですが、ひと絞り開けた2枚目ではバレてしまって睨まれてしまいました。
もうちょっと小さな持ち帰れるサイズのものがあれば、お土産にしてもよかったのですが、この大きさでは購入意欲は微塵も起こりません。

あれっ? いま気付いたのですが、売り物は陶器じゃなくて磁器なのでは?
【M8/Sonnar 5cmF1.5 F1.5】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Zeiss Sonnar 5cmF1.5(Contax) | trackback(0) | comment(3) | 2010/03/08 Mon

陶器的名産之地

M8/Sonnar 5cmF1.5
コンタックスⅠ型用のレンズは全部で10種類が発売になりました。
ブラックボディに合うよう、レンズはすべてブラック&ニッケルかオール・ニッケルの美しい外観です。
28mmから180mmまですべてアダプターでライカに装着できますので、これらレンズをょ全部集めてやろうとずっと考えています。

比較的簡単に見つかるレンズもありますが、何しろ1930年代前半から半ばの短期間しか製造されていませんので、入手困難なものも存在します。
実現はまあ不可能かくらいの気持ちでいた方が精神的にはいいですし、実際にもそんなものでしょう。

そんな10本をわたしの勝手な判断による入手難易度順に並べてみましょう。
ブラック&ニッケル・コンタックス・レンズ・ベスト10です。

10.テッサー5cmF3.5
9.ゾナー5cmF2
8.ゾナー13.5cmF4
7.テッサー5cmF2.8
6.テッサー2.8cmF8
5.ゾナー5cmF1.5
4.ゾナー8.5cmF2
3.トリオター8.5cmF4
2.テッサー18cmF6.3
1.ビオター4cmF2

うちゾナー8.5cmとビオター4cm以外は、あれよあれよといううちに入手してしまいました。
製造数こそ少ないものの、ライカのレンズと比べるとずっと人気が落ちるようです。
コンディションにこだわらなかったこともあって、いずれも予想以上に安価に手に入れることができました。

ゾナー8.5cmは気長に待っていれば安い出物が出てくるだろう感触があります。
しかし、ビオター4cmの方は、恐らく入手困難でしょう。
どうも極端に製造数が少なかったようなのです。

4cmという中途半端な画角が不人気で売れなかったのだろうというのが定説ですが、ゾナーF2、F1.5がコンタックス用として開発されたということがあり、ツァイスとしてもゾナーを全面に出したためビオターが過小評価されたという可能性もあると思います。
ビオター4cmはコンタックス用としてはその後も不遇でしたが、ロボット用のレンズとしては空前のヒットをしています。

コンタックス時代のツァイスは、ゾナー・タイプに固執しますが、一眼レフ時代に入るとミラー当たりの問題もあって、ダブルガウスやその変形のビオメター・タイプに大きく方向変換してしまいます。
しかし、コンタックス時代にはビオター5cmF1.4というレンズも知られていて、ゾナーF1.5と併売された場合どういう変化があったのかたいへん気になるところです。

ちなみに、ゾナーはベルテレの設計、ビオターはメルテの設計です。
ふたりとも偉大なツァイスのレンズ設計者としてあまりに高名ですが、メルテはルドルフが設計したテッサーを改良した人としても知られており、ゾナーはベルテレ、それ以外はメルテといったコンタックス・レンズの共同開発の道筋ができていたのかもしれません。


さて、作例は石湾に移動して辿り着いた南風古竈のものです。
屋根が7重に連なっているのが見てとれると思いますが、これは先に進むほど建物が高くなっていることを意味しています。
そしてそのいちばん先に煙突が聳えている。
そう、分かりにくいですが、これは登り窯です。

佛山市石湾は、陶器の里として16世紀からの歴史があります。
以前見た書籍には、この登り窯で陶器を焼く職人の姿があったので、ぜひ見たいと訪れたわけですが、すでに窯は遺跡となって観光客向けの施設になっているようでした。

こここそがこの日の最大の目的地だっただけに、失望も大きいものがありました。
ここ数日間、コンタックス・レンズについてばかり記述していたのは、まさに現地のことで書くことが何にもなかったからです。
じつに寂しい旅だったというわけです。
【M8/Sonnar 5cmF1.5 F1.5】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Zeiss Sonnar 5cmF1.5(Contax) | trackback(0) | comment(4) | 2010/03/07 Sun

坐公交車去

M8/Sonnar 5cmF1.5
冒頭からお詫びです。
おとといツァイスのレンズは製造数不明である云々と書いたのですが、これは間違いでした。
電話帳と呼ばれる分厚いデータ本があって、○○年のシリアル××番から△△番まではテッサー5cmF3.5というように記載されているようですので、これらを合算することで製造数が特定できます。
自分のレンズがファーストバッチなどと判別できるので、ライカの製造番号表よりある意味すごいと言えそうです。

この電話帳は、少々高価で、読めないドイツ語表記、シリアルの欠番も多いなどと聞いていたので購入をためらっていましたが、これをきっかけに求めなくてはと思いました。
Gさんにはアドバイスいただき、ありがとうございました。

本といえば、わたしが少し前に買ったのは「コンタックスのすべて」(ハンス・ユルゲン・クッツ著)で、これも9000円の高価なハードカバー本です。
絶版になっていて、調べたら格安で古本屋さんに出ていたので思わずゲットしました。
すぐに読みましたが、豊富なデータをもとにクッツ氏の研究から客観的事実を積み上げていくタイプの本で、けっして退屈なものではなく、バランス良い記述に一気に読み通しました。
これ以前にコンタックスに関する文献がほとんどなかったことを考えると、資料的価値、読み物的面白さを両立させた座右の書になりうる本です。

資料としては、わたしにとってレンズが構成図のイラスト付きで一覧になっているのがありがたいです。
そしてもうひとつ、その一覧には発売当時の価格が出ていて、これも興味深いものでした。
標準レンズで言うと、テッサーF3.5=75RM、テッサーF2.8=100RM、ゾナーF2=165RM、ゾナーF1.5=300RMとなっています(RMは通貨単位ライヒス・マルク)。
また別項で、コンタックスⅠ型のボディが170RMということが分かります。

テッサーF3.5の価格を1とすると、ざっと、F2.8は1.5倍、F2は2倍、F1.5は4倍、ボディは2倍となります。
これを現行のライカとの関係に当てはめてみます。
ズマリット50mmF2.5が16万円、ズミクロン50mmF2が23万円、ズミルックスF1.4が40万円、ノクティルックス50mmF0.95が110万円、ライカMPボディが52万円です。
F2.5の価格を1として、ざっと、F2は1.5倍、F1.4は2.5倍、F0.95が7倍、ボディが3.5倍といったところです。

かなり強引ですが、コンタックスⅠ型をライカMPに見立てるなら、ゾナー5cmF1.5はノクティルックス50mmF0.95に相当することになります。
ボディの倍の値段の標準レンズという特別な存在、それがゾナー5cmF1.5なのだと思います。
なかなか見つけられなかった理由の一端はこんなところでしょう。


さて、作例です。
東華里の廃墟を右往左往していましたが、そろそろ次の石湾を目指さないといけません。
ガイドのような不思議な女性にそう告げると、彼女はまだまだこの辺を散策すると言って消えてしまいました。
わたしも石湾へ行くといわれるかなと心配しつつも、そうなっても面白いかもと考えていたので、あっさりと立ち去ったことが彼女の不思議さをいや増しました。

石湾へのバスはひんぱんに通っているのを見ていたので、バス停に着くとすぐ乗り込めました。
行程30分ほどですが、乗客の様子や町並みを眺めていたりすると退屈しないほどの時間です。
ちょうどぴったりの距離関係の座席にずいぶん若いお母さんが娘の手を引いて腰掛けたので、カメラの液晶を確認するフリをしつつ撮影させていただきました。
この半袖Tシャツでその時の暑さが伝わるでしょうか。
もちろんバスの中は、エアコンががんがんかかっています。

市井の人を撮るのがライフワークですから、こういう写真はよく撮ります。
しかし、ブログにあげることはあまりないのは、いつもは他にもう少しましなカットがあるからです。
実はこの日の夜、佛山出身の人たちと深圳で食事したのですが、その彼から佛山はあんまり写真に撮るものはないからなあと言われるくらい、この日は撮影していませんでした。

それともうひとつは、急にかなりシャープな絵になったところでご察しの通りめずらしく絞っているのですが、開放以外の写真はほとんどなかったので絞ったものも1枚出すことにしたということもあります。
どうして絞ったのか忘れてましたが、さきほど思い出しました。
例の不思議な女性がわたしを撮ってというので、廃墟をバックにF5.6にして撮ってみたのです。
その時は写真を送ってあげようかと思いわざわざ絞ったのですが、結局不思議女性からは名前すら聞かなかったのでした。
【M8/Sonnar 5cmF1.5 F5.6】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Zeiss Sonnar 5cmF1.5(Contax) | trackback(0) | comment(1) | 2010/03/06 Sat

幽霊的城市

M8/Sonnar 5cmF1.5
昨日、探し続けてやっと見つけたイチゴのゾナーという話を書きましたが、今日は引き続きどうしてそんなものを欲しがっていたかについて説明していけたらと思います(筆者註、5cmF1.5のゾナーのことをF2との区別からイチゴのゾナーと呼ぶ)。

まずは、そのデザインの美しさです。
ブラックとニッケル、それにノンコーティングの分厚いガラスのコンビネーションは美しいモノトーンの世界で、すごい空気を写しだしてくれそうな雰囲気に満ちています。
モノとしての存在感いっぱいです。

そして私的には、5cmF1.5というスペックに惹かれるというところがあります。
絞りの並びでいえば、F1.5よりもF1.4の方がユーザーには都合がいいはずですが、なぜか5cmF1.4というスペックのレンズはレンジファインダーでは、ズミルックス、ニッコール、キヤノンくらいしか思いつきません。
ところが、5cmF1.5の方は、キノ・プラズマート、クセノン、セプタック、ノクトン等錚々たる名玉が並んでいます。
F1.4はほとんどなくて、F1.6なんて皆無とあれば、5cmF1.5に神秘性を感じないではいられなくなってこようというものです。

何とはなしに探していたイチゴのゾナーですが、一気にテンションを上げさせる出来事がありました。
昨年末、関西の雄、Gさんと鎌倉をご一緒したとき、彼が手にしていたのがコンタックスとゾナー8.5cmF2でした。
コンタックスは撮影を優先してクロームのⅡ型だつたのですが、ゾナーはブラック&ニッケルの渋い鏡胴がいぶし銀のごとく光っていました。

本来、クロームボディとブラック&ニッケルというのはマッチングが悪いものです。
ライツの1930年代の望遠レンズ群も、初期はブラック&ニッケルだったのが、途中からブラック&クロームに変更されてしまっています。
後者は外観的な魅力が半減してしまっていると思うのですが、こうすることでブラックボディにもクロームボディにもフィットするようにしたライツなりの工夫なのかも知れません。

ただ、鎌倉で目撃したコンタックスⅡとブラック&ニッケル・ゾナーの組み合わせはレンズが太く大きく存在感が強かったためか、特に違和感を感じることなく、一気にブラック&ニッケル・レンズへの憧憬へと駆り立てずにはいませんでした。
そして、その矛先は8.5cmF2か5cmF1.5のゾナーに向けられることになったというわけです。
2ヵ月後、友人の助言によって安価にイチゴ・ゾナーを入手できたのは、まことに幸運だったと言わざるを得ませんが…。


さてさて、作例ですが、東華里でいっしょに紛れ込んだ謎の女性と、廃墟の中をしぱらくいっしょに探検することになりました。
正直わたしは廃墟が苦手で、少し前まで人がいてその生活の匂いがまだ残っているような状態でしたから、不気味さは一入でした。
強い毒ガスの発生とかウィルスの流行、はては細菌兵器かなにかで、一気に町が滅んでしまったかのようで、気が滅入ってくるのです。

好奇心旺盛な彼女は何を思ってか、あっちへ行きましょうこっちも見てみたいとあちこちわたしを連れまわします。
その時2階屋の上から撮ったのがこの写真です。
メイン通りの左右には、当時としては豪奢な建築が隙間なく並んでいただろう様子が理解できると思います。
これを見た瞬間、ゴーストタウンという言葉がすぐ頭に浮かんできました。
【M8/Sonnar 5cmF1.5 F1.5】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Zeiss Sonnar 5cmF1.5(Contax) | trackback(0) | comment(6) | 2010/03/05 Fri

草苺的Sonnar

M8/Sonnar 5cmF1.5
今日は、問い合わせもありましたので、レンズのことから始めたいと思います。
ツァイスのゾナー5cmF1.5ですが、コンタックス用のレンズをアダプターでライカM8に距離計連動させて使っています。
そのコンタックスも、ブラック・コンタックス(ブラコン?)と通称されるⅠ型で、レンズもブラック&ニッケルの渋い外観をしています。

ライカのボディやレンズの多くは製造数や年代が記録されていて、今では一般のファンでも確認が可能です。
例えば、ヘクトール7.3cmF1.9は、1931年に121本製造され15年後の1946年の2本で製造が打ち切られるまで合計7225本が世に出たことが分かります。
また、シリアル番号1416××番のヘクトールは1931年に製造された、最初の年の121本のうちの1本だとも調べることが可能です。

しかし、ツァイスのカメラやレンズには、そこまでのデータがないようです。
レンズのシリアル番号から製造年を特定することは可能ですが、レンズの製造数などを調べることができません。
コンタックス用の標準レンズは、F1.5とF2のゾナー、F2.8とF3.5のテッサーの合計4本がありますが、それぞれの製造数が不明です。

クローム・タイプのⅡ型、Ⅲ型、さらには戦後のⅡa型、Ⅲa型の標準はゾナーが主流となっていますし、F1.5とF2は同程度に見ることができます。
そんなところから、ブラック&ニッケルのF1.5ゾナーも、普通に存在するものかと考えていましたが、これは意外に入手困難なレンズのようです。

2年ほど探しましたが、その間見たのは5本程度でした。
いずれもコンタックスⅠ型に付いたアウトフィットの状態で、かなり高価だったため手が出ませんでした。
なかなか見つからずに悶々としていたところ、友人が2本持っているという情報を得ました。
1本譲ってくれと懇願しましたが、首をたてに振ってくれません。
たまたま別々に購入したが、なんとシリアル番号が連番で、これは神のお告げか何かに違いないと神棚に祀ってあるからだそうです。

しかし、そんな彼だからこそ、その時以来必死にF1.5のゾナーヲわたしのために探してくれたそうです。
そして、ようやく今年の2月になって、彼の情報により念願のゾナーが我が家にやって来ました。
いてもたってもいられず、今回、テストのために持ち出したという次第です。
ちかみに、これは1935年製造の1本でした。

すっかり長くなってしまったレンズの話の続きはまた明日ということにして、作例写真に付いて。

東華里では不思議な同行者ができました。
わたしと同様、この町のことを知ってふらりとやって来たが、塀で覆われていたので警備員に頼んで中に入れてもらったという女性です。

当初は写真を何枚か撮って10分程度で戻るつもりだったのですが、彼女に促されて鍵の掛かっていない建物に入って行ったり工事現場に潜入したりと、ちょっとした冒険気分です。
20台前半と見ましたが、後ろ姿の写真採用ということで事情を察していただければと思います。
【M8/Sonnar 5cmF1.5 F1.5】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Zeiss Sonnar 5cmF1.5(Contax) | trackback(0) | comment(3) | 2010/03/04 Thu

寂寞老猫子

M8/Sonnar 5cmF1.5
祖廟を早々に切りあげ、メインの目的地だった東華里を目指しました。
前日、深圳の書店で見つけた広東省の案内書に佛山古鎮として紹介されていたのが東華里です。
それまで広州に用事があったのでそれに関連付けて近隣のどこかに行くつもりではいましたが、この本をきっかけに佛山行きが決断されました。

さらには祖廟からバスで15分ほどのところに、中国陶器のふるさとと言われる石湾がありますので、ここにも立ち寄ることとします。
広州でも用事の前に聚龍というミニ古鎮に行ってみることにします。
深圳→佛山祖廟→東華里→石湾→聚龍→広州→深圳、こんなルートを駆け足で巡ることになりました。

メインの東華里でたっぷり時間をとりたいので祖廟は手短に済ますのですが、東華里はすぐ近くのようです。
出口にいた職員の女性にたずねると、歩いて10分ほどと言います。
ただ、気になる一言を付け加えました。
いま行っても何も見れないかもしれないけど…。

まさかと思いながら急ぎ足で向かうと、女性の言葉通り東華里は一大廃墟と化していました。
再開発の波に呑まれてしまうようです。
清代と思しき建物がずらっと並んでいるのは確認できますが、高い壁に阻まれてその様子はよく分かりません。
困りました。

ふらふら歩いていると即席づくりの壁の一部が扉になっていて、わずかに開いている所があるのに気付きました。
のぞくと警察官だか警備員だかが見えます。
日本だったら腰が引けてしまう気の弱いわたしですが、なぜか旅先では気が大きくなる楽天性も持ち合わせているらしく、気付くと図々しく立ち入っては中を見学させてほしいと話しかけていました。

警備官(?)は、ほんとうはダメなんだよと強調しながらも、見学の許可をしてくれました。
おおらかなのが大陸的だと思うのですが、断られれば官僚的なのが中国だと思ったことでしょう。
まあ、どちらに転んでも中国は中国です。

聞けば、やはりもう誰も住んでいないということでした。
というわけで、唯一の居住者と思われるのが、写真の猫です。
それにしても猫が、こんなに寂しい顔をしているのを初めて見ました。
【M8/Sonnar 5cmF1.5 F1.5】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Zeiss Sonnar 5cmF1.5(Contax) | trackback(0) | comment(5) | 2010/03/03 Wed

堅実派

M8/Sonnar 5cmF1.5
昨夜は、いきなり広州、深圳、佛山という地名を出しましたが、一般的にはどんなところかはちんぷんかんぷんだったかも知れません。
それぞれの人口は、750万、200万、350万の大都市です。
たとえて言えば、省都の広州が東京で、大きな港のある深圳が横浜、広州に20キロほどの距離で隣接する佛山が川崎というところでしょうか。

とすれば、佛山の祖廟は、さしづめ川崎大師というところでしょう。
神社と比較するのもおかしいのかも知れませんが、広東省ではおそらくいちばん知名度の高い名刹という話です。
町の中心にあるということもあって、佛山のシンボル的存在でした。

これは未確認ですが、祖廟は佛山市禅城区にあって、佛山も禅城も祖廟との関連から着いた名称ではないかと想像できます。

さて、作例ですが、中国語名で榕樹と言われるガジュマルの木に多くの装飾があるように見えるシーンです。
先日まで春節休みでしたのでその飾りに見えますし、クリスマスツリーをも連想させますが、実は趣旨はちょっと違っているようです。

この赤い札に願い事を書いて木に向けて放り投げるのですが、それが木にかかって落ちてこないと願い事が叶うということのようです。
落ちてきちゃったら叶わないのかといえば、引っかかるまで投げ続ければいいのだそうです。

ただ、大切な願い事を書いて落っこちてきたら縁起がいいとは言えません。
だからでしょう、写真のおばちゃんは立入禁止のくさりを乗り越えて慎重に札を掛けています。
寺院が定めた立入禁止を破って願い事を成就させるというのは、信神深いのかそうでないのか、よく分からなくなるシーンでした。
【M8/Sonnar 5cmF1.5 F1.5】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Zeiss Sonnar 5cmF1.5(Contax) | trackback(0) | comment(1) | 2010/03/02 Tue
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