冬天奏鳴曲⑦撫摩

R-D1/Cine-Velostigmat 2inchF1.5
友人が行きたがっていたのが滝です。
西帰浦という済州に次ぐ二番目の大きな町の郊外にあって、渓谷のような空間が続いていました。
夏に来れば、清涼感を味わえそうですが、この日はかなり寒々として感じられました。
何しろ途中、済州島の初雪に見舞われ、韓国のハワイと聞いていたので薄着だったわたしは、ずっと寒さと格闘していましたので。
そういえば、二年前この友人と北京を旅した時も、初雪に遭遇してびっくりしましたが、わたしか友人のどちらかが、雪男(?)なのでしょう。

さて、ここでは、ローカルのカップルがそれぞれに撮影をしているところでした。
ふたりともニコン党で、男性がデジタルで手持ち、女性がフィルムで三脚と、撮影法にはそれぞれのポリシーが存在しているようでした。
彼女がカメラをいつくしむように優しく操作している姿が印象に残りました。
フレアがかった手指が、その時のわたしの記憶そのものだったのもたいへん気に入っています。

今回、主に使用した Cine-Velostigmat 2inchF1.5 は、Bolex という 16mm シネカメラ用のレンズだったようです。
Bolex はスイス人ジャック・ボルスキーによって設計されたムービーカメラですが、ボルスキーといえば初期のアルバを設計した人としてより知られた存在でしょう。
アルバがマクロ・スヴィターやオールドデルフト、アンジェニュー、キノプティックといった優れたレンズ群を擁したことで知られるように、Bolex も名だたるレンズがそのカタログに掲載されたことはもっと知られていいでしょう。

最近、宮崎さんにライカ連動改造いただいた 50mm, 75mm のスヴィターレンズがありますが、その最初期である 1930 年頃においては、フーゴ・マイヤーのキノプラズマートがラインアップされていました。
それらレンズ群に伍するのが、今回使用したシネ・ヴェロスティグマートだと思っています。

残念ながら Bolex も後期になると交換レンズはベルティオやアンジェニューのズームばかりになってしまいます。
それに、もともとが 16mm シネサイズですから、ライカ版の1/4程度の大きさしかないわけで、25mm クラスのレンズではイメージサークルがまったく足りませんし、50mm 以上でも四隅は怪しくなります。
それは覚悟する必要があります。

このレンズは非常に軟調で、日中の太陽光線が入る場面ではしばしばフレアに悩まさせる、気難しいレンズです。
しかし、この作例のように近距離でもピントがあった部分にシャープネスと柔らかさが同居しているのはたいへん好みですし、ボケのなかにあっても強いコントラストをものともせず、諧調豊かに背景を描き分けてくれます。
とは言え、好みが分かれるレンズ、というよりは、所詮はたいがいの人にとってクズレンズというレッテルを貼られることになるのでしょう。
では、Bolex に付いていた1930年代当時の評価はいかほどだったのでしょう。
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Wollensak Cine-Velostigmat 2inchF1.5 | trackback(0) | comment(2) | 2008/11/30 Sun

冬天奏鳴曲⑥兎子

R-D1/Speed Panchro 35mmF2
昨日ご紹介した城山日出峰ですが、息も絶え絶え急坂を登り切りました。
間近で見た火口部はクレーターのようでしたが、今では草木が茂っていて、かつて火を噴いたという面影はありません。
それでも、突き出た断崖越しに見る海の風景は圧倒的で、多くの人が訪れて賑わっていました。

そんな中で、崖のはずれにうさぎのカップルが佇んでいるのはわたしだけだったようです。
景色を楽しみにやってきているのですから、気づく方がどうかしているというべきですが。
胸ポケットに機内でビールとともに配られたピーナツがあったので、ためしに手招きすると飛びついてきてぽりぽり噛り付きました。

どういう経緯でうさぎはここへやって来たのでしょうか。
城山日出峰は本当に崖で、人はもちろん鳥以外の動物が住む環境にはありません。
人は、絶景の世界にあって、不思議について思い巡らすのを好むものなのでしょう。
あるいは、この峰を守る神聖な動物なのかもしれないなどと思い始めていました。

ですが、ピーナツを食べ終わるが早いか、クレーのうさぎが白いのにしがみついて種族保存の営みを開始しだしました。
神聖視一転、やはり彼らはフツーのうさぎでした。
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Cooke Speed Panchro 35mmF2 | trackback(0) | comment(6) | 2008/11/29 Sat

冬天奏鳴曲⑤王冠

R-D1/Speed Panchro 35mmF2
城邑民俗村からほど近くに城山日出峰があります。
あまりにスケールがでかくて、全体像を写し取れませんでしたが、ここは海に突き出た、かつての火山の火口部です。
20分も登るとその火口部が見られますが、むしろ海側から眺めた姿の方がうつくしいでしょう。
世界自然遺産に登録されている旨、表示もありました。

天気の移り変わりの激しさから、神秘的かつダイナミックな風景が描出されています。
雲に覆われて真っ暗だったところ、急に雲の隙間から日がオーロラのようにさして来ます。
まるでベックリンの死の島を彷彿させる、現実とも夢ともつかない世界でした。

ここでのみ、深川精密工房にて製造された Speed Panchro 35mmF2 を使用しています。
今回、譲り受けるチャンスを得たのですが、自らの不甲斐なさでお返しすることになった幻のレンズと言えるものです。
さすが、工房主が自信を持って勧めるレンズで、周辺光量が若干落ちることを除けば、光をよく再現できる解像度のすぐれた名レンズです。

深川精密工房といえば、写真工業誌の最新号に工房主自らが筆を執った紹介記事が掲載されています。
氏が工房を立ち上げるきっかけになったレンズとの出合いや、アイディアが生まれていく経緯が熱い文章とともに語られています。
紹介されたレンズのラインアップが興味深いものばかりですが、氏が仲間も大切にして愉しみを共有しようという姿勢も伝わって、人を思いやる気持ちあってこそあれだけの素晴らしい人物スナップが撮れるのだなと思いいたらせる内容です。

毎週のように改造レンズを生み出す氏のことですから、1年後には続編を読みたいものと思いますが、残念ながらそれは叶わないようです。
写真工業が工房の紹介記事の掲載号をもって休刊してしまうからです。
写真機やレンズに対して真摯に取り組む数少ない良心としての雑誌だっただけに、残念との声を多く聞きます。
わたしなどは、〇〇カメラ誌と××カメラ誌はほとんど内容が変わらないので、このふたつが合併してしまって、写真工業はこの編集方針を貫いて続けてほしいなどと思うのですが、現行カメラが家電化してしまった今ではそれは叶わないことなのでしょう。
むしろ、ここまで頑張ってこられた写真工業にねぎらいの言葉をかけるべきでしょうね。
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Cooke Speed Panchro 35mmF2 | trackback(0) | comment(2) | 2008/11/28 Fri

冬天奏鳴曲④減肥

R-D1/Cine-Velostigmat 2inchF1.5
わたしが今回いちばん楽しみにしていたのが、城邑民俗村でした。
当初、民俗村という名称から日光江戸村のような過去を再現した遊園地的な村かと早合点してしまったため、まったく行こうという気も起らなかったのですが、実は正真正銘昔ながらの村が現存しているところで、今では政府によって保護されているところから民俗村という名称を冠しているとのこと。
おまえはそういうところが好きだろうと察してくれた友人は、行きの機内で説明してくれます。
わたしはそこにさえ行ければ、他はどこへ行ってもかまわないと友人に感謝したのでした。

村に到着してみると、建物群の美しさに驚きを禁じえません。
確か200戸ほどの民家が固まっているそうで、そのほとんどの屋根が萱で葺かれています。
この屋根が、石を積んだ塀と非常にフィットしています。
また、門は三本の木を通してありますが、その組み合わせで、不在、子供のみいる、夕方戻るを表現していて、それを見た近隣の家が家の様子を把握できるようになっているそうです。

トイレは野外に積んだ石組にまたがって済ませます(現在は普通のトイレになっている)。
石組の下には家畜のブタが待ち構えていて、汚物を処理してくれます。
女性はチマチョゴリの長いスカート姿だったので、野外のトイレも心配なかったようです。

そのほかいくつもの生活を丁寧に紹介いただきました。
しかし、これは観光客が団体で個人でひっきりなしに訪れるからで、現地ガイドの日本語の説明は驚くほどよどみがありません。
そして、名物のお茶やら冬虫夏草をどうぞお買い求めください、とお約束が待っています。

それではと、少し散策してみます。
萱と石積みが連なる村はやはり美しいのですが、そこここで待ち構えるガイドさんたちが伝統の村と過去を再現した村の境界をあいまいにして、もうどちらでもいいやという気持ちにさせてしまうのがいささか残念な気持ちでした。

さらにはずれの方まで歩くと、もう閑散として村本来の姿になったように感じます。
ああ、しかし、ここでも家の前をバスでも停まれる駐車スペースにして、手ぐすね引いて待っているアジュマの姿が。
ても、シーズンオフのせいで客が現れません。
それで、フラフープで肥え太った腰の贅肉を落とそうと躍起のようです。
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Wollensak Cine-Velostigmat 2inchF1.5 | trackback(0) | comment(6) | 2008/11/27 Thu

冬天奏鳴曲③石段

R-D1/Cine-Velostigmat 2inchF1.5
済州島は数百万年の海中噴火によって誕生した島だそうです。
面積は大阪府といっしょくらい。
島を一周すると200キロ弱で、タクシーで回るのには少し辛い距離です。
時間より早めに現われていた運転手の朴さんに恐る恐るたずねると、大丈夫です、一周してみましょうと請け負ってくれました。
8時間で約9000円の基本料金だけでかまわないそうです。
わたしが行きたいと思った一個所と友人が行きたかった一個所を指示して、あとは朴さんにほぼおまかせの一日がスタートしました。

済州島には世界一のものが二つあります。
そしてその二つともが、ここ万丈窟にあります。
ひとつは世界最大の溶岩による洞窟で、もうひとつが世界一の溶岩柱だと朴さんが説明してくれました。

たいへん幻想的な内部を探検家気分で進むはずが、修学旅行の一団と一緒になってしまいました。
みんな大騒ぎしていて、せっかくの探検は台無しです。
狭い洞窟に大人数で一気に入り込むと窮屈感と酸素が持つのかとの不安で、息苦しくもなってきます。
ただ、わたしも友人も不満どころか、この空間を楽しんでいました。
修学旅行は、ソウルから来た女子高生たちだったからです。
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Wollensak Cine-Velostigmat 2inchF1.5 | trackback(0) | comment(4) | 2008/11/26 Wed

冬天奏鳴曲②不在

R-D1/Cine-Velostigmat 2inchF1.5
済州の宿泊はワールドワイドな大型ホテルでした。
部屋数が多すぎるゆえの小さなトラブルや団体さんの傲慢な態度を目の当たりにしたりと、わたしの最も嫌いなパターンです。
ここは日本人の宿泊が多いようで、スタッフの全員が日本語を話すようでした。

わたしは韓国語はさっぱりですし、英語もめちゃくちゃです。
それでも、あいさつは韓国語を使いますし、会話は言葉の練習になるので英語を使います。
無料体験英語レッスンです。
しかし、ここのスタッフは英語で問いかけても日本語で返されて、さすがにそうなると会話は日本語に移行してしまいますので、英語レッスンどころか彼らに日本語無料レッスンしてあげているようで損した気分です。

ホテルはいちばんグレードの低い料金だったからなのか、ひどい部屋でがっかりしました。
新しいホテルのはずなのに、細部に手抜きがあって、窓枠のペイントが剥がれていたり、サッシがしょぼかったり、この辺は窓際に立つと妙に目について気になってしまいます。
何よりがっかりだったのが、ツインの部屋なのに一方がダブルベッドでもう一方はその半分近い幅のシングルベッドになっています。
シングルベッドに寝るのは、安宿で慣れていますが、部屋は広いのでどうしてこんなことになっているのか不可解でした。

さらにひどいのがバスルームと部屋の間が密閉ではなく大きく隙間が空いていることで、斜めの木が仕切りなので視覚的には問題ありませんが、聴覚には影響大です。
就寝中に友人がトイレに立つと、じょぼじょぼじょぼという音で目が覚めるという、悲しい体験をしました。

ホテルは海の真ん前に立っていて、絶好のロケーションですが、当然安い部屋は海を背に町側を向いています。
ところが、フロント階にあるトイレは窓から海の景色が一望できて、友人がポツリと言った
「われわれの部屋よりトイレの方が眺望が良いなんて…」
という一言に切なくなってしまいました。

ふだん気ままな旅をしていると不便はきにしませんが、高価なホテルになるとアラ探しばかりしてしまう自分はなんとスケールの小さい人間かと気づき悲しくなります。

友人と意見の一致をみたこのホテルの最大の美点は、コンシェルジュのハンミンさんです。
明日は、タクシーでもチャーターして島をぐるっと1周しようということになり相談に行ったのですが、たいへん親身になって予約とルートのアレンジを受けてくれました。

あまりに親切なので勘違いしたわたしたちは、ちょっとしつこく質問しすぎたようです。
翌日以降、会う機会はなく、聞いても彼女はいまいないとけんもほろろで、ついに二度と目にすることはありませんでした。
どうやら、ストーカーと看做されようです。
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Wollensak Cine-Velostigmat 2inchF1.5 | trackback(0) | comment(5) | 2008/11/25 Tue

冬天奏鳴曲①錯視

R-D1/Cine-Velostigmat 2inchF1.5
毎年、恒例になりつつある友人との旅があります。
昨年の台北に続き、今年は韓国・済州島へ2泊3日で出掛けてきました。
済州島へは成田から直行便で2時間弱です。
長崎か福岡へ飛ぶ感覚で、鹿児島や沖縄よりも近いのです。
機内食を食べてさてひと眠りするかとまどろんでいたら、もう着いてしまいました。
そういえば、音楽や映画など機内エンターテインメントのない、珍しい国際線でした。

わたしが計画するとマニアックなアジア旅になってしまうので、基本的に行動は友人に一任しています。
台北では現地の友人がいましたし、言葉もどうにかなったので旅はスムーズでしたが、韓国ではそうもいかないとガイドブックをたよりに名所巡りしつつ現地の人と触れ合おうなどと計画していました。
そういうわけで、まずは、済州きっての観光スポットの紹介です。
しかし、これは何でしょう?

済州島一周トライアスロン大会、ではなく、神秘坂だったか、上り坂なのに下っていく不思議な坂だそうです。
写真を見てもそうですし、実際の現場でも最初から下り坂にしか感じられなかったのですが、現地では上りに見える人はそう見え、自転車を漕がずとも坂を上っているように感じられるのが神秘なのだとの説明でした。
わたしたちにとっては、そう言い張る現地の人の説明の方に、神秘性というか、欺瞞性というかそんな不思議感覚を植え付けられる旅の始まりになりました。

ここは観光スポットですから、次から次へとツアーバスが訪れました。
驚くべきは、ツアーは日本人だけではなく、中国本土からも多くやって来ていることです。
写っている3人はすべて中国人、脇にあったおでんの売店では、韓国ウォンはもとより、日本円でも中国元でもそのまま使えます。
以降、買い物のときなど、中国人のふりをして値切り交渉に役立たせていただきました。
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Wollensak Cine-Velostigmat 2inchF1.5 | trackback(0) | comment(2) | 2008/11/24 Mon

紫色的烟

R-D1/Tambar 90mmF2.2
急に空模様が怪しくなったと思うと、大粒の雨が降ってきました。
深大寺の散策は早々に切り上げ、食事に向かいました。
レンズのフレアか、トリを焼く煙かもうなんだか分かりません。
アルコールがまわったからかも知れないですね。
これで初タンパールとの悪戦苦闘シリーズは終了です。

本日、愉快な仲間達が何人かまた集まって、深大寺での反省会が催されました。
反省会ですから、皆さん、写真持参です。
しかし、うち1名は手ぶらでしたが、こんな調子でしたので、どうかお許しください。
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Leitz Thambar 9cmF2.2 | trackback(0) | comment(11) | 2008/11/23 Sun

軽快的脚効

R-D1/Tambar 90mmF2.2
今回お借りしたタンパールについて少し紹介したいと思います。
シリアル番号を調べると製造は1936年で、これはタンパールの製造がはじまった翌年です。
製造総数が2984本で、1935~49年と思ったよりも長い間に細々と作られたレンズですが、この1936年が最も製造された年で、おそらく最も安定したできのよいロットになるのではと想像できます。

全体にブラックペイントですが、距離表示の部分のみシルバーで、これはなぜかニッケルではなくクロームメッキになっています。
使用したレンズは、ブラックの剥げ具合が絶妙で、特に先端部などぬめっとした黒塗りと真鍮の金のコンビネーションが蒔絵のような優雅さを見せています。
また、フォーカシングのローレット加工された部分は、凹部はペイントがそのまま残り、凸部は擦れて金色になりで、宝飾加工のような美麗さです。
被写界深度目盛は美しいシルバーの象嵌ですが、他の表記は一般的な刻印部分に白いペイントがされています。

絞り表示は変わっています。
白い文字と赤い文字の2段で表記があるのです。
白い方は通常の絞り値を、赤い方がこのレンズ用のフィルターを付けたときの絞り値を表しているのだそうです。
レンズはブルーの単層コーティングがなされています。
当然、発売時には無かったはずのものですが、後日ライツが行ったものか、他で行われたのかは分かりません。
また、コーティングの効果も、ソフトフォーカスや発色にどの程度影響するのか興味深いところです。

忘れてはいけないのがヘリコイドの動きで、軽からず重すぎずの手応えが、回しながら愉しめるようチューンされているかのような精度を感じます。
フィルター径E49、無限時の全長9.5センチ、重量480グラムとズミクロンに比べてふたまわり以上小さい印象ですが、その分がっしりした重量感は印象に残ります。
当時のⅡD型ライカなどに付けるとカメラのマウントが変形しちゃうんじゃないかと心配になります。

いえ、それはR-D1でも同じで、この組み合わせではとても手首にストラップを巻きつけて片手で持つとか、首からぶらぶら提げてスナップ撮影という気にはなりません。
常に右手でボディを左手でレンズの下をそれぞれ包み込むように持って歩いていました。
大切なカメラとレンズを扱うので当然の姿勢ですが、どうもわたしはこれが苦手で、この辺も使いづらいなどと言い訳を続ける理由のひとつになります。

軽いフットワークとは言えない状況で、赤ん坊をあやす着物の女性は願ってもない被写体です。
赤ちゃんの顔がはっっきりしないのは残念ですが、どうにか形になりました。
しかし、むしろ偶然写りこんだ後方の男性の方に俄然目が行きます。
よく見れば黒いカメラに白鏡胴のレンズの組み合わせを右手と首のふたつ持って闊歩しています。
達人の気配濃厚で、わたしがカメラ1台で苦心する前を2台のカメラを自在に操っているようです。
しかも、そのフットワークの軽快なこと。
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Leitz Thambar 9cmF2.2 | trackback(0) | comment(7) | 2008/11/22 Sat

愉快的同士們

R-D1/Tambar 90mmF2.2
今回の深大寺散策も、ろくろを回し続け窯にも火を絶やさない名人 charley944 さん言うところの"いつもの愉快な仲間達"と歩いています。
愉快な、と言っても人を笑かしてやろうとかそういうことではなく、レンズやカメラが好きという唯一の接点で結びついた、その他には共通項が見つけにくい雑多な人たちがひとところに集まってがやがややる姿のことで、わたしはこの愉快な仲間達という言葉がなんだか気に入っています。

アマチュアという言葉は、プロに対するという観点から未熟者としての素人というふうに解釈されがちです。
しかし、これも本来のラテン語の"愛する人"の意味から訳せば、普通に"愛好家"とした方がずっとしっくりくるはずです。
ですが、カメラ関係ではよくハイアマチュアという言葉が使われます。
恐らく、素人よりも技術的にプロに近い存在の人という意味で使われているものでしょう。
これでは愛好家の意味が薄れますので、むしろロープロと呼んでほしいものです。
アマチュアという言葉は、うまいへた関係なく、それを愛好しているという事実だけを表していれば十分です。

さて、深大寺の向かいに水生植物園があったのですが、やはり時季外れのためか、荒廃感が漂っていました。
それがいい味を出していると盛り上がるメンバーもいて、さすが愉快な仲間だと感心しましたが、わたしはまだ修行不足で何をどう撮っていいかついていけません。

しばらくしんとした中を散策していましたが、突然賑やかな女性グループが向かいを通り過ぎました。
一瞬、華やかな雰囲気になってレンズを向けることができました。
彼女たちこそ、公園歩きの愉快な仲間達グループだったのでしょう。
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Leitz Thambar 9cmF2.2 | trackback(0) | comment(6) | 2008/11/21 Fri

顔色的問題

R-D1/Tambar 90mmF2.2
タンパールほど有名ながらスペックが知られていないレンズは、ライツには無いのではないでしょうか。
f=2.2 というF値は類例がなさそうですし、公称最短距離は1メートルですが、実際にはヘリコイドがもう少しまわって90センチくらい寄れそうです。
真鍮の重量鏡胴には、ニッケルメッキとブラック塗装が施され、距離表示などシルバーの象嵌が装飾品のようです。

レンズ構成は、3群4枚ですが、2群目が貼り合わせで、これはヘクトール135mmや125mmと同じです。
もちろんエルマーなどと同様に2群目が両側凹レンズになっています。
知られるように中央が銀に塗られたフィルターを付けることで、ソフトフォーカスレンズになります。
フィルター無しなら普通の90mmレンズと変わらないと、本に記載があります。
それらのことから、フィルターを付けなければ、135mmヘクトールのようなシャープな描写をするのではと想像していました。

しかし、今回撮ったタンパールは、すべてフィルター無しの開放の作例だけです。
絞るとどうなるかは未確認ですが、少なくとも開放においてはノンフィルターでソフトフォーカスになります。

そして、不思議な発色。
昨日の紅葉も赤がだいぶオレンジになっていましたが、今日も木の実の赤が紫に、緑、黄色、茶色の葉もそれぞれに違う色に化けています。
これは面白いといえば面白いですが、ひとつ間違うとなにかとんでもないことになりそうです。

ソフト具合や発色は、わたしにはまったくコントロールできませんでした。
それをうまく使いこなすこのレンズのオーナーに、あらためて敬意を表する次第です。
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Leitz Thambar 9cmF2.2 | trackback(0) | comment(13) | 2008/11/20 Thu

美術明信片風味

R-D1/Tambar 90mmF2.2
この日訪れた理由のひとつは、紅葉でした。
しかし、懸念したとおり、時期的には少し早かったようで、もみじ狩りというわれにはいきませんでした。
ところどころ紅葉は目にしたはずですが、唯一撮影したのがそば屋さんの軒先のそれです。
もうちょっといかにもそばをすすっているという雰囲気を出したかったのですが、これがわたしの限界ですので、解説付きでそばを食べているところと分かってもらえればよしとしなくてはなりません。

タンパールは使いづらいと初日から泣きを入れましたが、逆にこういうなんでもない場面で、淡いパステル画のように表現してくれるのは、このレンズの二面性を表していそうです。
右上のスペースに短歌でもよめれば、手製絵葉書のようになりそうです。
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Leitz Thambar 9cmF2.2 | trackback(0) | comment(9) | 2008/11/19 Wed

江戸散策絵図

R-D1/Tambar 90mmF2.2
先週末、幻のレンズ、タンパールをひっさげて、深大寺界隈を闊歩してきました。
とうとう買ってしまったのかと問われれば、答えは不是。
なんと、またこの貴重なレンズはお借りしたものです。
わたしにとってタンパールは、ある一定領域に鎮座するレンズです。
その入口まで達しないことには、とても購入には踏み切れない最後の峠です。
今回は、幸運にもお借りできたので、身の程知らずに試させていただきましたが、そもそもお断りすべきところをそうしなかったために、たいへんに難しいレンズと格闘して惨敗するという悲劇を味わわされました。

着物ばかりの美しいシチュエーションに幸先のいい出だしを感じます。
90mmF2.2というと見るからに使いづらいスペックですが、プラスポイントを先に出すと、進度が深いため明るいレンズながらピントがシビアでありません。
ですから、これがモノクロであれば、明治初期の収差いっぱい大判レンズで江戸から東京へ移り変わる風景をとらえた一枚に見えなくもなかっただろうと想像します。
おとなの顔はうまく隠れて、雰囲気がフレームにおさまった手堅い写真に思えます。

しかし、これがカラーだったため、たとえばお饅頭の煙が茶色だったりと、後ろののぼりの方にピントがぴったりきているように見えるなど、この後の四苦八苦を予言する布石があちこちに敷かれているようです。
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Leitz Thambar 9cmF2.2 | trackback(0) | comment(4) | 2008/11/18 Tue

在学日文的女佣

R-D1/Askania Kino-Anastigmat 50mm F1.8
冒険のような連州の旅から深圳に戻り、もうひとつの冒険に挑戦してきました。
以前、深圳にコスプレカフェができたが、入口の女の子の写真を撮るだけで、入るのが恥ずかしくていつかレポートをと思ってましたが、ついに一線を越えてコスプレカフェ潜入を敢行してきたわけです。

歓迎光臨。
緊張で顔が引きつります。
しかし、店内はなんのことはない、漫画本で囲まれたファミリーレストランといったしょぼいものでした。
冥途カフェではの望みも断たれ、普通にオーダーし退屈な時間を過ごしました。

ただ、入口のメイドさんとオーダーをとりにきたメイドさんは、及第点だったので(点数には意味ないですが)、写真を撮らせてもらいました。
中国語で撮ってもいいかと聞いたのですが、日本語でありがとう、いいです、とピースときました。
おおっ、たどたどしいけど日本語もできるのかと驚きです。
ちょっと近すぎたので、そう告げると、なぜかさらに近寄ってきました。
ああっ、日本語はまだ始めたばかりだったんですね。

日本人が忘れかけた、自信に満ち溢れた視線並びにピースでした。
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Askania Kino-Anastigmat 50mmF1.8 | trackback(0) | comment(8) | 2008/11/17 Mon

熱病再発~⑫五人

R-D1/Summicron 35mm F2
豊陽村の路地を歩き続けると門に出ました。
同時に古い家並みは途切れ、門を境に新しい住宅が広がっています。
そういうと門がどこでもドアのようになっていて、あちらとこちらで世界が一変のような誤解を与えてしまいますが、そうではなく写真の左側は旧市街、右側は新市街のような分かれ方をしています。
写真でも後背の建物を見れば、ご理解いただけるでしょう。
門と広場が、新しい建設の進出を押し止めているようにも見えます。

屋根の装飾がユニークな門はこの地域独特なものなのでしょう、卿罡村にあった4つの門は同様のデザインでした。
訪問前に本で写真を見たとき、門のデザインが顔のように見えるように漠然と思っていました。
屋根が髪で丸窓が眼、鼻が横に広い四角ですが口は驚いたようにバカーンと開いた顔。
実は別の場所にあった門には、ふたつの丸窓の上にへの字方の力強い眉がしっかり描かれていました。
門の形態を顔のようにみなした人が村人にもいるのは間違いなさそうです。
逆に門のデザインを考えるにあたって、顔のようにすることで、門番のような象徴的イメージを重ね合わせたのかもしれません。
わたしは幼少のころから、自動車を正面から見ると顔に見えると思っていましたが、車に限らず同様のことを考えていたデザイナーもあらゆる分野にいたのではないかと想像します。

さて、そんな顔に見守られて、5人の村人がぼんやりと語り合っています。
こういうときは、もう少し近づいて座るべきと思うのですが、微妙な距離を空けているところがおもしろいです。
背中が、退屈さを雄弁に表現しています。
よく見ると、退屈を嫌がってどこかに連れて行ってもらいたがっている6人目がいました。
そろそろ帰らないと深圳行きのバスに間に合わなくなるかと、撮影者である7人目ももと来た路地を戻ることにしました。
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Leitz Summicron 35mmF2 2nd | trackback(0) | comment(8) | 2008/11/16 Sun

熱病再発~⑪拐角

R-D1/Summicron 35mm F2
まだ30分見る時間はあるだろうと運転手は判断してくれたので、2番目の古鎮、豊陽に向かってもらいました。
ここも比較的規模の大きな村ですが、古い建築が残るのは一角だけなので、30分はなんとかなる時間です。
車が到着するが早いか、小走りで道を進んで行きました。

路地を歩いていると、両サイドの家が石造りの重厚な雰囲気を醸し出し、かつての石畳の足もとが雨に濡れて、リスボンの小路に立っているような錯覚を感じます。
このままでは廃墟に見えるかとカメラを構えて思案していた矢先、首尾よく住民が扉を開けて出てきました。
この旅で見かけたいちばんの美女です。

小雨ですぐ引っ込んでしまいましたが、路地の壁に椅子を置いて縫物をしている女性がいました。
きっと天気が好ければ、子供がかけまわり、井戸端会議も花盛り、たまには仕事帰りの牛が通り過ぎたりなど、すごく活気のある通りなのではないかと思いました。
このカーブを曲がると何かあるんじゃないか、そんな期待感の溢れる生活感いっぱいの古鎮は歩いて楽しいものです。
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Leitz Summicron 35mmF2 2nd | trackback(0) | comment(7) | 2008/11/15 Sat

熱病再発~⑩凱旋

R-D1/Kern Macro Switar 75mmF1.9
時間もないので次の村を目指すべく、 卿罡村の接龍門を出ます。
門前はもともとが住民のたまり場だったのか、日本人の訪問者があまりに珍しかったのか、市場のように人があふれてタクシーを取り巻いているのに驚かされました。
運転手と村人が何やら強い口調で話し合っています。
喧嘩しているようにも見えますし、気の弱い人ならなんで日本人なんか連れてくるんだと怒られているのではと心配しているかもしれません。
しかし、心配は無用。
彼らは広東語で話しているだけで、強い口調はこの言葉の特徴です。

門に向って牛がやってきました。
牛にカメラを向けるのが、中国の田舎を旅する時の習慣のようになっていますが、ここでは牛よりもこの親父さんがかっこ良かったのです。
あえてマクロスヴィターに交換して数枚撮影してもらいました。

背後の村人から何事か声をかけられます。
なんと言われたのか聞き取れませんでしたが、牛を撮影していると思ったのでしょうからたぶん日本には牛はいないのかと聞いているのでしょう。
いや、うしはうちでも飼ってますから珍しくないです、それよりもあのおじさんが映画俳優のようにかっこうよかったので撮ったんです、この村ではたくさん好い写真が撮れましたが、最後にすばらしい1枚が撮れて満足です、と答えました。
一瞬、間があってから、村人たちがどっと沸きました。
そして、門前にたどり着いたくだんの親父さんは、皆からやんやと冷やかされます。

田舎を旅していてこういうことは滅多にないのですが、この村では、いい空気を作り出して去ることができました。
みんながタクシーの助手席に向って手を振ってくれたのが、この村の印象を特別なものにしてくれます。

さて、マクロスヴィターですが、この距離がこのレンズにはすごくしっくりする気がします。
前後の美しいボケの間に、被写体がぴたっと浮いているように表現されます。
シネレンズだからではないですが、映画のシーンのように見えてきました。


【お詫び】
パソコンのハードディスクが突然壊れてしまいました。
修理も考えましたが、寿命と割り切り本日新しいパソコンを購入し、更新いたしました。
そのため更新時間が乱れ、いただいていたコメントにも回答が遅くなりましたことをお詫び申し上げます。
不慣れな新機種で、トラブルが続く可能性もありますが、ご了承いただきますようよろしくお願いいたします。
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Kern Macro Switar75mmF1.9 | trackback(0) | comment(8) | 2008/11/14 Fri

熱病再発~⑨向后

R-D1/Askania Kino-Anastigmat 50mm F1.8
卿罡の村は、"中国古鎮遊⑧~広東"に掲載されています。
同書には連州地域を三つ取り上げていますが、いずれもわざわざ訪れるような人は珍しいようです。
ましてや外国人は、途中雑談をした老人はえーっ日本人と驚いて、まわりの人に、この人日本人、この人日本人と触れまわっていました。

いえ、カメラを提げている人間が闊歩しているだけで、当然の如く注目の的になります。
おじいさんと子供たちは、いつまでもいつまでも固まったまま、こちらを見続けていました。

立体感と渋い発色が好ましい Askania ですが、ピントがどうも怪しいです。
今回は、このレンズの良さが伝えられず残念です。
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Askania Kino-Anastigmat 50mmF1.8 | trackback(0) | comment(2) | 2008/11/13 Thu

熱病再発~⑨古井

R-D1/Summicron 35mm F2
千年瑶寨から連州の町に戻り、帰りのバスの切符を購入します。
最終バスの発車にはまだ3時間ありますので、タクシーで町周辺の古鎮を訪れてみます。

昨年の運転手が名刺をくれていたので、バスターミナルの売店から電話をかけてみます。
わたしの声を聞いて一瞬何かを考えたような間がありましたが、すぐに去年来た日本人だろうと気付きました。
それだけでもわざわざ電話してよかったと嬉しくなります。
いまどこにいるのかと聞かれ、バスターミナルというと、また一瞬えっとなってから、後ろを振り返れと言います。
何台か停まっているタクシーをひとつひとつ眼で追うと、手を振っている親父さんがいました。
呼び寄せる手間ははぶけ、久しぶりだなとあいさつがてら一緒に刀削麺をかきこんでから、近くの村を目指しました。

連州の中心から20キロほど。
途中、昨年訪れた地下河の前を通過して着いたのが、卿罡という村です。
難しい名前で読み方も忘れましたが、規模が比較的大きく、大半の家が建て替えられてしまっていて、古鎮としては趣が弱いのが残念です。

しかし、おもしろいことに村は北斗七星の形をしていて、4つのはじはすべて門になっていてそれぞれに名前がついています。
そして、その中心がこの龍泉井です。
起源は600年前に遡って今に至るまで、村に良質の水を提供してきました。
少なくとも、この一角だけは、建物も人もずっと前の雰囲気を宿していました。
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Leitz Summicron 35mmF2 2nd | trackback(0) | comment(2) | 2008/11/12 Wed

熱病再発~⑧下山

R-D1/Summicron 35mm F2
ほどなく驟雨はあがり、霧も徐々に切れてきました。
チャンスだと思い、村の坂をずんずんと降りて行って広場を横切り、さらに進んでいくと、今度は少し上り坂になって小高い丘に辿り着きます。
ものの10分もかかりません。
ぱっと振り返ると、千年瑶寨の全景が、また後を向き直ると山々の連なる奇景が、左下を見ると谷底に箱庭のような村がそれぞれに見渡せ、遮るものの無い360度パノラマが広がります。
絶景を独り占めの贅沢を味わいました。
刈り入れが終わっていたので気付きませんでしたが、村の周りはぐるっと棚田が取り囲んでいました。
新緑や麦秋の頃ならもっと美しかったことでしょう。

千年瑶寨は、向いの山に無理して登れば別ですが、他の村や道からはどこからも見えない位置にあるようです。
それで思い出されるのが、ペルーのマチュピチュです。
ここも天空の遺跡と呼ばれて、山を登りきることによって初めて全景を見ることができ、眼前にそれが現れた瞬間の感動は例えがたいものです。
しかし、繁栄のよすがこそ感じられるもののマチュピチュは今や観光客とアルパカが往来するだけの廃墟。
千年瑶寨は、今も昔ながらに近い生活の残る生きた村です。
わたしは、千年瑶寨により大きな魅力を感じます。
今回の短い滞在で、その認識を大きく持つことができました。


さて、お世話になった瑶王の家を辞する時が来ました。
次に来るときは、ここに電話してくれれば迎えに行きます、もう入場料を払う必要はありません。
お母さんは、また来て欲しいというよりは、きっと来てくれるだろうという確信があるかのような言い方で別れを告げました。
わたしは、食事のお礼として300元渡しました。
こんなに受け取れないと固辞されましたが、それなら娘さんの教育費にあててもらいたいと再び、手渡すと、今度は礼とともに受け取ってくれました。
こんなケースでは不似合いな高額かもしれませんが、政府から150元支給されると言っていたので、それならわたしは倍くらい出さなくてはと思っていました。
邦貨にして約5000円は、ビジネスホテルに1泊したよりも安いものです。
無理したわけでもありません。

お母さんは旦那さんを呼び、彼のバイクで下の村まで送ってもらうことになりました。
この旦那さんは昨夜食事時には帰らず、遅くなって帰っていっしょに米酒を飲んだりしましたが、結局何をやっているか分からない不思議な親父さんでした。
バイクは滅多に乗らないせいかエンジンがなかなかかからず、かかってもすぐに止まってしまい、結局下り坂なのでニュートラルでずっと村まで走ってもらいました。
もしかしたら、ガソリンが無かったのにそう言えなくて、調子が悪いフリをして照れ隠ししていたのかもしれません。
ほんとに故障なら、どうやって戻るのか逆に心配になります。

村に着くと軽ワンボックスのような車が停まっています。
あれが乗り合いタクシーで、連南の町まで10元で行くからと説明して、運転手にもよろしく頼むというように説明して見送ってくれました。
10元だからな、10元としつこく説明するのは、わたしが来るときに100元もタクシーに払っていたのを心配してのことでしょう。
よそ者だからボルなよと運転手に牽制してのことかもしれません。
やはり親切ですが、わたしがよほど頼りなげに見えたのは事実です。
恐らく8人乗りのワンボックスにはすでに11人が座っていて、えーこれに乗らなくてはいけないのかと泣きそうな顔をしていましたので。

途中さらにふたりを拾って合計14人がすし詰めになった乗り合いタクシーは、轟音とともに村を後にしました。
見覚えのある高速道路を疾走します。
そして、やはり予想したとおり料金所が見えたと思ったら、道路の切れ目からわき道に入っていったのでした。
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Leitz Summicron 35mmF2 2nd | trackback(0) | comment(12) | 2008/11/11 Tue

熱病再発~⑦亮妹

R-D1/Kern Macro Switar 75mmF1.9
休ませていただいた床は快適なもので、10時に就寝して6時にはもう起き出します。
残念ながら、天気は悪化して小雨がそぼ降り、またあの嫌な霧が漂っています。
今日は日曜で学校は休みのはずですが、ずいぶんと朝早くから勉強している少女がいました。
昨日、いろいろと村のことを教えてくれた子でした。
瑶族も瑶語という独自の言葉があって、こんにちはが「ムイヨン」、さよならが「モンモン」、そう教えてくれたのが彼女でした(ここでも、ありがとうという言葉は無いそうです)。

少し大人びて見えるかも知れませんが、彼女は数え年の12歳。
まだ小学生です。
昨日もそうでしたが、この朝も玄関の足元の20センチくらいの段差を机にして、風呂場で使うような低い椅子を持ち出して国語の勉強をしていました。
部屋が暗いので、明るい場所で勉強する工夫でしょう。

親の世代は中国語をなんとか話すようですが、おじいさん、おばあさんは無理なようで、家庭での会話はすべて瑶語です。
家にテレビはありませんし、新聞もないです。
彼女が国語である中国語を習得するには、けっして楽な環境ではありません。
ましてや漢字は。
一生懸命にノートに文章を書いていました。
文字は、彼女の真面目さを表すように、真っ直ぐできれいなものです。

家は山の上にあって、下の大きな村にある小学校へは1~2時間かかるということです。
恐らく下り坂になる登校は1時間だが、きつい登りの下校は2時間ということでしょう。
登校と下校の文字は、ここでは逆に使うべきですね。

学習風景を遠くで見守っていたつもりでしたが、ほどなく見つかってしまい、声をかけられました。
村に泊まると話していたので、よく眠れたか心配してくれます。
優しい気遣いです。

彼女は学校で英語も勉強していると言っていました。
何か英語で話してと聞かれて、気の利いた言葉が思いつかず何故か I am from Japan. と言ってしまいました。
「我是…」。
わたしはの後が分からないと困った顔をします。
Japan なんて単語はまだまだ習っていないようです。
この村は、香港から比較的近いので、道路が整備されれば外国人も多く訪れるようになるから、英語をしゃべれるようになって、彼らを案内してあげて欲しいと、これは中国語で説明しました。

わたしが首からさげたヘンテコなカメラにも興味があるようでしたので、こう説明しました。
カメラは新しいものですが、使っているレンズは半世紀も前の古いものです。
優れたものはどれだけ時間が経っても良さを失うことはないので、大切に使い続けています。
あなたの村も同じ。
優れた村だからこそ何年経っても変わらない暮らしが続いているのです。
自分たちの生活にプライドを持って、村を守って欲しい。

日本でだったらこんなことを小学生に向っては絶対に言えません。
真面目な彼女はうなづきながら理解してくれ、帰り際にレンズの前で笑顔を見せてくれました。


そのレンズの種明かしをしなくてはいけません。
このマクロ・スヴィター 75mmF1.9 は、もちろんアルパ用ではないですし、ましてやオリジナルライカマウントなどではない、マウント改造モノです。
オリジナルは、Bolex というスイス製16mmムービーカメラ用のレンズです。
宮崎さんにライカ距離計連動に改造していただいています。

レンズ自体は、性能と比較するとかなり安く入手できますが、このレンズは中望遠ながら後玉が目いっぱい後にあって、宮崎さんの改造もかなりの苦労を強いられたといいます。
構成は、ダブル・トリプレットと呼ばれる6群6枚。
評価は最高クラスで、「開放から球面収差は無収差に近い。フレア無く、コントラスト良く、解像力も最高。75mmF2 クラスではナンバーワン性能」と絶賛しています。

ちなみにケルン社のあるスイス・アーラウは、4語が母国語になっているスイスにあってドイツ語圏に属します。
一般に Switar は、スウィターやスイターと表記されることが多いようですが、現語主義の採用で、以降わたしはスヴィターと表記することにします。
Summicron をズミクロンと表記する日本ですから、このほうが理にかなっていると思いますがいかがでしょうか(韓国では"スミクロン"と呼ばれています)。
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Kern Macro Switar75mmF1.9 | trackback(0) | comment(6) | 2008/11/10 Mon

熱病再発~⑥餐庁

R-D1/Askania Kino-Anastigmat 50mm F1.8
夕餉の時間です。
土間の中央が囲炉裏のようになっていて、まずは火を起こします。
ふいごを吹いて火を大きくし、その上に鍋をセットして水を張ります。
ここまでは娘の役目。
奥で野菜を切っていた母親が食器を持ち出し、鍋のお湯でよく洗います。
客人のわたしは雑談はしますが、することもなく、失礼とは思いながら一枚シャッターを切らしてもらいます。

野菜がいっぱい放り込まれました。
小さな豆も。
これらは名前を聞きましたが、どうにも覚えられません。
そしてペットボトルの油をこれでもかと流し込みます。
数分経ってから頃合をみて器に移し、となりのダイニング(?)部屋に移って、3人でテーブルを囲みます。
御釜で炊いた新米を茶碗によそって、おもむろに食事がはじまります。

野菜料理と白米だけ。
非常にシンプルな夕食です。
ですが、油が少々きついものの味はけっこういけました。
母親がどうかと聞いてきます。
わたしは正直に、日本より油が多いのが気になるが、美味しいと思うと答えました。
外国人に食事を出すなんて初めてだったでしょう、ホッとしたようです。
ようやく緊張が解けたからか、彼女は少しずつ語り始めました。

ほとんど毎日食事はこれだけだそうです。
肉は3ヶ月食べていないと言います。
鶏はいますが、現金収入が無く、どうしても自分たちで消費するわけにはいきません。
入場料収入がけっこうあるのだろうから、みんなに分配していないのかと聞くと、わたしたちには廻ってこないとのこと。
恐らく"幹部"が潤う仕組みがあるのでしょう。
"少数民族優遇政策"をかかげる中国ですから、補助があるのでは。
あることはある、だが、たったの150元だけ、これでは食事の足しにもならない…。
そればかりか子供が小学校に通うのに1年に500元必要だといいます。
そこには暮らしていくだけで精一杯の現実がありました。

彼らは、瑶王と言われたこの地方の大人物の末裔です。
壁には毛沢東が当地を訪れ団結を呼びかけた際に謁見した時の写真が掲げられ、その旨の説明書きもあります。
その家にしてこの状況。
それどころか、見学にやってくる観光客に手製の米酒を振舞っていくばくかの小銭を貴重な現金収入にして、それでもひとり娘を学校にやるのがすべてという現実があります。

一続きになったふたつの部屋を同時に照らす裸電球があるだけの暗い部屋で、わたしの箸の動きはどんどんと鈍くなっていきました。
鼓の演奏を聞かせてくれた老人の他、卵を勧める老婆、野菜を売る乳飲み子を抱えた婦人…。
それぞれに生活があったわけですが、そんな人たちの姿が次々に思い出されてきました。
この家には電球が灯っていたので、電気こそ通じていたはずです。
ただ、テレビはありませんし、ガスなんてもちろんないし、水は泉から引かれたものを桶に溜めて使っています。
冬はときどき積雪があるといいますが、暖房はありません。
服を着こんで寒さに耐えるしかないのです。

先月滞在した貴州の村では、もっとずっと豊かな生活をしているように見えました。
観光客が来るようなところではなかったですが、少なくとも食事で困ることはなさそうでしたし、子供たちですら携帯電話を持ち、オリンピックではバスケットのヤオミンを応援していたと言っていました。
彼我の差はなんなのでしょう。
訊ねようと思ってやめました。
そんなことを聞いても答えはでないでしょうし、比較してどうこうという発想が彼らに失礼です。

ご飯が美味しかったのでおかわりしましたが、母親はなんと3杯食べていました。
畑仕事をするのでどうしてもお腹が空くのだと笑って照れ隠ししています。
ひとしきり日本のことを話したりしてから、共同浴場のようなところで入浴させてもらいました。
この位の寒さならみな水を浴びるそうですが、わたしにはコイルの熱線で暖めたお湯が用意されていました。
心遣いに感謝します。

それから部屋を貸してくれる親戚の家まで行くと、その家ではちょうど食事中で、やはりいっしょに食べましょうと勧められます。
食事は済ませてお腹いっぱいですが、少しだけいただいていいですか、そういってわたしと母親は茶碗を手にします。
母親にとってなにより嬉しかっただろうことに、食事には肉がありました。
ただし、これは狗肉。
美味しいことは間違いなく美味しいですが、お腹が膨れている上に、足許で犬がじゃれついた中ではその犬の目を直視できません。
彼女は肉に、わたしは米酒に舌鼓を打つことになりました。
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Askania Kino-Anastigmat 50mmF1.8 | trackback(0) | comment(12) | 2008/11/09 Sun

熱病再発~⑤180

R-D1/Askania Kino-Anastigmat 50mm F1.8
秋天的太陽落得快。
秋の日はつるべ落としを中国語で書くとこうなります。
実際によく使われる言葉なのか分かりませんが、日の落ちるスピードは日本も中国も変わらないと実感します。
瑶王の家に戻ったときは、ほとんど真っ暗になっていました。

桂林という地名はご存知の方も多いと思います。
小高い山が幾層にも連なる奇観で、中国山水画そのままの世界です。
ここ連州周辺も、同様の風景が広がっています。
地図を見ると、深圳から桂林への陸路は、広州から連州を通っての一本道です。
しかも連州まで来ると、深圳に戻るより桂林へ行った方が近くなります。
連州から桂林まで、ずっとこんな景観が続いているのかもしれません。

千年瑶寨は、石造りの家が立ち並んでいます。
この石は、恐らく周囲の景観を形成している地形と関係がありそうです。
村までの道中にも、多くの石が露出しているところを見ましたが、色や質感を見る限りそれらの石がそのまま家の外壁に使われているように思ったからです。
ヨーロッパの家屋の屋根に使われているスレートにも似た、軽量且つ強度のある石に見えました。
先月訪れた貴州の家はほとんど木でできていました。
中国に限ったことではないですが、民家のつくりを見れば、その風土が見えてくるといえるのではないでしょうか。

瑶王の家の前はテラスのようになっています。
山の中腹ですから、目の前を遮るものの無いパノラマが広がっています(ただし180度なので ksmt さんには物足りないでしょうか)。
50mmレンズでは、左右の山は収まりきらず、目の前の山も切れてしまいました。
なんと雄大な景色。
こんな環境で暮らす村の子供たちは、心の広い人に育っていくに違いありません。
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Askania Kino-Anastigmat 50mmF1.8 | trackback(0) | comment(8) | 2008/11/08 Sat

熱病再発~④要銭

R-D1/Askania Kino-Anastigmat 50mm F1.8
日没ぎりぎりまで散策してこよう。
カメラを握り締めて、瑶王の家を飛び出します。
高度があるため空気はたいへんひんやりしていますから、がんがん歩き回っても苦になりません。
汗が心地いい、そう感じられます。
気温30度の大都会深圳から来ると、ここの空気は新鮮で美味しいのです。

だいぶ陽も落ちかけていますが、今回は雨や霧がなく、眺望も楽しむことができます。
惜しむらくは、この日も曇ってしまっていたため、夕日を見ることはできませんでした。
村は西に面しているそうで、向いの山々に消えていく夕日の景色はもちろん、西日があたってオレンジに染まる家の壁もさぞかし美しいだろうと容易に想像することができます。
やはり、秋から冬にかけては曇りがちで、7、8月が最高だと言うことです。
避暑と夕日ですね。
よし、次にまた来る理由ができたぞ、とそんな気持ちになりました。

気分好く歩いていると向こうから老人がやってきました。
一瞬、狩の道具かと思われた長い器具は、よく見れば鼓で、音楽を奏でるための伝統的な衣装を身に纏っているようです。
目が合うと思いっきり相好を崩して、話しかけてきました。
カメラを指差し写真を撮れと言っているようです。
言葉はよく分かりません。
では、撮らしてもらおうとカメラを構えると、また何か言っています。
分からないでいると懐から1元札を取り出し、これこれとやっています。
写真を撮らせてやるから、金を寄こせということのようです。

老人は独特の舞を見せ、不思議なリズムで鼓を打ち鳴らしました。
正直、あまり好い気持ちではありませんでしたし、気乗りしなかったのですがシャッターは切りました。
1元札を見せていたので1元渡せばいいかと思いましたが、1分間も踊ってもらって15円ではかわいそう。
5元手渡したところけっこう喜んで受け取ったので、1元でもよかったのかもしれません。
写真はご覧のとおり。
気持ちが反映したのかブレてしまっていました。

ほんのひと月前に訪れた侗族の村の純朴と比べてしまうので、苦笑を禁じ得ませんでした。
しかし、その後この村の人たちと話し込むうちに、この老人を笑ったり侮蔑したりそんなことは許されないことなのだと気付かされます。
やはり、同じような外見の村であっても、事情はそれぞれにあって、一律に捉えてはいけないのです。
詳しくは次回以降で。

今回の旅は、美少女との出合いも、それを空想で劇化したストーリーも登場しません。
わたしひとりが、苦悩したり、声援を送ったりする、内向性の強い旅になりました。
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Askania Kino-Anastigmat 50mmF1.8 | trackback(0) | comment(7) | 2008/11/07 Fri

熱病再発~③回来

R-D1/Askania 50mm F1.8
悪路を進んでもらった上、途中から高速タダ走りまでしてもらったタクシーに、80元で交渉成立していたのを100元渡してしまいました。
中国のタクシー運転手にしては気の弱そうなタイプで、ふだん強気のドライバーとがんがんやり合って培った交渉術が空転してしまい、泣き落としにやられたというパターンです。
聞けば50元でじゅうぶんなところを、倍額支払ってしまったようです。
ほくほく顔でタクシーは立ち去りました。
この時点で、わたしの決意は固まることになります。
退路を絶たれたことで、千年瑶寨に泊まるしかなくなりました。

村の入口は石を積んだ門になっていて、これが外界と村を分ける象徴のようになっています。
それを見るや1年前の村の記憶が甦ってきました。
そうだ、この道を登ればいいんだ。
去年訪れたとき、少なくとも人の良さそうなふたりの女性と会っています。
インターネット上では宿泊情報が得られなかったので、宿泊施設がない場合は、ふたりのいずれかに泊めていただきたいと頼むつもりでした。
最悪、家の中ならばベッドとか布団とかなくても構いません。

懐かしい石積みの坂を登っていくとすぐ、見覚えのある家が現れました。
1950年代に瑶族をまとめて地域のリーダーとなった、瑶王と言われた人の家です。
毛沢東が謁見にやってきたという写真がかざられた家は、いま、彼の子孫が暮らしています。
当時の家具なども展示してあって、観光客が訪れるようになっていますがそれだけでは現金収入が得られないので、自家製の米酒を振舞ってチップを収入にしているようでした。
去年はその酒をいただきながら、悪天候と言うこともあって人の良さそうなお母さんと長々話し込んだり、娘さんの写真を撮ったりして過ごしたことを思い出します。

果たして、玄関のところにそのときの少女がいて、わたしが近づくやあの時の米酒を持ってきてくれました。
久し振りだね、覚えてないだろうけど、去年ここへ来てお酒をだしてもらったんだよ。
そう告げました。
覚えてますよ、雨の日だったでしょう、確かあなたは日本人。
そう答えてくれたのは、少女ではなく、家の奥から出てきたお母さんでした。
びっくりしました。
ここまで来る日本人はほとんどいないでしょうが、土日はけっこう観光客が訪れているところです。
1年半前のことなんて本当に覚えているものでしょうか。
たずねれば、通りかかる観光客は多いがゆっくり話をしていく人はあまりなく、ましてや背の高い日本人だったので、すぐ思い出したと言います。
あの時、また天気のいい時に再訪したいと言っていたが、ほんとうに来てくれたんだねえ、とも。
さらに、泊まっていくんでしょう、となりの家に部屋があるから大丈夫、食事はうちでしてってとまるでわたしの再訪を待っていたかのように、わたしが頼みたいことを知っていたかのように、応対してくれました。

だからといって特別な歓迎や、ゲストを受け入れるといった雰囲気はまったくありません。
普段着のもてなしと言うのでしょうか。
何もないけど、どうぞ自由にしていってという感じです。
これをもって家族として受け入れられたなんてうぬぼれるつもりはないですが、居心地のよさに浸ることができました。
いま、家事とかあるから散歩でもしてきたら。写真も撮りたいんでしょう。
ほんとうに気持ちを理解しているようにそう言って、送り出してくれたのでした。
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Kern Macro Switar75mmF1.9 | trackback(0) | comment(8) | 2008/11/06 Thu

熱病再発~②房子

R-D1/Askania Kino-Anastigmat 50mm F1.8
瑶族も、先月訪れた貴州省の苗族や侗族と同様、規模の大きな少数民族のようです。
一般的には、ヤオ族と表記されます。
人口は、中国全土で約260万人。
広西、湖南、広東など中国南部に集中しますが、タイ、ベトナム、ラオスなどにも広く存在するようです。
そういえば、むかしタイ北部のチェンライから山岳トレッキングをした経験があり、このときヤオ・ヴィレッジを通過したと記憶していますが、彼らは親戚だったのですね。

今回訪れた村は、千年瑶寨と呼ばれていて、文字通りこの山岳の地に1000年以上の歴史を築いていると記録があるそうです。
その名称自体は観光の臭いがちらつきますし、35元という安いとはいえない入場料も徴収されます。先月訪れた侗族の村の素朴を思えば違和感があります。
それでも、この村の美しさを体験したく、長い道のりをやって来たという訳です。

道のりといえば、村へ向うタクシーは道路工事中のため、村道から大きく迂回して高速道路を走りました。
当然有料なのですが、そこは管理の緩い中国の田舎ということで文字通りの抜け道が存在します。
料金所の手前に車一台分の柵の切れ目があって、そこを出入りすることで支払いを免れます。
地元の車はみなそうしているようでしたが、驚いたことに路線バスまでもが、同様に高速道路を無銭利用していました。
公共交通機関がそんなことする必要があるのか、なんとも不思議な光景です。

これも中国ではよく見る風景ですが、高速道路は歩行者やら自転車やら地元ではよく整備された生活道路として利用されています。
交通量が少ないからよいのでしょうが、傍若無人に道を横切る人がいたりして、よく事故が起きないものとはらはらします。
さらには、牛飼いがぞろぞろと牛を引き連れていたのには笑い呆れるしかありません。

わたし自身も高速道路を歩いたことがあります。
高速バスで車掌に行き先を告げていたので途中で降ろされたというわけですが、運転手が忘れていたためインターチェンジをずいぶんと過ぎていて30分も歩く羽目になりました。
日本の高速道路と違って路肩がほとんどないので、かなり怖い体験でした。
何よりも高速道路をとぼとぼ歩く、自分自身が恥ずかしい…。
それよりも情けない体験をした人がいるのを知っています。
タクシーで高速を走っていたときに尿意を催して、パーキングエリアはないと言われ、道路上で済ませてしまったのです。
実は、わたしの父なのですが…。

閑話休題。
村人にこの家がどのくらい古いか問うたところ、1000年と軽く返されました。
先ほど観光臭いと書きましたが、瑶族には、ごく自然に千年瑶寨という名称の由来が信じられているようでした。
恐らく建物そのものは100年も経っていないのではないかと思われますが、村の基礎は1000年前からあって祖先が住み続け、今の建物に至っているという意味の回答なのでしょう。
答えた親父さんの顔は、なぜ当たり前のことを聞くのかというように自信に満ち溢れていました。
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Askania Kino-Anastigmat 50mmF1.8 | trackback(0) | comment(8) | 2008/11/05 Wed

熱病再発~①想去

R-D1/Kern Macro Switar 75mmF1.9
燃油サーチャージの導入依頼、航空券の価格体系も少し変化が現れているようです。
従来、連休では通常期の1.5倍から2倍くらいしていたものが、調べてみると前後の週と価格が変わりません。
相対的には、少し価格が上がっているのは間違いないですが、そのかわりに3連休くらいなら価格を変えない政策に出たのでしょうか。
であれば、休暇で旅行するなら連休の方がいいに決まっています。

もうひとつ。
先月貴州を訪れて、素朴な村の生活がすっかり体に染み付いてしまったようなのです。
まだ1ヶ月しか経っていないというのに、熱病のように田舎へ行きたい、オレを田舎に連れて行ってくれと内面から叫ぶ声が現れ始めました。
声は日増しに大きくなり、抑えることが苦痛になってきます。
そこへ、未使用レンズたちまでもが、わたしたちを撮影に連れて行ってと後押しするようになります。

そんな訳で、この連休の東京ー香港線の予約を入れてしまっていたのでした。


さすがに三泊四日程度では、貴州まで行くのは厳しいものがあります。
香港から手近な広東省にいくつか候補地があがりましたが、思い出したのが、一年半前出掛けた連州にある瑶族の村です。
あいにくの雨と霧で、短時間の滞在を満喫するには至らなかったので、いつか再訪できたらとその時思いましたが、いまがまさにその時だと思えてきました。
手近と言っても、深圳からはバスで片道8時間。
実質中日の2日間しかないので、ほとんどとんぼ返りになりますが、止むを得ないでしょう。

それに淡い目算もありました。
前回は道路が工事中で、やたらと時間がかかりましたが、もう工事も終わっているでしょうから、かなり時間短縮できるのではないか。
この読みは半分あたってましたが、半分は誤算があり、結局は7時間の道のりとなってしまいました。

誤算のひとつは、バスターミナル確認ミスです。
早朝にいつもの深圳のバスターミナルに行ってみれば、そこには連州行きのバスはなく、仕方なく途中乗り継ぎになります。
もうひとつの誤算が、連州から連南まで出てタクシーで瑶族の村まで行ったのですが、その山岳路が大体的な工事中で大回りしたため、時間もタクシー代も去年の倍以上かかることになってしまったのでした。

目論みどおりにならないのがわたしの中国の旅なので、この程度のことはいっこうに構いません。
むしろ、予定通りにいかないことを楽しむことこそ、わたしにとっての旅の愉しみのひとつと考えています。
しかし、今回の一泊二日強行軍では、痛い時間のロスになりました。
7時出発で到着は4時。
6時にはほとんど、日が落ちて真っ暗になりますので、写真を撮っている時間はわずかです。

さて、土曜日とあって、観光客が時々訪れるため正装していた少女の写真からスタートします。
一部から上がっている美少女写真を掲載するように、との声にこたえているように見えますが、今後は少女の写真はほとんど出ないことを予告しておきます。
でも、この肌の質感描写はたいへんに気に入りました。
さすがマクロスイターです。
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Kern Macro Switar75mmF1.9 | trackback(0) | comment(12) | 2008/11/04 Tue

髪帯少姐們

R-D1/Summilux 35mm F1.4 1st
栃木シリーズ最終回は、またズミルックスになります。
駐車場があと5分で2時間を過ぎてしまう、急がなくてはと歩いていたところ、素敵なリボン少女に出会い、カメラを取り出しました。

ちょうど自転車が通りかかり、すこしシャッターのタイミングが早まってしまいましたが、何だか下町風情の昭和的カットが完成しました。
言わずもがなの"交差点"の朱書き説明も大きなお世話ですが、今さら祭の告知ポスターがあるのも遅すぎの感ありです。

そうでした。時間が無かったのです。
駐車場まで小走りに進み、手早く精算機まで車を寄せるとちょうど1分前でした。
この間、何度か街中のシャッターチャンスを逸したように感じましたが、おかげで、1時間分料金100円を無駄にせずにすみました。
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Leitz Summilux 35mmF1.4 1st | trackback(0) | comment(6) | 2008/11/03 Mon

滲猫子

R-D1/Summilux 35mm F1.4 1st
いかにも栃木なシーンも紹介しなくてはと思い、使うまいぞの広角レンズを取り出してしまいました。
しかし、そこは並みのレンズではダメで、C氏がまったく評価しないズミルックスというのでいかがでしょう。
この中間距離で、どこにピントがあっているのか分からない不思議描写が信者を集めるレンズです。
しっかり白い服や、塀の上の猫も期待にこたえて滲んでいます。

佐原では何故と首を傾げる船外機付き手漕ぎ舟(?)ですが、ここ栃木は王道の竹で底をかくゆったり舟です。
客がふたりだけで、ひとりぽつんと浮いているように見えるはっぴの親父さん、お決まりのよぎる柳、白壁の眩しい蔵、前述した滲み猫と役者は揃いました。
あれっ? なんだろう。
撮影時は気付きませんでしたが、あの家のアンテナでしょうか、ずいぶんと高いですね。

P.S.
I am on staying in China again. Sorry I cannot reply your comment...
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Leitz Summilux 35mmF1.4 1st | trackback(0) | comment(2) | 2008/11/02 Sun

現場監督

R-D1/Hugo Meyer Trioplan 10.5cmF2.8
家でも建てているのでしょうか。
いえ、翌月にお祭を控えているので、山車を直しているようです。
栃木の祭はたいへん伝統があるので、山車が重要文化財だったりして、これだけの大掛かりな補修作業も当然なのでしょう。
通りがかりに、よい風景に出会えました。

レンズのことを紹介しなくてはなりません。
Hugo Meyer Trioplan 10.5cmF2.8 と表記しましたが、焦点距離は41/4"となっています。
検索して探してみると、10.5cm のTrioplan は F4.5 が、F2.8 の Trioplan は 100mm がありますが、10.5cmF2.8 は見つけられませんでした。
ある程度は希少なレンズと言えそうです。
フードと先端部はブラックペイントで、絞りリングまではニッケルですが、鏡胴のメイン部分はクロームメッキされているように見えます。
最初からこんなデザインだったのか、部分的に再メッキされたのか判断つきません。
ノンコートのトリプレット、Treizieme Ordre さんが冗談ぽく指摘されましたが、このレンズはバルサム切れはしません(ksmt さんも同様の話しを聞かせてくれたことがありました)。
最短撮影距離が3フィートと言うのがちょっと物足りないです。

肝心の写りですが、わたしには典型的なトリプレットのそれと感じます。
立体感の表出はなかなかで、自然なシャープネスが目にやさしいです。
しかし、ボケはあまり好みではありません。
ざわつくというところまではいかないのですが、こういう絵でも少しうるさく感じないでしょうか。
フードの効果か逆光でもひどく荒れることはなかったのですが、やはり光の状況でフレアっぽい画面を連発させてしまいます。

次回はポートレートに試してみたいと思いますが、それよりも、少しは慣れてきた望遠スナップ ksmt さん風をもっと身に付くようにしなくてはいけません。
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Meyer Trioplan 10.5cmF2.8 | trackback(0) | comment(4) | 2008/11/01 Sat
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