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哲学狗

Summicron 5cmF2
知っているようで知らない中国を訪れると、ちょっと驚いてしまったということはしばしばあります。
しかし、かなり驚くというのは珍しいですし、ダブルの驚きというのはまずあることではありません。
沙渓でのちょっとした驚きは、山羊の群れではなく、たった1匹の山羊をひもにつないで酪農家(?)が散策させていたということがありました。
その山羊を見た端から戻ると今度は、村の中心でとんでもなく不細工な犬に出会いました。
この犬の顔つきこそわたしにとっての大きな驚きでした。

基本的にベージュ系の色をした犬なのに、なぜか目から口にかけて真っ黒で、必要以上に長い頬が両サイドにだらんと下がって食事にも影響しないか心配になるほどです。
いっけん強面風で、吠え掛かられるかと思ったのですが、近寄ってもぴくりとも動かず、表情も変化を見せません。
その表情は達観したかのような凛とした涼やかさで恰好いいと言えますが、不細工さとのギャップを強調しているようでもあって、判断はとても微妙です。
あえて名づけるとすれば、彼は、賢者の犬とすれば、見た人の何%かは、ああ、なるほどと納得してくれるでしょうか。

さて、帰国してすぐにフィルムは現像とDVDへの焼き付けまで依頼していたのですが、高いプリントまではいつものように頼みませんでした。
PCは少し前に壊れてしまい、無理してウルトラブックに買い換えたのですが、小型軽量ノートのウルトラブックにはDVDドライバーが付いていないことを忘れていました。
10日近くかかってやっとフィルムは仕上がりましたが、自宅に戻ってPCで再生しようとして初めて、DVDの受け皿がないことに気付きました。

DVDプレイヤーは2万円くらいするというイメージがあって、外付けDVDが数千円からあるなんて知りませんでした。
中古を買うか誰かのおさがりを待つか、どうせ見るのはとりあえずは雲南旅行の写真だけだしとしばらく放っておいたら、すっかりこのことは忘れて1か月以上経過してしまいました。
そしてある日量販店でこんなにも安かったのかと感心しつつ購入して、懐かしい重いで例のDVDを見ることに…。

そこで1~2枚目からORTHO25とズミクロン開放の相性の良さを発見するわけですが、何より驚いたのが件の犬の写真でした。
ずっとほぼ曇天でISO25フイルムでしたので何も考えることなくすべて開放で撮ったはずですが、これは何かのはずみでF5,6くらいに絞り環が動いてしまったのでしょうか。
いや、やはり開放かも知れません。
すごいリアリティというより、何か精密絵画のような描写に見えます。
背景は硬質な木のはずですが、まるで犬の体のような柔らかそうな物体に変質しているかのようです。
犬だって、哲学者のような老人顔はそのままに、体半分は若い犬のようにぴちぴち(?)して見えるのが不思議です。

人物が入った写真のみ掲載という基本的なレギュレーションを破ってまで、作例にあげた今回の不思議な犬ですが、今はこう解釈するしかないかと思っています。
トリウムレンズとORTHOフィルムによる変容だと。
ORTHOは、Iさんによれば「可視光赤色に対する感度は低く、逆に可視光を越えた短波長側にも感度がある」とされていて、これを「赤いものに対しては反応鈍く、紫外線までも捉えることがある」とすれば、UVaフィルターによって大分がカットされた紫外線の残りがトリウムに増幅された画として抽出されたため、見た目とはまったく違うような表現になったということです。

いや、そんな出鱈目を書いてしまい申し訳ありません。
とにかくまずは、この作例をIさんに見てもらって、いっしょに笑ってもらうのが先かなあと思いなおしました。
【M6/Summicron 5cmF2 F2】
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thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Leitz Summicron 50mmF2 Collap. | trackback(0) | comment(4) | 2013/08/18 Sun

現代的馬之旅

Summicron 5cmF2
前にも書いたと思うのですが、沙渓ではじつに多くの人と出会い、年齢差、国籍の違いを超えてそういう人たちと話をしたのが懐かしくも楽しく感じられました。
語学が得意でないわたしは現地の人とちょこちょこ話すのは大好きですが、そこで知り合った旅人と交流するというのは苦手です。
懐かしさを感じたのは、旅人同士で語らうなんて大学の卒業旅行でヨーロッパに行った時のことを若干思い出したからでした。
青春が少しだけよみがえったというところでしょう、

沙渓で出会った人の多くは広東から来た旅人でしたが、四川、湖北、河南、上海などの人もいて、全国からこの地を訪れる人がいることが分かりました。
彼らに共通しているのが、あまりに人が多くて賑やかすぎる世界遺産麗江は嫌いだという意見でした。
中国人はとにかくにぎやかなところが好きだと思っていたので、そうではない人もけつこういるんだなあと感心し、それだけで話が合うような気さえしました。
考えてみれば、ふだん、人が多くて賑やかなところで生活している彼らが、静かな環境を求めて旅するのは当然でした。
彼らこそ旅人であり、麗江で大騒ぎしているのはグループツーリスト、ということでしょう。

この日沙渓にいた外国人ということでは、バリエーションはなかなかのものでした。
まずわたしが日本人ですし、同宿にマレーシアの華人がいました。
カメラ好きのチェコ人がいて、村中でいちばん目立っていたイギリス人カップルは以前の作例に使わせてもらっています。
軽く会話してSee you later!と言ったのに、その後見かけなかった青年はオランダ人でした。
そして、中でもいちばんインパクトがあったのが、今日の作例のフィンランド人です。
確か名前はピーターだったような…、違っていたらごめんなさい。

では、ピーター(仮)としておきましょう、そのピーター(仮)は、21世紀になった今でも存在したのかというほど、ツボにはまったようなヒッピースタイルでした。
長髪に無精ひげ、首から耳から手指からとあちこちにアクセサリーで、もし、これが日本で会ったとしても避けこそすれど話しかけるなんて考えられないようなヤバそうな外観です。
このときは、わたしの隣の宿に泊まっていたようで、たまたま宿を出たところで見かけて互いに声を掛け合ったという感じでした。

ちょっと話してすぐに分かったのですが、彼は外見ほどヤバそうな人間ではなく受け答えに年上相手の敬意がはっきり現れるかなり真面目な青年のようでした。
驚いたのは彼の目で、薄いグリーンという人間の目にこんな色があってよいのだろうかと思わせるほどの美しい色をしていたことでした。
ぜひ、ポートレイトを撮らせてくれと申し出たものの、これはやんわり断られてしまいました。
中国に来てから、いつもいつも無遠慮に撮影されてイライラさせられていたので、いつからか写真をはっきり断るのをポリシーにしたとのことです。
そういうわけで、今日の作例は、彼の大切なポリシーに背く隠し撮りです。
許せ、ピーター(仮)。

彼が、なぜバイクにまたがっているかと言えば、昆明(だったと記憶しています)で中古バイクを購入し、かつての茶馬古道をなぞらえるようにバイクでチベットを目指す旅の途上だったからでした。
本当かどうか俄かには信じがたいですが、中国で外国人がバイクに乗るには免許が不要だそうです。
途中、警察官に止められたときはパスポートしか見られなかったと言っていました。
もちろん彼は国際免許も持っていませんでしたし、中国は国際免許の加盟国の条約に批准していないので持っていようがいまいが関係ありません。

沙渓からは、麗江、香格里拉と通って半日もバイクを走らせればチベットに入ります。
しかし、チベットには中国政府が発行する入境証が必要ですが、彼は持っていません。
あなたのように中国人と外観が似ていればそのままパスできると思うのですが、西洋人のわたしがチベットに入るのは難しいでしょうね、と言いつつも何か秘策でもあるのか、拉薩まではいくつもりだと張り切っているのが印象に残りました。

あれからもうすでに、2か月が経過しています。
茶馬古道を馬ならぬ鉄馬で進む彼の旅はどうなったのでしょう。
無事、拉薩に着いたことを願ってやみません。
【M6/Summicron 5cmF2 F2】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Leitz Summicron 50mmF2 Collap. | trackback(0) | comment(0) | 2013/08/17 Sat

最慢胶圈

Summicron 5cmF2
フィルムで撮影する以上は、使用するフィルムに何を使うかは重要なファクターです。
デジタルに移行する前は、使い勝手こそ重要でトライXがほとんどでした。
ISO400では日中の開放撮影はできませんが、ISO100より2段余裕があるというのは、特に旅の時などには大きなアドバンテージです。
しかし、デジタルと併用ということになれば、暗い場面ではデジタルに譲って、積極的に開放で撮れるフイルムが使いたくなります。

そこでできる限り使うようになるのが、ORTHO25という低感度フィルムです。
これなら、ピーカンでもF1.5クラスのレンズで1/1000でもほぼオーバーにならずに撮影できます。
もとろんISO感度のみを基準に選択したわけではなく、それにもまして粒子性の高さこそがポイントです。
恵比寿にある専門店のIさんは、フィルムに多大なこだわりをもつことで有名ですが、ORTHO25は「屈指の微粒子でおどろくほど尖鋭、繊細な画像が得られます」と評価されています。
もちろん、Iさんのお店にお邪魔して購入したものが今回使用したフイルムです。

レンズの開放描写にフイルムでも拘ろうと考えたとき、最初の選択はT-MAX100でした。
F2ならじゅうぶんいけますし、F1.5も工夫して開放で撮りまくります。
T-MAXはかなり滑らかに表現してくれるようで十分に満足でしたが、Iさんが勧めてくれたORTHOはより繊細で諧調がよく表現されます。
少し高くなりますが、使う機会が多くないフィルム撮影ですので、Iさんと価値観を共有できるとの思いもあってORTHOを常用したいと思います。

ところが、このORTHO25は入手が簡単ではありません。
この時代なのでフィルム自体の製造量が少ないのか、愛好家が買い占めて市うからなのか、入荷してもすぐに売り切れてしまっています。
もとよりそれほど本数を撮るわけではないので、2~3本でいいのでバックオーダーを入れて、いざ使いたいときに入手できないという事態を避けなければいけません。

Iさんの店のウェブサイトはほとんど毎日チェックしていますが、すごしなあと感心するのがORTHO以外の中判用やシートフィルムも含めたモノクロフィルムの数々をはじめ引伸ばし機や引伸ばし用レンズがとてもよく売れています。
特にライツのフォコマートやヴァロイは入荷するやいなや売れている現状がよく分かります。
団塊の世代とかノスタルジーを感じて買う人が多いのかな、と思ってIさんに質問したことがありますが、ほとんどが若い人が購入するということでした。
とくにデジタル世代の若者はフィルムの存在を知って、撮影からフリントまでいかにクリエイティヴな楽しみがあるかを知って競うように引伸ばし機を手に入れるのだそうです。
Iさんの店を起点に、フィルムを知らなかった世代が新たなムーヴメントを起こしているのかも知れません。
すばらしいことですね。

わたしだって御多分にもれず、ライカを入手してしばらくしてから自分でプリントできないかと、何度か引伸ばし機の購入を検討したことがありました。
しかし、サラリーマンにとっては平日の暗室作業は考えられず、土日にプリントするとなれば、いったいいつ撮影に行くのかという壁を壊すことができず、ついにその世界に足を踏み入れることができませんでした。
お試し程度でもかじっておけば、今後、機会が来た時に再開などと称してのめりこんでいたかも知れず、1歩を踏み出せなかったことを少し後悔しています。
そんなこじつけで、今日の作例は村の門を1歩踏み出した農家のお母さんでまとめてみました。
【M6/Summicron 5cmF2 F2】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Leitz Summicron 50mmF2 Collap. | trackback(0) | comment(0) | 2013/08/16 Fri

1.5倍的問題

Summicron 5cmF2
デジタルで撮影しているとその便利さコスト安を強く実感します。
170年前のダゲレオタイプの時代はもとより、ライカM3やニコンFの頃でも、カメラはたいへん高価でフィルムや現像、プリントのコストも並のサラリーマンにはとても厳しい出費です。
写真を撮るためには、高価なカメラやレンズを買うだけでは足りず、毎週末撮影にでかけるとすれば月2万3万の固定費が必要になることを意味します。

デジタルに転向して一切のランニングコストがかからなくなったことで、その分をレンズ購入に振り分けられて万事幸せ、自分の居場所も見つかりました。
では、フィルム用の機材はすべて処分してしまったかと言えば、そんなことはなく、実際には今回のようにときどきフィルムでの撮影も行っています。
暗室ワークをしないわたしにも、フィルム撮影にはノスタルジーだけではない魅力が感じられようです。

魅力ということを書き連ねていくと、ライカの捜査官とかフイルムの再現性の高さとか、毎度同じような話になってしまいます。
正しいと思っていることを繰り返し書くことは間違いではないのでそうすべきですが、今回は特に感じられたもうひとつのことがありました。
35mmフイルムのフルサイズで撮っているという感覚です。
M8からX-E1を主力にして半年以上経って、50mmレンズの画角がだいぶ狭まっていたのですが、M6を久しぶりに使って50mmのブライトフレームを見ると、こんなに広かったのかとあらためて驚かされました。

また、M6では同時に75mmのフレームも表示されていますが、まさにこの75mmこそX-E1で撮っている50mmレンズの撮影範囲に他なりません。
この2つのフレームを見比べながら、X-E1を使うことはこの間のスペースを切り捨てている、あるいは自動でトリミングしていることなのだと気付かされました。
そう気付いて以降は、75mmフレームの外側から50mmフレームの内側の部分を捨てて撮影してきたんだ、オレを使う以上はそうはさせないと、M6に言われているような感覚をずっともつことになったのです。

フィルムで撮るということは、もともと35mmフィルム用に設計されたレンズのいちばん特徴の出てくる周辺部を活かすということですし、わたしの所有するデジタルカメラで撮るということはそれを捨て去るのだということを再認識したということです。
そこでまたしても、ライカMが欲しいという話になり、それは、予算的に叶わぬので中古のM9を手に入れたいという願望へと変化していきました。

前にも書いたと記憶していますが、ここ沙渓ではローライを持った青年がいて、その仲間たちにこれがライカかと取り囲まれてもてはやされたのです。
触らせてあげると彼らはその重さに驚き、50年以上前のカメラだと思っていたのに、これはM6といって2000年代に製造されたものだと言うと、こんなカメラが最近造られたとは信じられないという顔をしました。
考えてみれば、彼らは二十台の前半ですからすでにフィルムがどういうものか見たこともない世代です。
かなり真剣にライカのことを見つめていたので、撮影結果まで見てもらうことができれば、さらに認識を変えてもらうこともできたのかも知れません。
【M6/Summicron 5cmF2 F2】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Leitz Summicron 50mmF2 Collap. | trackback(0) | comment(2) | 2013/08/15 Thu

羊還是山羊

Summicron 5cmF2
ペッツバールレンズをデジタル撮影することに悦びを感じてるのは、周辺を見渡してみてもksmtさんとわたしくらいのものです。
メインレンズとしてペッツバールを常用しているなんて、世界中でもわれわれふたりだけかも知れません。
もちろん、当時の器材を用いて現在のフィルムで撮影する本格派は少なくないでしょうし、ペッツバールレンズは骨董品でもあるので木製カメラと合わせてコレクションしている人はもっと多くいるでしょう。
検索してみると、ペッツバールをデジタル一眼レフに付けて撮ってみました的な作例をけっこう見ることはできます。
しかし、どうもそれらは1回限りのお試しで終わっているようで、ペッツバールに開眼、レンズの原点を発見などと考えるまでには至らないようです。

ペッツバールレンズに対する一般的な興味は、写真がてせきたころに使われていたレンズという歴史的な意味しか認めてもらっていないのが現状です。
そえ思っていたところ、ペッツバールを評価する大きな動きがあることを知りました。
ロモグラフィーによるペッツバール製造プロジェクトです。
現代のレンズにはない写りが魅力的なペッツバールを真鍮を使うなど当時のままに再現するというプロジェクトで、キヤノンeos等用に85mmf2.2というスペックで開発中ただとあります。

販売価格は499ドルを予定しているが、パトロン制度をとっていて先行して3万円以上を支援すれば、レンズができ次第送られてくるというユニークなプロジェクトが展開されています。
今日現在、すでに800万円以上の支援が集まっていました。
3万円で新品ペッツバールが入手できるすばらしい企画、黙って見逃す手はありません。
わたしも早速、支援に加わらせていただかないと…。

慌ててはいけません。
あらためてこのプロジェクトの説明を読んでみることにしたのですが、とても引っかかるところが多く、気持ちはスゥーッと引いてしまいました。
そもそもが○○商法的に出資者を募るというのを信用していいのか。
また、85mmF2.2というのは無理し過ぎというのが作例からありありで、像面湾曲の影響はかなり広い面積に出ています。
この企画を支持する人は多いようなので、これ以上悪口を言うのは止めますが、このレンズはわたしが求めるペッツバールではないと結論して支援は断念することにしました。

ひとつつけ加えると、ペッツバールの魅力は19世紀のシンプルな設計ながらかなりシャープでコントラストも十分あり、フォーマット次第では画面全体に均質で歪曲も見られないなど、現代のレンズに引けを取らない、時としてそれを凌ぐ美点をもっていることにあると思っています。
しかし、ロモグラフィの企画では、中心だけがシャープで周辺が渦巻くようになると、本来レンズの欠点である部分をウリにしているのがわたしには相容れません。
だからこそロモがやるんだなと理解できるのであって、このレンズが欲しくなるか否かの分かれ目はこのあたりにあるということでしょう。
購入した人がすぐに飽きたのしないのを、ただただ祈るばかりです。

さて、今日の作例は、見ての通りの山羊と会話する農夫です。
男性の後ろには彼の奥さんもいて、驚くことに山羊一匹をふたりで散歩させて戻ってきたというのでした。
搾乳するとのことでしたが、中国では夏バテ防止に山羊の鍋を食べる習慣があると聞きます。
山羊肉は臭いと言いますし、かわいらしくもあるのであんまり鍋の具材にはしてほしくありません。
リーダーでつながれていたので、橋を渡って来た時は犬だとばかりおもっていました。
【M6/Summicron 5cmF2 F2】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Leitz Summicron 50mmF2 Collap. | trackback(0) | comment(0) | 2013/08/14 Wed

黒白的顔色

Summicron 5cmF2
今週の7枚の作例はすべてM6とズミクロン5cmF2の組み合わせです。
ズミクロンにはいくつかのバリエーションがありますが、今回のレンズはスクリューマウントの沈胴式で製造番号は1042XXX、1952年の製造はこのレンズとしては初期にあたるようです。
エルマー5cmF3.5がLライカの代名詞的レンズなのに対して、ズミクロンはMライカの象徴と言えます。
しかし、エルマーが嫌いという話はあまり聞かないのに、ズミクロンは嫌いだという意見を聞くことがあります。

そのことについては今日は書くことはしませんが、今回のレンズは違う意味で嫌われ者レンズなのでした。
いわゆるトリウムガラスが使用されていて、製造から60年経った今でも放射線を発し続けているからです。
人体に与える影響に対する不安と並んでもうひとつの問題は、トリウムガラスは時を経て黄変してしまうため、カラー撮影で白いものが黄色く写ってしまいます。
危うきには近寄らずが正解ですが、レンズ自身も自らの色で黄信号を発して警告しているようで、ある意味献身的と言えそうです。

そんな危険物でもあるレンズを使用した理由は単純です。
ひとつは沈胴なので携行性がよくなるということ、もうひとつはモノクロで撮るので黄変の影響は受けにくいということがありました。
しかし、こんなレンズですので撮影時以外は体から話すように意識したのは言うまでもありません。
原発事故以来わたしたちは放射能に対してとてもセンシティヴですが、電磁波ともども悪いことは分かっていても影響度合いは不明なままですので、ヤツはズミクロンが原因で亡くなったんだからレンズ蒐集家としては本望だろうなどと言われても嬉しくないでしょう。

さすがズミクロンは、開放でも抜群のシャープネスを見せますし、光線の具合によってはちょっとだけ柔らかな雰囲気も出せますので使い出の良いレンズであることは間違いありません。
F4まで絞ると解像力もバーンと上昇して、このレンズを好きな人々を唸らせます。
ところが、ボケはいただけません。
いちばん二線の曖昧な作例を選んだつもりですが、ぶつぶつざわざわが全面を覆っています。
ただ、この程度ならうるさいとは言えないので、ズミクロン信奉者には十分に良しとする枝と言えるでしょう。

今回、わたし個人が目から鱗と感じたのは、ズミクロンの暗部は必ず潰れるという出鱈目が判明したことでした。
他と同条件で比較すれば明確になるのでしょうが、今回の36枚で暗部がひどい潰れ方をしているというものは一切ありませんでした。
シャドーがハイライトがということは、あくまで画面の中のコントラストの問題で、例えばフィルムがコントラストを重視したものだとつぶれるとか、諧調を意識した露出設定では踏ん張るとか、レンズそのものもコントラストの目立つ現在のものでは潰れがちとか、そういえことなのではと思うのですが、どんなものでしょう。
撮影時はずっと曇っていたということを申し添えておきましょう。

作例のおじいちゃんは、欧陽さんという沙渓が反映した数百年前から豪商として知られた家の末裔です。
いや、末裔はお孫さんがいたので誤りです。
枯れには子どもが確かふたりいると聞きましたが、どうしているのかと言えば広州に出稼ぎに行っているということでした。
その意味ではたぶん最後の栄華を誇った彼は末裔と言えるのでしょう。
プライドがあって帽子やパイプ、着ているものまですべておしゃれな伊達男でした。
あなたの歳とそう変わらない60年前のレンズで撮影させてくださいと頼むと、満面の笑顔でこたえてくれたのが印象に残ります。
とは言え、長年の喫煙で黄変していたであろう彼の歯の色は確かめるすべがありませんね。
【M6/Summicron 5cmF2 F2】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Leitz Summicron 50mmF2 Collap. | trackback(0) | comment(0) | 2013/08/13 Tue

最佳男演員獎

Summicron 5cmF2
昨日、日曜は都内で開かれるお祭りを見に行って、今週一週間作例をアップすべく準備していました。
しかし、前夜はあまりに暑くて眠ることができず、それでも7時に起床してニュースを見ると、東京の最高気温は38度まで上がるとか言うので、それは昨日の夕方にも聞いていたはずですが、この時点で気力は萎えて外出を断念しました。
同じニュースで昨夜の最低気温が30度だと言うのですが、最高は40度近くて最低でも30度とは、東南アジアの方が涼ししいくらいではないでしょうか。

6月に訪れた雲南はベトナムやミャンマーと隣接しているので、地理的には東南アジアと変わらなそうでいて、標高が高いので日差しは強いもののそれほど暑くはありません。
その雲南の旅にもっていったM6のモノクロ写真が少し遅れて現像が上がってきたので、今週の作例はこちらで失礼させていただきます。
わざわざM&を持参したのにフィルム1本しか撮影しなかったのですが、それも沙渓と喜洲という2つの古鎮のみで、今回は7枚とも沙渓の作例を出すことにします。
沙渓も喜洲も魅力的な村でしたが、よりコンパクトにまとまっていて歴史を感じられる部分が多く、かつ快適な滞在だった前者に贔屓目あってのことになりますか。

例えば、作例の建物は約500年前に建てられた魁星閣という名前の古劇台とされています。
この向かいには、興教寺という古刹があって、とても古い仏絵が残ることで知られていますが、寺や古劇台を挟んだスペースは広場になっていて村の中心です。
今でも、この周りに安宿やカフェ、売店などが並んでいますが、もともとはチベットを目指して馬に茶などを積んだ一行が、寺を詣でて旅の安全を祈り宿泊したところで、その当時の雰囲気もこうであったかという佇まいのままに建物が維持されています。
茶馬古道の名の通りに馬をつないだ名残もありますし、今でも村のはずれには馬を売る家が残っているというので驚きです。

古劇台では、どんな劇が観られたのでしょうか。
現在の京劇のようなシリアスなものであったかも知れず、住民である白族の伝統音楽を聴かせていたのかも知れません。
旅で疲れた人が楽しむための大道芸やコントのような肩の凝らないようなものだったのではないかと想像するのですが、記録が見つけられずそのあたりの詳細は分かりません。

そういえば、魁星閣のように屋根の先端が上に反り返っているような建物は白族独特のもののようで、旅の間いくつか見る機会がありました。
民俗信仰的な意味合いがあるのかも知れませんが、視覚的には屋根を軽く見せて下にいくほどどっしりした感じをイメージさせる安定感をうまく表現させているように思いました。
高い部分が上を向いているということでは、彼らの向上心とか上昇志向とかを象徴しているとも捉えることができます。
いずれにしても、木と瓦だけのマチリエルからシンプルな美しさを表現していて、かつての彼らが高い美意識を持っていたことは間違いないようです。

実際には彩色もなされていたのですが、中国では珍しく派手に塗りなおしたりはしておらず、枯れるがままに時の流れをも表現するさきは日本人の侘び寂びに通ずるものがあるのかも知れません。
それは同時にモノクロのモチーフとしてもふさわしいものでした。
わざわざフィルムで撮るのに、右の人物は邪魔にしか映らないかも知れませんが、やはりわたしの作例の中では重要な登場人物です。
こんな歴史的な場所にいても一生懸命に携帯を見ているさまは、主演男優賞を贈りたいほどです。
日本人であれば、恐らく自身の文化に誇りを持つ白族の人たちでも、こんなところに長時間腰掛けるなんてできないでしょう。
部隊の袖の出来事ながら、いまいちど彼の無神経さに拍手喝さいをお贈りいたしましょう。
【M6/Summicron 5cmF2 F2】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Leitz Summicron 50mmF2 Collap. | trackback(0) | comment(0) | 2013/08/12 Mon

感謝您們

M8/Summicron 5cmF2
山手西洋館シリーズは、昨日7館目を見終わったところで完結しました。
今日は、今年最後のブログ更新のつもりでしたので、最後にふさわしい写真をと考えていました。
清水寺で今年の世相を漢字一文字で書いて見せたりとか、いうような最後はこの定型でというものを確立できればと思っていたのです。
ですが、アイディアが出て来ません。

では、どこかに年の瀬を表すものとか、師走を連想させる慌ただしいもの、新年の準備シーン、しんしんと降り積もる新雪、干支の動物の可愛らしい姿…。
なんでもよかったのですが、それも果たせずでした。
せめて何か撮りに繰り出そうという計画も仕事が押したり、車検に出したばかりの車をぶつけられたり、去年さぼった大掃除をせざるを得なかったりで、この土日は写真どころではなくなってしまいました。

引っ張り出されたのは、おとといの外交官の家の外観です。
7つの西洋館はいずれも文化的、歴史的価値が高く、後世に残すべき遺産と言えるものです。
とりわけ、この外交官の家は国の重文指定されていますし、その美しさをあますところなく眺めるためでしょう、夜は美しくライトアップされて冬の夜の冷たい空気の中で非常に映えています。

さて、では、今年一年、自身のことを振り返ってみようかと突然に考えたりもしましたが、もう夜の2時近くなって今からそんなことやってたらいつ寝られるか分からなくなってしまいます。
だいたい、今年は滑り出しからイヤなことがあって、思い出しただけで先に進んで行かなくなりそうです。

そんなことよりも、ここは1年の感謝の気持ちを申し上げる場とさせてください。
いつもいつも傲慢な文章ばかり書いていて、身勝手なヤツだとのご批判を受けていることもありますし、最後くらい少しだけ殊勝なことも書かなくては。

今年も、撮影にお付き合いいただいた皆さま、写真談義・レンズ談義に花を咲かせていただいた皆さま、拙ブログにコメントいただきました皆さま、そして、何よりご覧いただいている皆さまにあらためまして感謝申し上げます。
辛いこともあった1年でしたが、おかげさまで、どうにか乗り切ることができました。

来年は、より内容を充実させてと申し上げたいところですが、何より、もう限界に近い領域に達しているというのが本音でして、これ以上の進歩は今後無いだろうと断言せざるを得ません。
写真の技術や撮影センスは、じゅうぶんに上達の余地があるのは承知していますが、突然に開花するということも期待薄です。
継続は力なり、に重きを置いて来年も続けていくつもりです。
今後とも、今まで以上の叱咤激励を賜りますよう、よろしくお願いいたします。

わたしは明後日の出発にそなえて、ただいまから旅支度に入ることにします。
無事戻りましたら、新年、第1週には再会できる所存です。
それでは、皆さまに於かれましては、好いお年をお迎えください。
【M8/Summicron 5cmF2 F2】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Leitz Summicron 50mmF2 Collap. | trackback(0) | comment(8) | 2010/12/27 Mon
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