默禱鏡頭

M8/Herar 3.5cmF3.5
ヘラーについて調べようと検索をしてみましたが、なかなか有力な情報がありません。
しかし、意外にも手近なところからヘラーに関する短文が見つかりました。
前にも書いたことがある、Hartmut Thiele の"Carl Zeiss Jena/Eitwicklung und Beschreibung der Photoobjective und ihre Erfinder"です。
これは、いわゆるツァイスの電話帳と同じ出版社同じ著者による、いわばその電話帳の副読本と言える小冊子です。
ツァイスのレンズ名や設計者の簡単な説明があるのですが、その中にヘラーの一項があるのに気付きました。

ドイツ語なので一単語ずつ訳し、誤訳もあるとは思いますが、拙訳をご紹介いたします。

 ヘラーは、1936年シルベスター•フーバーによって設計されました。
 2群5枚のレンズ構成で、安価に製造することが可能でした。
 ヘラーの応用の可能性は、イエナにて系統的に調べられました。
 3.5cmから18cmまでの異なる焦点距離で、あらゆるフォーマットのF2〜F4.5の明るいレンズがテストされました。
 ロボット用のプロトタイプでは、8cmF4が設計され、サンプリングもされました。
 コンタックス用ビオゴン3.5cmF2.8に代わるものとして、廉価版の広角レンズ、ヘラーが1939年8月にイエナで1000本製造され、1944年までに400本売れました。
 1943年末から1944年のレンズ在庫はまだ600本だったことが分かっています。

Thiele氏はツァイスの研究家と思われますが、上の文をそのまま鵜呑みにしてよいかはよく分かりません。
それでもまったくのでまかせということはないでしょうから、正しいことを前提に話を進めます。
フーバーはツァイスに在籍していましたが、このヘラー以外に世に出たレンズはなかったようです。
また、巻末のレンズ一覧に次のようなレンズが出ていて、多くのバリエーションが試されたことが裏付けられています。
・ヘラー5cmF2.8 28本
・ヘラー5cmF2.5 26本
・ヘラー5cmF2    1本
(ヘラー8cmはいくつものF値があります)

昨日、ゾナー5cmF2から1群目を除いたようなレンズ設計と書きましたが、それを裏付けるような同スペックレンズが1本だけ作られたのがたいへん興味深いです。
このレンズの描写がどんなものだったか想像すべくもありませんが、1本だけで止めてしまったのは、ゾナーに伍するものではなかったということでしょうか。
せめて、F2.5かF2.8が世に出てくることを願って止みません。

ところで、その巻末のリストには、ヘラー3.5cmF3.5は18本のロットが掲載されているのみで、1000本のヘラーはリストにありません。
一方で、1939年8月に製造され、1944年の在庫が600本だったと、記載に具体性があって内容にリアリティが感じられます。
本当に400本が出荷されたのか、600本の在庫はどうなったのか気になるところですが、残念ながら、もうわたしに調べるすべはありません。


さて、今日の作例を見てみます。
F3.5開放で、中央付近にピントを合わせていますが、まずは深度が深いと感じられます。
その裏返しで、立体感には乏しいレンズのようです。
ただ、解像力の高さによる生地のフワーッとした質感の表現がたいへんすばらしいと思います。
冷たい表現や荘厳さなどを表現するのが得意なレンズかも知れません。
3.11の追悼がこれから始まるという緊張感がピーンと張り詰めているように見えます。

コンタックス用3.5cmレンズは、戦前のビオゴンF2.8、オルトメターF4.5、ブラナーF3.5、ビオメターF2.8と構成やF値もさまざまで、個性派揃いの高性能揃いです。
さらにはライツのズマロンをもとにして、これらを比較することで、ヘラーの本当の特徴を見出すことができるでしょう。
個人的には、量産されることなく、忘れ去られるところだったヘラーを救いだした方の苦労が報われ、ヘラーの名誉回復がはかられることを強く願って止みません。
【M8/Herar 3.5cmF3.5 F3.5】
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thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Zeiss Herar 3.5cmF3.5 | trackback(0) | comment(2) | 2012/03/21 Wed

Bertele的肖像

M8/Herar 3.5cmF3.5
一昨年、関西を訪れたとき、何本かの超希少レンズで試写させていただく機会に恵まれました。
いずれもすばらしいレンズでしたが、中でも1本のレンズの描写に目が釘付けになりました。。
マクロプラズマート3.5cmF2.7です。
解像度が抜群に高いうえに、独特の重みのある表現力は他に類例がないと思われたからです。

ただ、これは希少中の希少レンズで、手に入れるどころか、eBayも含めて一度として売られているのを見たことがありません。
残念ですが、入手することはハナから諦めざるを得ませんでした。
むしろ、触ることができたこと、撮影することができたこと、自分のブログに掲載できたことに感謝しないといけません。

あれから2年、今回も超希少レンズをお借りすることができました。
マクロプラズマートと同じ焦点距離のツァイス・ヘラー3.5cmF3.5です。
ヘラーは名前のみ知るレンズで、まさにそのレンズをお貸しくださった方のサイトこそが唯一の情報源です。
そのようなレンズを拙ブログに取りあげてしまうことはためらわれましたが、この方には、ぜひどうぞとおっしゃっていただき、今回、無遠慮に紹介させていただくことになりました。

マクロプラズマートの時もそうですが、ただでさえ希少なレンズを使わせていただいたことだけでもありがたいことですが、そのことに勝手な意見を書いたりすることに許可を与えるのは相当広い気持ちがなければできないことです。
あらためて深く感謝いたします。

ヘラーはコンタックス用のレンズですので、コンタックス→ライカ・マウントアダプターを介してM8に装着しています。
レンズ構成は2群5枚と、たいへん特徴的なかたちです。
前群が3枚貼り合わせ、後群が2枚貼り合わせですが、近い構成としてはアルディスのスティグマチック・シリーズⅢF7.5がありますが、これは双方に影響関係はないように見えます。

より近いのは、なんとゾナー5cmF2です。
3群6枚のゾナーの第1群のメニスカス1枚を抜くと、ほぼ同じかたちになります。
年代的にはゾナーが7~8年早いようですが、構成だけを見ればゾナーが何らかの影響を与えている可能性は高いと思われます。
ただ、ヘラーがベルテレの設計かどうかは分かりません。

レンズのレア度は、1991年ころ出版されたクッツの「コンタックスのすべて」での説明を読めば理解できるでしょう。
コンタックスレンズの一覧表が掲載されていますが、その中には入っておらず、特殊レンズの章の試作レンズの数々のところで扱われ、次のように書かれてています。
「このレンズは非常に小規模の量産が行われたと推定される。今までに3本が見つかっている…」。
最初にマクロプラズマートがいかに希少かと書きましたが、それ以上に珍らしいレンズだということが分かります。

さて、作例ですが、ピントの怪しい特徴ないもので恐縮です。
鉱泉の具合によるところ大なのかも知れませんが、ツァイスの暗めのレンズにしてかなり柔らかい表現なのに驚きました。
解像力はかなり高く、何よりコートの生地のようなテクスチュアの表現にたけていることが分かります。
美しい再現性を持ったレンズと評価できます。
ただ、その反面でしょう、ボケはお世辞にもきれいとは言えないようです。

作例がぱっとしないうえに、やはりM8で撮っては広角で重要な周辺の様子まで分かりません。
もちろん、一時的に使用しただけで、レンズを理解したなどと言うつもりはなく、あくまで直感的な感想に過ぎないことはお断りしておきます。
しかし、それでもヘラーは他の35mmレンズにない特徴を備えていると思えてなりません。
なにより、珍らしいというだけでは所有することをしない方が、自分では使わずわざわざアダプターとともにお持ちくださったことがそれを証明しています。
【M8/Herar 3.5cmF3.5 F3.5】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Zeiss Herar 3.5cmF3.5 | trackback(0) | comment(0) | 2012/03/20 Tue
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