楽しかったスナップ行ですが、そろそろ終了の時間が近づいてきたようです。
深圳の商業の中心、東門にほど近い順平さんのカメラ修理店からスタートした、スナップはおよそ6キロの行程を歩いてまた順平さんが待つ修理店へ戻って来ました。
その直前、帰り時間を意識し出したところで、気付くと楊さんがカメラを構えていました。
子どもを抱いた両親を撮っているようでしたが、当初はどうして撮っているのか分かりませんでした。
しかし、考える間もなく、背後にある大きな広告写真に気付き理解できました。
広告は、西洋人のカップルがベッドの上で今や口づけせんという場面の写真でした。
その後、愛を交わしあい、1年も経って子どもを授かったというようなシチュエーションが頭に浮かびます。
楊さんは、1、2枚撮影したところで、母親と眼が合ったようで、今度は、子どもにキスしてとか言いながらカメラを構え続け、幸せいっぱいの母親もそれに応えていました。
意図通りの写真が撮れたでしょうし、コミュニケーションをとりながらさらに写真のバリエーションを作っていっているようでした。
わたしとのところに戻ってきた楊さんは、説明を始めましたが、想像した通りのことです。
中国でよく流されている痩せる薬のテレビCMのことを例えに出して、わたしはビフォー・アフターですねと返すと、楊さんも顔を崩していました。
社会主義中国では企業による広告は禁止されていました。
それが開放政策によって緩和されて広告は許され、さらに青少年に刺激が強いような広告もいつのまにか町に出現するようになっています。
若い世代にはそんなものも当たり前なのでしょうが、恐らく楊さん世代には新しい現象として、写真で表現するための大きなモチーフになっているのではないかと思われました。
楊さんは、深圳のみをフィールドにスナップを撮り続ける写真家です。
深圳は、変化の激しい今の中国にあって、その最先端を行く町ですから、それを追っていく限りスナップが可能でしょう。
そして、それを時系列に並べていくことで、深圳の発展の流れを再現することになります。
東京スカイツリーを毎週定点撮影している人がいると言います。
土台からスタートして、徐々に高さを増して、ついには完成するまでを撮り続けているのです。
その写真を一気に見ていけば、スカイツリーが着工から竣工するまでの歴史を一瞬で体感することができます。
それと同じようなことを深圳という町全体で行っているのが、楊さんのライフワークなのかも知れません。
スカイツリーは、2012年に完成するようで、それを撮り続けるのもあとしばらくのことです。
しかし、深圳は変容し続ける町であって、完成することはないでしょう。
楊さんは、いつその仕事を終えるのでしょうか。
そして、それを集大成することはあるのでしょうか。
【M8/Summaron 35mmF2.8 F2.8】
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thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真