不可思議的

M8/Xtralux 9cmF3.5
順平さんに持ち込んだ歴史的レンズは、1900年にハンス・ハーティングがトリプレットをもとに…、否、このレンズのことは今月には受け取れるでしょうから、それ以降紹介することにしましょう。
しかし、そのレンズのフランジバックを微調整しながら合わせるため、M8に付けて彼の店の前を撮影していると不思議なものを見ました。

ふと、地王大廈の方を見上げると、雲の端の方にプリズム状のカラフルな色が付いています。
あわてて順平さんを呼び、あれはなんでしょうと聞くと、彼も初めてみる現象らしく目を見開いて驚いています。
そのうちわたしたちの行動を不思議に思った他の店の人もなになにと出てきて、みんなでしばし天体観測タイムとなりました。

雲ですから天体ではないですね。
虹の形状が崩れたということでもないようです。
とにかく、肉眼で見えた通りに撮影されていますので、これが何かお分かりでしたらぜひご教示ください。
わたしたちにはなんだか分かりませんが、きれいだったので、人物が必ず入っていなくてはならない、のルールを破って、今回作例として採用してみることにしました。


レンズのことに触れておきます。
イギリス、ロス社のエクストララックス9cmF3.5は、オリジナルのライカマウントレンズです。
ライカの交換レンズとして発売されたのか、リードとかウィットネスのような英国製ライカ型カメラ用の望遠レンズとして依頼製造されたのか、情報がないため詳しいことが分からないのが残念です。

コンタックス用の交換レンズとしてもこのレンズをしばしば見ることがあります。
ただ、コンタックス用は名称が Definex となり、焦点距離も3.5inchと表記されますが、銘版部分が同様であることとシリアル番号の近似から、同じレンズの表記違いと思われます。
両者を合わせれば、けっしてごく少量生産のレンズということではなさそうです。
実際、某オークションサイトでも数点出品されていて、高価な英国レンズ群にあってリーズナブルな価格が付いているものもあるようです。

構成も不明です。
しかし、このレンズは絞りより前群が外れるので確認すると単レンズが2枚あり、後群は貼り合わせダプレットなのでテッサー型とみなしてよいかも知れません。
もしかしたら、後群がトリプレット3枚貼り合わせのエクスプレス型ではとの期待もあってよく見ましたが、やはりダプレットで間違いなさそうです。

というのは、テッサー型の9cmと言えばやはりエルマーが先に出ています。
エルマーはF4ですので、後発のエクストララックスは開放F値を明るくするために1枚レンズを増やしたのではとの想像ができたからですが、そうではなかったようです。
ざっと見た限り、エクストララックスの方が前玉の直径が2mmほど大きくなり、2群目と3群目の間隔が幾分空いているようですので、何かしらの大きな設計変更があったのだと想像されます。

エルマー9cmF4は、ノンコートの戦前タイプから非常によく写るので気に入ってましたが、このエクストララックスも、今回の2枚の作例からだけでもかなりシャープでよく写るレンズであることがうかがわれます。
コントラストが低いのではという声が聞かれそうですが、むしろこういうレンズでは諧調です。
コントラスト重視であれば、ライカに合う古いレンズを探すより、もっと近道がありますので。

わたしの手に入れた個体は、外観はかなりくたびれています。
ですが、レンズはほとんど無キズで、オリジナルのコーティングもきれいです。
金銭的に厳しい環境下では、このように外観がボロくて玉が良いというものを探すことになります。
時には、玉自体もちょっとというので我慢しなくてはならないこともしばしばですが、やはりオリジナルの写りを愉しむためには、せめて玉もオリジナルの状態であって欲しいことは言うまでもありません。
そんな意味では、程度の同じくらいのエルマーとほぼ同額で入手できたこのレンズは、わたしにとって久しぶりの良い買い物ということで愛着も一入です。

さてさて、作例写真に戻りますが、怪しげな色は、太陽光が何かにあたって色が分解して雲のスクリーンに投影されたということだと思われます。
けっしてレンズの色収差が現れたということではない、と報告いたします。
【Xtralux 9cmF3.5 F3.5】
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thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Ross Xtralux 9cmF3.5 | trackback(0) | comment(2) | 2010/08/07 Sat

撮影師的朋友

M8/Xtralux 9cmF3.5
石塞から15分も歩くとメインストリートに出ます。
ここから陸豊へ行くバスは10分間隔程度で走っているようで、待ちくたびれる間もなくそれはやって来ました。
車掌に深圳まで行きたいので、深圳行きのバスが出ているバスターミナルまでと言うと、だったら高速道路の入り口で降りて待ってればすぐ来るよと教えてくれました。

果たして陸豊インター前でバスを降りると、深圳行きのバスが停車していて、今度はそのパスから車掌が降りてきて深圳に行くなら乗れと手招きしました。
今や発車するところだったようで、乗り込むやバスが動き出します。
座席も1つしか空いておらず、わたしが掛けると満員の混雑振りでした。

当たり前ですが、帰りは事故にあうこともなく無事に深圳に到着しました。
これ以上ないような順調な帰り道です。
ありがたかったのは、どうにか待ち合わせ時間通りに、カメラ修理職人の友人、順平さんのところに着けたことでした。

彼には前日にも会って、1本のレンズを託してあります。
最近入手した20世紀初頭の歴史的レンズです。
ソ連製のエルマーコピーレンズを添えて、マウント移植してライカで距離計連動して使えるよう依頼していました。

順平さんは、修理屋であって改造は本業でないし、改造に必要な器械がないばかりかライカボディもないので、フランジバックの確認は、わたしのM8を使ってのトライアンドエラーです。
分解したうえで、フェイクエルマーに取り付け可能なようにレンズ金具を削っていきました。
ある程度のところで、あとはコリメーターなどの測定具を持つ同業者に確認してもらい、OKになったら内側からねじ止めすると約束してくれました。

時間はもう少しかかりますが、次回の滞在時に完成したレンズを受け取ることができるでしょう。

さて、2日続けて順平さんを訪ねたのは、夜、食事をするためでした。
ふたりの親友を紹介したいので、いっしょに飯を食おうぜと誘ってくれたのです。
そうしてやって来たのは、周展さんと楊俊坡さん。
楊さんは、わたしの中国語が心配だったのでと、大学生の息子、哲クンをともなっていて、英語で会話すればこいつが翻訳するからと豪快に笑っています。

周さんは、深圳市青年撮影学会の会長です。
技術はプロ級とのことですが、普段はケーブルテレビ局に勤めていて、機会あるごとに撮影活動しています。
大判の撮影は昔からやっていたようですが、最近は大判でピンホール撮影して長時間露光による芸術世界を生み出しているようでした。

一方の楊さんは、やはり深圳市青年撮影学会にも所属していますが、彼はプロの写真家です。
80年代から活動を始め、中国で人気のある結婚用の写真を撮ったり、暗室でプリンターをやりながら技術を習得し、今では深圳真実撮影有限公司という、会社を興して撮影に本腰を入れています。

ふたりとも青年学会に所属していますが、わたしより少々年上のかなり年季の入った写真家です。
中国語では、写真家は撮影師と言います。
言葉面だけ見ると、前者はセンセイと呼びたくなるような威厳のようなものを伴いそうですが、後者は技術者とかむかしの記念撮影の写真を撮るおじさんをも含めた職業フォトグラファー的な雰囲気を内包してるような感じがしてしまいます。
気さくなふたりが写真家ではなく撮影師を名乗るのは、なんとなくぴったりとフィットしているようにも思えてくるのでした。

楊さんは、自らプリントした作品を数点持って来てくれていました。
深圳真実撮影有限公司なんて会社までつくるくらいですから、フィールドはすべて深圳ですし、人物をテーマに背景と組み合わせた独特の真実世界を撮影しています。
これは、まさにわたしのツボにはまる作品ばかりでした。

不動産広告の看板を持ったいまどき風の若者が必死に売り込みしている様子や、わしはこういうのは苦手でねという顔で高級車から外を見つめる犬とそんな状況を鼻にかける運転手の女性、落書きだらけの壁の前を闊歩する完璧なファッションの女性…。
視覚にダイレクトに訴えるもの、よく見るとにやりとしてしまうもの、どこか背景に潜むものがあるようで行間を読もうとしてしまうもの、いずれも何かを語っている写真ばかりです。

わたしが、こういう写真を撮りたいと思っているんですよと説明すると、楊さんは理解者を得た喜びもあってか、次回、深圳をいっしょに撮影し歩くことを約束してくれました。
ライカM4とM6にズミクロン50mmと35mmの2台で撮影し歩くのだそうです。
だったら明日行きましょうと提案しましたが、暑いときは撮影よりも暗室、涼しくなってから行きましょうとかわされてしまいました。

英語や日本語もちょっとだけ混じって、話しと笑いの絶えない食事会でした。
わたしは、歓迎歓迎と招かれたお客さんのつもりでしたが、会計を見てびっくり、5人でたらふく食べてビール10本以上飲んで3000円しません。
いくら中国でもこれは安すぎ何かの間違いだと思いましたが、逆にチャンスと、わたしの方で支払いしちゃいました。
次回は、南京出身の周さんに当地の料理をご馳走してもらうよう約束も取り付けることは忘れません。

帰り際、その周さんから自作の写真集をいただきました。
ピンホール大判で、北京オリンピックの会場をとらえたものでした。
彼は、わたしに献呈したことを表すサインと日付を書き入れてくれました。
その横のわたしの名前と友に贈るとの崩した文字が、また次回深圳にやってくるための査証のような力強さを放っていました。
【Xtralux 9cmF3.5 F3.5】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Ross Xtralux 9cmF3.5 | trackback(0) | comment(0) | 2010/08/06 Fri
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