鎌倉文学館

M8/Speed Panchro 75mmF2
吉屋信子記念館の次は、きっと鎌倉文学館に違いない、多くの人がそう思ったことでしょう。
はい、正解です。
ここは、鎌倉文学館ですが、有名な昭和初期の洋館ではなく、なんでこんなところにあるんだろうと気になったトンネルを採用することにしました。

ここは、少し小高くなっているので、洋館や庭からも海を望むことができます。
真正面に伊豆大島がでーんと座り、正午前の太陽が真正面で豊穣の相模湾をきらきらとさせていました。
庭にはバラ園があってこの時期は残念ながら1輪も咲いてませんでしたが、時期を選べば華麗な赤、黄、ピンクが迎えてくれることでしょう。

とは言っても、文学館ですから、この地を訪れたならぜひその展示を見ながら鎌倉ゆかりの文学に思いを馳せたいものです。
高浜虚子の自筆の歌や大仏次郎の原稿用紙など興味深い展示が少なくありません。
わたしは、むかし読んだ三島由紀夫の小説に鎌倉の広い別荘に過ごすシーンがあって、ひょっとしてこの文学館がモデルではと思ったりもしました。

しかし、わたしにとって鎌倉の文学としていちばん影響を受けたのは吉田秀和氏です。
吉田氏は、文学というより音楽評論の人ですが、随筆家でもあって、鎌倉文学館でもその名を連ねています。クラシック音楽が好きな人でもなければ聞かない名前かも知れませんが、吉田氏は日本に於いてなみの音楽家以上に影響力を持つクラシックファンになくてはならない存在だと思います。

わたしは、高校まで音楽といえばロックしか聴かない少しとんがった若者でした。
それがどうしたことか、大学に入ったことをきっかけに何かまったく新しいことにチャレンジしたいと、大学の管弦楽団に入部してしまったのです。
同期は10人ほどいて、みなブラスバンドをやっていたとか、楽器は初心者だがクラシックが好きでとか、多かれ少なかれ音楽と接して来た人たちです。
そんな中、唯一わたしはクラシックのクの字も知らないで(古めかしい言い回しでスミマセン)、何を聴いたらいいかも分からない状態でした。

入って早々、夏の定期演奏会に向けて先輩たちは稽古に余念がありません。
そのパート練習にちょこっと顔を出したり新人同士で練習したりしていましたが、1ヶ月ほど経った頃でしょうか、全体の合奏を聴くチャンスがあって、そこで演奏されたシベリウスの交響曲第2番ニ短調に痺れてしまったのです。
生で聴いたことでロックしか知らない青年を一瞬にして感動させてしまう素晴らしい曲でした。

記憶力の悪いわたしはシベリウスが覚えられず、レコード屋さん(ディスクユニオンです)でそのLPを買おうとしましたが、間違ってベルリオーズを買って来てしまいました。
幻想交響曲です。
この曲は、聴きようによってはプログレッシブロックそのものです。
違う曲じゃんかと落胆しつつもこの曲のファンになってしまいます。

そんなことではクラシックの泉に入っていくことができませんので、同期の仲間に何を聴いたらいいのか相談することにしました。
彼は、親切に教えてくれ、なおかつ勉強するならこれだと文庫本を貸してくれました。
それが、吉田秀和著「LP300選」(新潮文庫)だったのです。

お堅い音楽評論家の書いた古典音楽書なんてこれ以上つまらない本はないのではと心配する方も多いでしょう。
ところが、この本が最高に面白いのです。
まずは、この書に沿って古典派やロマン派の音楽を聴き始めればよかったですし、それと同様、いやそれ以上にこの人の書く文章が面白くてすっかりのめりこむことになります。
LP300選なんて無粋なタイトルが付いていますが、内容は深遠な音楽世界を文庫本1冊に凝縮したエッセンスそのものでした。

吉田氏は1913年生まれといいますから、もうすぐ百歳になろうというのに現役ばりばりの音楽評論家です。
日曜朝にNHKFMを聴くと「名曲のたのしみ」という番組でその声を聞くことができます。
その元気っぷりはすごいですが、やはり好い音楽を聴いていると、脳や細胞が活性化されるのでょうね。
円熟を通り越して、神のような存在です。

ウィキペディアの略歴を見ると、とにかく日本の音楽と文学への接点のすごさに唖然とさせられます。
中学時代伊藤整に英語を学び、そのころヴィオラを弾いていた小林多喜二がアンサンブルに家を訪れ、大学では中原中也にフランス語の個人レッスンを受け、小林秀雄や大岡昇平とも交流し、社会人となっては斎藤秀雄らと音楽教室を開設し(一期生に小澤征爾、中村紘子)…、と文字通り枚挙にいとまがありません(書いてて疲れました)。

その吉田氏は以前から鎌倉に居を移していて、鎌倉市の名誉市民に選ばれています。
食道ガンを克服して音楽活動を再開した小澤征爾氏が最近大きな話題になりました。
全身を使う指揮ではまず体力の問題があるので、75歳ともう若いとは言えない小澤氏の活躍はすごいことです。
しかし、その小澤氏の先生とも言える吉田氏がまもなく百歳という高齢で音楽を紹介している姿も引けをとりません。
どちらも日本の誇りです。
【M8/Speed Panchro 75mmF2 F2】
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Cooke Speed Panchro 75mmF2 | trackback(0) | comment(2) | 2011/02/02 Wed

吉屋信子記念館

M8/Speed Panchro 75mmF2
短めな御成通りは、ずんずんと突き進むと、少し大きな通りにぶつかって終了します。
江ノ電の踏切が左手にあり、越えていくとすぐ下馬の交差点です。
今回は反対に右へ曲がりしばらく南南西に進路をとります。
調べるとこの長谷に向かうバス通りには、由比ヶ浜大通りという立派な名前が付いています。
大通りと呼ぶには道幅が狭いですが、むかしは大仏に参拝する人がたくさん通ったのではないかと想像され、自動車が登場する前の通りだとすれば、じゅうぶんに大通りだったのだと思われました。

歴史を見て来た通りにふさわしく、左右に昭和初期以前の古建築をちらほらと見ることができ、おしゃれなカフェやレストラン、和菓子店に骨董屋さんも並ぶ魅力的な散歩コースです。
しかし、今回は、鎌倉彫り屋さんの先の路地を右に曲がって、住宅地を抜けていきます。

その途中見つけたのが、吉屋信子記念館でした。
吉野は、明治末から昭和にかけて活躍した女性作家だったようですが、申し訳ありませんが、わたしは未読です。
記念館なので公開はしていますが、年間十何日かときわめて限定されています。
本来、記念館とは、その人のファンが訪れるところなのでしょうが、知らなかった人が訪れたことで興味を持ち、その作品に触れてファンになるというかたちがあってもいいのではないかと思いますが、どんなものでしょう。

近くには、旧川端康成邸がありますが、こちらは完全に非公開で、今回探しましたが見つけることができませんでした。
そういえば、川端はとなりの逗子のマンションで自殺したと小学校の時に習った記憶があります。
明日紹介予定の鎌倉文学館もすぐ近くで、もともと文学にゆかりのある鎌倉にあっても、この周辺は特に文学の香り高いエリアです。

さて、話は飛びますが、この作例写真はなんだか夕方のように見えないでしょうか。
実際は、まだ十時半くらいなのですが、全体に黄色っぽくなっていることで、陽が落ちてきている雰囲気を作っています。
黄色っぽくなっている理由は、レンズが黄色いからにほかなりません。
じゃあなぜレンズが黄色いのか聞かれれば、はっきりとは分かりませんが、先月書いたトリウムレンズの可能性があるということになります。

これには諸説あるので、あくまでひとつの考え方だとお断りしたうえで、進めさせていただきますが、使用したスピードバンクロはある時期から黄色いレンズが使われるようになります。
トリウムレンズはもともと無色ですが、径年によって黄変してしまうと言われているのです。
映画を撮影するための高級レンズですので、高い性能を求めて異常分散ガラスを使ったのだが、やがて黄変してしまい使えなくなったという説があれば、もともとがモノクロ時代のレンズなので、トリウムとは関係なく最初から黄色いレンズで設計していたという説もあるようです。

前述のように、スピードバンクロは初期のノンコーティングを除くと焦点距離に関係なく黄色いレンズが使われています。
わたしのもっている35mmはノンコートで無色、40mm、75mmはコーティング付きですが、黄色レンズです。
残念ながら50mmは所有していません。
むかしは捨て値で売られていたスピードバンクロ50mmF2ですが、比較的最近になって高性能レンズとして人気が高まり、手に出ないレンズになってしまったためです。

無色、黄色を問わずリーズナブルな同レンズをずっと探していますが、入手は難しいかも知れません。
さいわい製造数が多かったので所有している方は多いのではと思います。
黄色レンズを所有されている方は、色の補正を行っているのか気になっています。
【M8/Speed Panchro 75mmF2 F2】
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Cooke Speed Panchro 75mmF2 | trackback(0) | comment(7) | 2011/02/01 Tue

御成通

M8/Speed Panchro 75mmF2
先週は都内を歩きましたが、昨日は鎌倉を軽く散歩してきました。
わたしは、となりの藤沢市に在住していますので、自分の庭だとまでは言いませんが、地元の感覚で歩くことができます。
それは、逆に新鮮味が薄いということも意味しますので、散策のたびにコースを変えるなどして、変化を付けています。

今回は、鎌倉寺社のビッグネームをあえて外して、地味なルートを歩いています。
冬のこの時期ですし、写真に撮るものがあるのか不安でしたが、なければないでいいとあくまで散歩しに来たつもりで短時間歩いてみました。
あまり歩かないコースということで、ちょっとした発見にあふれた散策になったようです。
気負わず歩くのはいいですね。

スナップ好きの人は、同じ場所を繰り返し訪れるタイプの人と、常に新しい場所を求めるタイプの人がいるのではないかと思います。
わたしは完全な後者で、同じところに出掛けるとしても、全開右側を歩いた通りは左側を歩くとか新鮮さを追い求めてしまいます。
そんなわたしからは、前者はものごとを極める研究家肌のタイプなのだとも思えるし、ときにおんなじこと繰り返して楽しいのかなと不思議にもなります。

しかし、そんなことを言っていると撮影できる場所なんて限られていますから、すぐにネタが尽きてしまいます。
新しい場所ばかり求めていては、段々と行き先が遠方へと広がっていきそうです。
それも面白いですが、現実的なところで言えば、2年くらいに1度は同じコースを巡って、微妙なあるいは大きな変化を見つけ出すのも面白いかなと考えています。
ただ、前回はここを撮ったとか鮮明に覚えていたりして、そんな過去の記憶を振りほどきつつ撮影しないといけなくなったりもします。

さて、鎌倉駅をいつもとは反対の山側に出てみます。
横須賀線の逗子方面に沿って小道がありますが、これが御成通りです。
道の広さなどは、反対側の小町通りによく似ていますが、小町通りは観光化がひどくて俗っぽくあまり魅力的では
ないのに対し、御成通りも観光化しているとは言え、鎌倉っぽい個性という点ではずっと歩いて面白い通りです。

今回、タイミングが悪いことに、ちょっと話し声が大きめなカメラマン集団がいて行く手を遮られるようなかたちになりました。
こういう場合は追い越してしまえばいいのですが、いざ追い越してからわたしが撮影しているところへ彼らが追い付いてしまうと、なんだあいつ、あんなもの撮ってるよとか思われそうで、小心者のわたしは後方を行く道を選びます。

この通りでは有名な旧安保小児科で撮影しようと思っていたのですが、考えることはみな同じで、彼らもこの周囲で思い思いに撮影を始めてしまい先に進む気配がありません。
仕方ないので、少しやり過ごすつもりで御成通りを外れたところ見つけたのが、このユーゲント・シュティール風の美しい看板でした。
カフェ鎌倉美学という名称も、看板負けしない美しい名前で、店に自信を持っていることが表れていると思われます。

今回は時間がなく、お茶すらいただけなかったのが残念ですが、次回はコースを強引に捻じ曲げてでもおじゃましたいと思います。
ホームページを見るとスペインやラテンアメリカ系の食事が楽しめるようです。
メニューは意外にもかなりリーズナブルで、ランチはもちろん夜はバーになるようですが、スペインのバルとメニューも価格もそっくりなのが、もう10年もスペインに行っていないスペインファンにアピールしています。
【M8/Speed Panchro 75mmF2 F2】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Cooke Speed Panchro 75mmF2 | trackback(0) | comment(0) | 2011/01/31 Mon

小洲告別

M8/Speed Panchro 75mmF2
もう小洲の写真もネタもないのですが、今回、広州北部の塱頭村にとどまらず南部の小洲村までやって来た理由を最後に書いておきます。
それは、シャーリーさんという小洲を拠点に活躍する写真家に会いに行くということだったのです。

シャーリーさんは、前回の小洲訪問で知り合った女性で、ちょっと難解なところのある作品を撮っているのに対して人柄さわやかで、その時は芸術と離れたところで話が盛り上がりました。
その彼女から、しばらくヨーロッパへ留学することになったので、仲間とパーティを開くことになり、時間が合えば参加して欲しいとメールが届きました。
パーティは、運悪く帰国日だったため参加できませんが、ならばその前日にお邪魔してお別れのエールを送るかとこっそり出掛けてみたのです。

ちょっとした手土産を持って再会を喜び合い、欧州での活躍を祈念するつもりでいました。
しかし、どうしたことかわたしは彼女を見つけることができませんでした。
前回会った彼女の仕事場兼ギャラリーは、すでに別の人が使用していて、シャーリーを尋ねましたが知らないという返事でした。

メールでは小洲でパーティ開催とあったので、小洲のどこかに移転したのでしょう。
狭い小洲村なのですぐに見つかると思ったのですが、電話番号を控えておかなかったのは致命的でした。
ついに彼女の消息はつかめないままです。

半ばあきらめて写真を撮っていたとき現れたのが、昨日書いた女子大生ユィンでした。
シャーリーはヨーロッパへ旅立ってしまい小州との縁は切れたはずですが、ユィンの存在がまたいつか小洲を再再訪する理由となりそうです。

前回の帰り道は、近くのバス停からローカルバスに乗り、運転手に確認しながら地下鉄駅に比較的近いところで下車して、地下鉄で広州東駅まで出て深圳まで戻りました。
同じルートで戻るつもりでバス停に行くと、なんと小洲発広州東駅行きのバスが10分間隔程度で往復していました。
小洲を訪れる人が増えていることをうかがわせる変化でした。

さて作例写真ですが、残念ながら彼女はシャーリーでもユィンでもなくて、撮影会のモデルです。
今回、モデルの写真ばっかりになって小洲の紹介が手薄に感じられると思いますが、それもこれも近く再訪できることを願ってのことです。
【M8/Speed Panchro 75mmF2 F2】
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Cooke Speed Panchro 75mmF2 | trackback(0) | comment(0) | 2010/09/04 Sat

像双皮奶

M8/Speed Panchro 75mmF2
小洲の滞在は比較的短時間になってしまいましたが、そんな中で気付いたことがありました。
飲食関係の店が激増していたことです。
2年前の訪問では、オールド小洲地区に食堂1軒とカフェが1軒あっただけですが、今回カフェ・軽食系の店が7軒も増えていました。
あるいは通らなかった所にももっとあったかも知れません。

撮影会が開かれるくらいですから、観光客がかなりやって来ていることが想像されます。
しかし、どうも聞くとカフェができる理由はそうではないようでした。
中国が豊かになったことがまた理解できるような話を聞くことができました。

小洲から歩くと20分以上かかってしまうようですが、大きなエリア丸ごとが、大学や専門学校、それに関連する研究棟、ホール、寮などの施設からできている広州大学城が隣接しています。
恐らく、学生、教職員、その他関係者を合わせると何十万という人がいるマンモスカレッジということのようです。
実際は、広州大学、広州人文大学、広州工科大学、広州医科大学…のように複数の学校が一大エリアに集結したもののようですが、それだけで中都市のような規模を形成しているわけです。

そんな学生のごくごく一部でも、今日は気分転換に小洲まで散歩でもするか、お茶でもするかとなったということのようです。
仮に10万人の学生がいるとして(たぶん実際はもつと多そうです)、そのうちの1%が小洲に行ったとすると1000人ですから、これはもう小洲のキャパシティを超えてしまいます。
毎日、0.1%100人が訪れてカフェをそこそこ利用してくれれば、ちょぅどいいかも知れません。

もともと小洲の中にも美術学校があることもあって、大学生たちの厳しい審美眼にも耐えうる個性的な内外装の店が並んでいます。
メニューを見るとコーヒーが300円くらいだったりと中国の物価を考えるとかなり高価な印象ですが、多くの学生はリッチなのでしょうか、お客さんが入らなければ商売にならないのでそれなりに出入りはあるということのようです。

では、あまりゆとりのない学生はどうするのでしょうか。
そこはしっかり中国式の甘味処のような店がカバーしてくれています。
安い飲み物は50円くらいからあって、日本でドトールコーヒーに入るくらいの感覚で利用することができます。

ここには、広東省順徳名物の双皮奶がありました。
水牛のお乳で作るプリンなのですが、ぷるるんとした食感とコクのあるうっすらとした甘みが絶妙の中国スイーツです。
本来、女の子の好むものなのでしょうが、わたしはこれが大好きで、現地では老若男女こぞって食べてますので見つければいつも遠慮なくいただいています。

後ピンになってしまった今日の作例は、そのお店の看板娘です。
近所の赤ちゃんからもお姐さんとして慕われている様子がご理解いただけるかと。
前にお出しした目の大きなモデルに勝るとも劣らない魅力的笑顔を捉えられなかったのは残念ですが、店の名物同様、ぷるんとしてコクと甘みが絶妙の女の子なのでした。
【M8/Speed Panchro 75mmF2 F2】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Cooke Speed Panchro 75mmF2 | trackback(0) | comment(0) | 2010/09/02 Thu

対面過来的

M8/Speed Panchro 75mmF2
塱頭村の古建築のいくつかにプレートが掲げられているのが目にとまります。
「花都区登記文物保護単位」と書かれていますので、日本でいえば市の重要文化財というところでしょう。
ローカルですが、自治体が保護を認定した建造物ということだと分かります。

あれーっと思ったのは、今年の4月公布、8月から実施となっていたことです。
まさにわたしが訪れた時こそ、重要文化財になりたてのほやほやだったのでした。

写真で見たように外観はきれいですが、中に入るとかなり荒れているのが気になります。
草があちこち生え放題で、住民はもっぱら虫たちという感じです。
朽ちているわけではないですが、管理の手は行き届いているとは言えません。

祠堂や書院などの文化財クラスでそんなですから、住宅用の建造物はより老朽化が進んでいるようです。
生活インフラの問題もあって住みにくく出ていく人も多いようで、人が暮らしている建物は数えるほどのようでした。
そういった人たちが古建築群を維持しているのですから、ぜひぜひずっと暮らし続けていただきたいものです。

しかし、すれ違う人を見るまでもなく、古建築に暮らす人のほとんどがお年寄りなのは間違いなさそうです。
近くでいい職が得られればともかく、多くの若者は仕事を求めて外へ出てしまいます。
残った若者も、恐らくは結婚を機にやはり出ていってしまうでしょう。
生活のある塱頭村は、風前の灯なのでしょうか。


さて、今日の作例は、小路の奥の方の家からやってきた貴重な住民であるおじいさんです。
カメラをずっと構えてましたが、臆することなくゆっくりと歩いてきます。
数メートル遅れて、愛犬チビも付いて来ています。

レンズは、スピードバンクロの75mmに付け替えました。
直前にksmtさんが、自身のサイトでに大和路の写真を掲載されたのですが、ここでのスピードバンクロがすばらしく即影響を受けて持ち出したというわけです。

恐らくF2開放とF4の2とおりで撮っているようですが、恐らくF4を多用されていてksmtさんとしては新境地ですが、まずその安定した描写が良いのです。
しかし、その多用されているF4が、時に混じって見られる開放の描写の素晴らしさを引き立てているのです。
開放から非常にシャープなレンズと思っていたのに、ふわーっとした表現やそれによって際立つ繊細さが、このレンズの開放の面白さを再認識させてくれています。

ksmtさんのスピードバンクロは戦中の初期タイプのものですが、残念ながらわたしのはその後改良されたもので、同様の描写は望めません。
コーティングの効果で逆光には滅法強くなっていますが、表現がかなり硬質になってしまっているようです。

暗部の描写はどうでしょうか。
コントラストも上がっているようですが、麦わら帽子の下のおじいさんの飄々とした表情がとらえられているのが印象に残ります。
もうちょっと怖い顔でしたら、撮影者はすれ違いざまに鍬を振り降ろされたのではと心配されていたかも知れないほどです。
【M8/Speed Panchro 75mmF2 F2】
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Cooke Speed Panchro 75mmF2 | trackback(0) | comment(2) | 2010/08/28 Sat

圓圓的背面

M8/Speed Panchro 75mmF2
だいたいここに着いて村の散策は一巡という感じです。
狭い村ですが、ゆっくり廻ってちょうど1時間くらいかかりました。
2時間半かけて来ていますから、このまま立ち去ってはちょっともったいない気がしますし、少し疲れましたので、どっこいしょと石のふちに腰掛けました。
休憩兼作戦会議です。

午後、市内の別のところにも寄る予定なので長居はしないつもりですが、もう少し休んでから見落とし箇所もあるかも知れないのであと30分くらいいることに決めました。
そうであれば、レンズを交換することにします。

そう思っていたところ、無人だと思っていた古民家が人が出てきました。
かなり高齢のおばあさんです。
野菜のようなものを抱えていて、軒先の石の上に置くや選別を始めました。
この家の玄関からこちらは死角になるので、おばあさんはこちらの存在に気付きません。

こちらは腰掛けたまんまですが、まさに写真を撮ってくれというシチュエーションです。
スピード・パンクロでの最後の1枚になりました。

それにしても、わたしが中国までやってきて撮るのは、老人か子どもばかりです。
30代40代の人はほとんど登場しません。
被写体として魅力がないかというとそんなことはなく、わたしが訪れるのが日中だからでしょう、働き盛りのこの世代に出合うことがないのです。

では、もう少し寄っておばあさんの表情に迫ってはどうか。
代わり映えのしない作例を見ながら、休み前の長い夜にそんなことを考えてみます。
【M8/Speed Panchro 75mmF2 F2】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Cooke Speed Panchro 75mmF2 | trackback(0) | comment(2) | 2009/11/02 Mon

惠州古鎮的事情

M8/Speed Panchro 75mmF2
龍華古鎮は、広東省中央南部の惠州市にあります。
惠州は、内外の製造業が多く進出しているところで、以前に訪れた惠東地区はケミカル関連の工場が多く、靴の工場がいくつかありましたが、このあたりは電子機器類の工場をあちこちで見ました。

もちろん世界の工場と言われる中国の広東省ですから企業の進出は当然ですが、惠州は客家人が多く、彼らのコネクションと労働力としての勤勉性が大きく影響しているのではと想像されます。
さらに中国内陸部各地からも労働力が集まりますが、地元の客家人によって規律ができていれば、工場側も管理しやすいという事情がありそうです。

龍華の村を歩いていて見かけた新しい家は、作業場になっていました。
近くの工場の、恐らくは最小単位の下請け企業というところでしょう。
建物の中ではお母さんたちが細かい作業をおこない、小学生の娘は庭先で刃物を使ったラフな仕事をこなしていきます。

わたしの存在に気付いた犬が起き上がって吠えだしましたが、これは弟がなだめておとなしくさせてくれました。
外の気配に、妹がどうしたんだろうと部屋から顔だけ出してこちらをうかがいました。

絶好のシャッターチャンスです。
すかさず1枚撮りましたが、どうも一瞬遅れたようで、妹の姿がなくなっていました。
三兄弟トライアングルの構図が歯抜けになってしまったのが残念無念です。

そういえば、散策していても全然人に出合うことなく、農作業してたり、子どもは学校に行っているからだろうと思っていたのですが、どうもそういうことではなかったようですね。
新しい建物だと言って避けていたら、見えてこなかっただろう事がらがあることに気付かされました。
【M8/Speed Panchro 75mmF2 F2】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Cooke Speed Panchro 75mmF2 | trackback(0) | comment(6) | 2009/11/01 Sun
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