相機市的収穫

M8/Kinic 40mmF2
先月、新宿で中古カメラ市がありました。
職場の近くということもあってこっそり覗いてみたのですが、喉から手が出るほど欲しいレンズはあったものの、ずいぶんと高い値札に失望して帰るだけでした。
いえ、実際には古い「クラシックカメラ専科」のバックナンバーを見つけて、何冊か買って帰ったのでした。

そのうちの一冊、「№37 ライカブック’96」にたいへん興味深い文章があって、これだけでもレンズを入手したのと同じくらいの価値があったと嬉しくなりましたので、ここに紹介します。
それは、脇本善司氏の「距離計用ニッコールレンズの発展」です。
タイトルから、ニッコールレンズの解説集のように感じてしまいそうですが、そういう面もいくらかはあるものの、内容としては脇本氏が東大の小穴教授に学んだ後に日本光学に入社してレンズを設計してきた半生をつづったエッセイと呼ぶべき読み物です。

脇本氏は、在学中に終戦を迎え、その後大学院に進んで有名な小穴教授の研究室に入られ、しばらくの後に日本光学の求人を知って入社されています。
すでに、ニコンカメラは発売された後で、初期の50mmF3.5、50mmF2、50mmF1.5、85mmF2などのレンズは世に出ていたようです。

そんな中、最初のレンズの仕事が、85mmF2の修正だったとあります。
大学院を出て間もない脇本氏は、さっそく学んだ知識を結集して修正にとりかかりますが、当初簡単に思われた修正は、地道な計算を経ないと無理であることを悟ります。

次に、当時理想のレンズと言われたゾナーの欠点を見出します。
近接領域で性能が著しく落ちるという欠点です。
ライカ用ニッコールの50mmF1.4、F2レンズは、近接側に1.5フィートまで繰り出せますが、これはユーザーへのサービスとしてダブルヘリコイドを採用したのですが(ツァイス・ゾナーとの差別化をはかるため?)、わざわざ性能の悪い部分をさらけだしてしまった訳です。
どう悪くなるのか、試してみたくなります。

文章の白眉は、複写用のレンズの設計に関わる部分です。
従来のマイクロレンズは、英文字の複写にこそ使えましたが、依頼のあった国会図書館の漢字の原稿をコピーするには解像力が低すぎでした。
新しい設計が求められた時期に、アサヒカメラのカメラ診断室の連載が始まり、外国製のカメラは日本光学に性能測定が依頼されました。
その時に測定したローライフレックスについていたクセノタールが抜群の解像力を見せていたため、これをもとにマイクロニッコールが設計されたということです。

ところで、4群5枚のクセノタールは、キングスレークの「写真レンズの歴史」でガウス省略型にカテゴライズされていますし、わたしもそう考えていました。
しかし、脇本氏はクセノタールを前群がガウス後群がトポゴンという表現をされています。
また、4群6枚(1+2+1+2)のエルニッコールは、前群ガウス、後群オルソメターと書かれています。
キングスレークの本では、同様の構成にミニチュア・プラズマットが取り上げられていて、前群ガウス、後群プラズマットの複合型と分類しています。

こういったことは、どちらかが間違いでどちらかが正しいということではなく、レンズの発展で見た場合と、大雑把な構成で分けてその仲間というようにした場合とでは、解釈が変わってくるということに過ぎません。
ただ、キングスレークはクセノタールがトポゴンの後群を使っていると気付いていない可能性が高そうで、脇本氏が日本光学での測定データの分析から後群トポゴンという表現の裏付けを得ていた可能性も秘めていて興味深く感じたのでした。

少し長くなってしまいました。
この他にも、巨匠ベルテレが登場するエピソードなど、時代を反映した面白い話が詰まっています。
レンズや日本光学について興味のある方には、わざわざ探しだして読む価値のある文章と思い、紹介させていただきました。


最後の作例は、相模の国に伝わるささら踊りです。
あまり知られていない踊りと思いますが、地元藤沢市では盆踊りの原型で、ここから盆踊りは全国に広まったという説を主張しています。

ささらという竹を組んだ素朴な音を出す楽器を伴奏に、少し愁いを帯びた旋律が、夏の終わりにぴたりとはまっています。
地元のお母さんたちが、伝統を守っている姿ともあいまって、ちょっとじんとくる踊りでした。
【M8/Kinic 40mmF2 F2】
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thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Cooke Kinic 40mmF2 | trackback(0) | comment(6) | 2009/09/11 Fri

有揺手防止対策嗎

M8/Kinic 40mmF2
今朝メールボックスを開くと、以前M8を購入したカメラ店からM9がいよいよ発売されるというDMが届いていました。
09年09月09日だからM9ということのようですが(時差の関係で1日遅れ)、去年の8並びの日にも世界中から非難を浴びつつ開催されたイベントがあったような気がします。
われわれは、フィルムカメラに自由を! などと叫んだり、M9に水をかけたりしなくてはいけないでしょうか。

メールの冒頭の言葉にまず驚かされます。
「ウル・ライカまたはM3以来、もっとも重要なカメラのことがライカ社よりアナウンスされていることをご存じのことと思います…」

M9はフルフレームサイズ化され、いくつかの改善を得たようですが、M3以来もっとも重要という表現は的を射ているように思えません。
M8の後に出たM8.2を引き合いに出せば、せいぜいM8.5くらいの進歩具合という程度ではないでしょうか(ここでいうMはマグニチュードではありません)。

R-D1、M8とライカマウントのデジタルカメラを使用してきた人にとって、フルフレームのM9はまさに福音といえるのでしょう。
特に広角域にこだわって使っている方は、本来の焦点距離でない少し狭まった画角での撮影にストレスを感じていたはずです。

しかし、標準レンズがほとんどのわたしには、あまりこのことは問題になりません。
むしろ、R-D1、M8とAPSサイズを使い続けてきたことで、それに合わせたイメージサークルの小さいレンズが増殖してしまったことを考えると、周辺がケラレてしまうフルフレーム新発売と言われても、わたしは何を今さらと嘆きたくもなってきます。
IRフィルターが不要というのも一般的には朗報でしょうが、すでに9サイズも購入済みで、ステップアップリングも13個揃えたとあっては、嫌がらせかと憤ってみたりもしてしまいます。

M8とM9を併用するのが理想的なのでしょうが、現状ではさすがにそこまで贅沢はできません。
M8の相場も一気に下がるでしょうから、それもちょっと悲しいです。
というわけで、まったく関心が向かないカメラとなっています。
とんだM3以来の最重要カメラです。

蛇足ですが、カメラ店のメールはこう結んでいました。
「うれしい驚きをもたらす$6995というプライスタグを付けられたM9は、すべてのライカ撮影家にとって所有する必要のあるカメラです。
わたしたちは2週間以内にお届けするつもりでいます。
さあ、電話かメールであなたのM9をご予約ください!」


本文とは全然関係ない作例で恐縮です。
鎌倉からの帰り道、自宅のそばの神社で例祭をやっていました。
手ブレしちゃっています。
M9には手ブレ防止機構は付いているのかな?
【M8/Kinic 40mmF2 F2】
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Cooke Kinic 40mmF2 | trackback(0) | comment(12) | 2009/09/10 Thu

英格蘭制鏡頭的秘密

M8/Kinic 40mmF2
せっかく入手した珍しいレンズですが、うまくテストするチャンスがありませんでした。
この後も含め、かなり辛い状況下の撮影になっています。

今回使用した Kinic 40mmF2 は出所不明のレンズで、少なくともスティルカメラ用のレンズではないでしょうが、何のためのレンズかはまったく不明です。
レンズヘッドを見つけ出しので、例によってMSオプティカルの宮崎さんにライカマウント化してもらいました。
フィルター径が25mmほどの可愛らしいレンズです。

Kinic という名前のレンズはしばしば目にしますが、F2.5のものがほとんどで、F2の Kinic は珍しいと思います。
ですから、本当は50mmがあれば良かったのですが、40mmでもF2を発見できたのは好しとしなければいけないでしょう。
50mmF2.8の画像を見ると、妙に細長くてもしかしたらDマウントなのかも知れません。

クックのレンズは、名称が同じでも焦点距離によって構成をずいぶんと変えているようです。
50mmクラスで言うと、有名な Speed Panchro はダブルガウスですし、Ivotal は未確認ですがエルノスターのようです。
Kinic も違うタイプのレンズ構成を期待したのですが、宮崎さんの回答には少し失望させられました。
4群6枚の普通のダブルガウスということでした。

クックのレンズや Kinic については、最近 ksmt さんが自身のサイトの日誌の中で詳述されています。
実は、その日誌の記事はわたしがマウント改造依頼と前後して始まったため、特殊構成の期待感が大きくなり、それがしぼむのもまた大きかったという経緯がありました。
ksmt さんには、新発見のニュースが届けられず残念無念です。

作例は、画面に太陽こそ入ってませんが(?)、真逆光という悪条件です。
コーティングのないレンズですので、コントラストは落ち、フレアっぽさは避けられませんが、少女の描写はなかなか優れているように思いました。
ボケも周辺のコマ収差を除けば、案外と素直できれいなものです。
さすが、クックのシネ系のレンズというところでしょう。

ところで Kinic という名称ですが、英語式にカイニックと発音するのか一般的なキニックなのかがよく分かりません。
スペルは旧ユーゴスラビア人の名前を連想させるものがありますので、いっそのこと、キニッチとしてはどうかと思いますがいかがでしょう。
【M8/Kinic 40mmF2 F2】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Cooke Kinic 40mmF2 | trackback(0) | comment(4) | 2009/09/09 Wed

対、去鎌倉吧

M8/Kinic 40mmF2
そろそろ鎌倉か。
2ヶ月も行かないでいると、少し恋しさを感じてくるようです。
週末は天気も良かったので、M8にテストレンズ2本をフォグの小さなバッグに放り込みました。

土日でブログ1週間分の写真を撮ってきて、それを並べるというパターンに対応できるのが鎌倉です。
しかし、それ以上に愉しいのが、鎌倉はコンパクトな町でありながら、歩いているとちょっとした発見に感心できることです。

それにはちょっとしたコツがあって、だいたい散歩コースというのは決まってしまうものですが、少しずつずらすことで変化をつけ、初めて歩く道をつくったり、同じ道でもいつもとは逆方向にルートをとることで新鮮な気持ちで散策することが重要です。

もうひとつは、休日の鎌倉はすごい人出で、混雑しているところまで歩いているとすぐに疲労感を感じてしまいます。
人の多い中の方がシャッターチャンスは多く、ブログの指針のほとんどがそう言うところで撮影したものばかりというのも事実ですが、鎌倉を散策するのであれば半分くらいは静かな所を歩いた方が気持ちがよくなります。
ストレスからの開放もひとつの目的にしたいところですので、リフレッシュできるような場所も求めて歩くべきでしょう。

今回は、時間も短かったので、鎌倉駅からバスに乗ってみました。
金沢八景行きのバスに鎌倉霊園まで乗車し、鎌倉駅まで歩いて戻って来るルートです。
鎌倉霊園から朝比奈の切通しはすぐで、このあたりはほぼ横浜市金沢区になり、歩行距離がだいたい4キロくらいでいい感じです。
運動不足とメタボも同時に意識しています。

朝比奈切通し、十二所神社、光触寺、明王院は、初めて訪れましたが、鎌倉の外れらしい静寂と風情が同居したすばらしいところです。
十二所神社はちょうど例祭にあたっていて、ぜひ見て行ってと誘われましたが、時間がなかったのが残念です。
明王院は、写真撮影禁止となっていました。
理由は分かりませんが、過去にあったトラブルが想像されて、何ともさびしい気持ちになります。

杉本寺に着いたときは4時半になっていて、もう門は閉ざされていました。
これはまずい。
1週間くらい涼しい日が続いていたので、この暑さが誤算でした。
調子にのって歩いたので、汗だくになってただでさえスタートが遅いのに休憩を採り過ぎました。

写真は数えるほどにしか撮っていないので、今回も八幡様まで一気に戻っていつものパターンでお茶を濁さなくては。
どうやらお日柄が好かったようで、いつものパターンの結婚式に間に合ったのは幸いでした。
【M8/Kinic 40mmF2 F2】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
Cooke Kinic 40mmF2 | trackback(0) | comment(2) | 2009/09/07 Mon
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