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現金輸送中

Angulor 28mmF3.3
これは明らかに判断ミス。
早めに郴州に戻って来てしまったことを後悔しましたが、今さらどうにもなりません。
あのまま村にバスの時間までとどまるか、むしろ田舎町の桂陽に行った方が散策は楽しかったでしょう。
バスを降りた場所も何の特徴もないエリアで、勘の悪さを嘆くばかりです。
しばらく歩いてから、わたしのカメラを見て自分もフジのX100を愛用しているのでと声をかけて来た男性がいましたが、わたしの事情を聞いてだったら来たのと反対の方向に歩けば何とか広場とか面白いところがあったのにと言われて、、ますます勘の悪さを思い知らされました。

市場を出ると歩道に沿って店が並んでいる通りがあったのですが、ちょうど歩道部分だけ日陰になって歩きやすかったのでそこをゆっくり歩くことにしていました。
暴騰申し上げたとおりでなにも面白くない通りでしたが、たまに子どもが遊んでいたりするのでレンズを広角に切り替えてノーファインダーで撮影しながら歩くことにしたのです。
妙に化粧が濃くてセクシーなお姉さんが椅子に座っていたので撮ったりもしたのですが、その数軒あとの何屋か分からないような店のドアにおばさんが立っていて、人差し指だけでわたしを手招きしました。
偶然歩いた何にもない通りは、日中からお姉さんたちが商売するやばいところだったようです。

さらに先を歩いていた時、歩いているわたしの目の前でちっちゃな女の子がおもむろにパンツを下ろして道端にしゃがんでおしっこを始めました。
反射的にシャッターを切ってしまいますが、先の商売女性の写真もおしっこ少女の写真もさすがにブログに掲載するのはためらわれます。
特に少女の方はおしりをこちらに向けているので、先日のニュースで児童ポルノの写真をやりとりした等の罪で全国で60人だかが逮捕されたと報道を聞くと、こんなんでも捕まるのではと不安を感じます。

作例は銀行の小さな支店前、現金輸送車にジュラルミンケースを積み込んでいるところです。
運搬する人が2名、小銃らしきものを構える人が1名、迷彩服にヘルメットの出で立ちで作業しています。
彼らは警察官ではなく、警備員に過ぎないようなのですが、銃器の携行が許可されているのでしょうか。
ちょっと日本では考えにくいですが、治安面では不安のある中国では当たり前のことのようで、わたしは何度か見たことがありますが、撮影チャンスが来たのは初めてでした。
例によって、腰ダメでカメラを腹に据えて、やや左にカメラを調節して通りすがり際にシャッターを2回切りました。

やはり銃のプレッシャーが影響したか、レンズが思ったより下向きですし、左にターンしすぎたか当然入れたかった銀行の入り口は写らず、代わりにまったく関係ない三輪車が入り込んでいます。
さすがに銃を構えるまでには至っていませんが、警備員がわたしを注視しているのも今になってはたいへん木になります。
どのような状況の時に銃を構えることが許されているのか、また、発砲は。
わたしのX-E1には不似合いなほどに無骨なデザインのベルティオのレンズが付いていましたが、彼がカメラ型の武器ではないかと判断したらどうなっていたのでしょうか。
あいつ、正面見て歩いているけどレンズはこちらを向けてるし、なんかあやしくないかと考えたとしたら。

かなりこじつけがありますが、そのような推定から、この作例はわたしが生命を賭して撮ったもっとも危険な1枚に認定したいと思います。
この状況を克服できたことで何か一線を越した気分です。
この結果に満足することなく、次回は、よりディープな世界に挑戦したいと考えています
【X-E1/Angulor 28mmF3.3 F3.3】
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thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
SOM Berthiot Angulor 28mmF3.3 | trackback(0) | comment(6) | 2013/08/03 Sat

土酒

Angulor 28mmF3.3
デフォルメされたようなとんがり屋根がとても特徴的です。
しかし、それ以上に目立つのは、火災の跡のように見える黒い煤の方かも知れません。
煤の正体は、火釜から立ち上る煙の長年の蓄積なのですが、外観からは依然この建物の実態は分かりません。
説明のプレートが掛けられていたので、それをご紹介することにしましょう。

 この建物は醸造所で、甘い香りのするお酒を造っています
 お酒は飲んでも喉を焼くことはなく、悪酔いすることはありません
 なぜならば、地元の上等な泉の水と植物を原料に伝統的製法で作られ続けているからです
 かつて村の南にあった広東から広西への街道を通った官吏や庶民は必ず陽山に立ち寄りました
 酒を2口飲むだけで歩く力がみなぎり、足元に颯爽と風が吹くのを感じます
 陽山の地酒を絶賛しないものはいませんでした

かつて、ちょっとした魔法のような秘酒があって、それを裏付ける壁の煙跡まであるのかと感心していると、実はそうではありませんでした。
この古建築の中に、好い感じの親父さんがいて一心に作業をしているので何をやっているのかと声をかけると、酒を造っているところだとの返事でした。
あの酒はかつてのものではなく、今も脈々と造り続けられているということです。

よければ試飲してみますかと、誘っていただきました。
右隣の家が醸造主の実家で、入るなり奥さんに酒を持ってくるよう伝えています。
何でもここの酒は、濃厚なものと淡白なものの2種類あるがどちらにしますかと尋ねられて、試飲なんだから両方持ってくればいいのにと思いつつも、まずかったらそのまま退散するので余計なことは言わない方が身のためだと、ぜひ濃厚な方を飲ませてくださいと返答しました。
醸造酒の自信作もその濃厚な方だったようで、大きくうなづいています。

紙コップいっぱいに注がれて運ばれてきた酒は、無色透明で口に近づけてもクセのある臭いなどはありません。
このとき先ほどの水の消毒という発想が出てきて、まずは大きく一口飲んでみました。
醸造主と奥さんがにこにことこちらの顔をうかがっているのが分かります。
一瞬間をおいてからわたしは多分、「!」という言葉を発したんではないかと思います。
驚いたからです。
なぜかと言えば、上に書いた説明文そのままの印象を持ったからです。
ほんのり甘みのある酒は、喉に一切の抵抗感を与えずすっと胃袋へ流れ込み、その後口も高級大吟醸を連想させる超すっきりフィーリングでした。

アルコール度数は40度と言ったようですが、記憶違いかも知れないと思ったのはあまりにすっきりしていて、そんなに強い酒には感じられないからでした。
例えば近くの泉が超硬水だからとか、よほど特殊な事情があってこういう酒ができるのでしょうか。
味は中国を代表する貴州の茅台酒で、このすっきり感はやはり日本酒の大吟醸を思い起こさせますが、こんな酒は他では飲んだことはありません。
中国で旨いと思わせる酒に出会うことはなかなかありませんが(もっともほとんど下戸のわたしにとって、それは日本でも同じですが)、これははっきりと大好きな酒で、思わずこれは売っていただけるものですかと愚かなことを聞いてしまいました。

目の前で手作りする特殊な水を使った伝統酒ということで、恐る恐る値段を聞くと12元/1斤だと言います。
500mLがおよそ150円と日本だったらペットボトルのコーラと変わらない拍子抜けする安さでした。
次回、この地を訪れる機会があるかどうか分かりません。
今ある在庫を全部くれと言いたいくらいでしたが、持ち帰りようがないので、奥さんが1.5Lのペットボトルに入れましょうかというのに同意して450円分だけ購入しました。

原料はお米ですかと聞いたところ、稲谷とのことでした。
すみません、稲谷が何なのか未だ分かっておりません。
グーグル翻訳で稲谷と入力すると日本語訳はライスバレーとなりましたが、なんじゃそりゃです。
トウモロコシが転がっていたのでこれのことかと聞きましたが、それは燃料に使っているだけだとの答えでした。

現在、1.5リットルのペットボトルは冷蔵庫に入れられ、わたしは2~3日に一度くらいのペースでいただいているのですが、このお酒の性質なのか、日に日にわずかずつ味が劣化しているのを感じます。
日本酒のボトルを開栓してしまった時のように、その日のうちに飲み干さなければいけないものだったのかも知れません。
それでも飲むたびごとに、活力がつくのを感じるような気がします。
それもかつての旅人たちと同様、たった2口飲むだけで。
【X-E1/Angulor 28mmF3.3 F3.3】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
SOM Berthiot Angulor 28mmF3.3 | trackback(0) | comment(2) | 2013/07/28 Sun

洗衣机的房間

Angulor 28mmF3.3
村にあった古民家のほとんどはオープンで、扉が開けられたままのところが多く見受けられます。
最初に入れてもらった美少女の家では、この家のご先祖様の木のレリーフが祀られていたのが興味深かったですし、他の古民家でもとても古い家具や古写真などがあって関心をそそられました。
とは言え、どの家も内装はとてもシンプルで華美な感じはなく、農業以外の産業がなかっただろうこの村が20世紀以降は貧困の中にあったことを想像させます。

とくに戦後の共産党時代になってからはたいへんだったのではないでしょうか。
中国の老人たちは悪名高き大躍進と文革を経ているのですから、今の政府にどれだけ不満があったとしても当時の凄惨な暮らしを考えればその平穏さに満足せざるを得ません。
政府は政府で、抗日戦争ドラマやマスコミの論調でいかに日中戦争時代が悲惨だったかを宣伝して、その後の自らの罪の記憶を薄れさせようとしています。
こんなことを考えると、つらい過去を思い出させるのではとの心配から、老人たちとはなかなか昔話をすることができません。
とても親しくなってはじめてその人の半生を話してもらえるかも知れませんが、聞く方にも相応の覚悟が必要でしょう。

さて、作例写真は古建築の内部を撮影したものです。
分かりにくいですが、撮影位置は家の中心のリビングルームのような空間で、人物が腰かけているのは外の路地で、その手前の出入り口は日本でいうお勝手口と言えそうです。
農村では衣服を川や井戸水で手洗いしますが、洗濯機が見えているので、余裕のある過程なのかも知れません。
左側の壁に立てかけられた箒やスコップといいコントラストを出していますね。

あちこちの古民家の中までお邪魔して歩いたのにはもうひとつ理由がありまして、外気温30度くらいの蒸し暑い日だったのですが、家の中は案外ひんやりとして涼やかだったからです。
石の家は洞窟の中のように温度が一定しているそうで、真夏でも空調要らずだと聞きました。
冬のことは聞きませんでしたが、時おり積雪もあるということだったので、石の家は逆に寒いのではないかと老人の体にはこたえるのだろうなあと心配になります。

心配と言えば、自分のお腹の心配をしなくてはいけないこともありました。
例によって、こんにちはと家の中に入っていくと、おじいさんがひとりぽつんと椅子に座ってぼんやりしていました。
このときも彼は自室に戻って椅子を取ってきてわたしにかけなさいと勧めます。
奥さんが比較的最近亡くなり、子どもたちも広東省で暮らしているので、いまは独りだと寂しげでした。
ただ、日本の都会の独居老人の問題のような状況ではなく、近所の子どもが遊びに来たり知り合いが頻繁に訪れたりと孤独死という心配はまったくなさそうです。

外は暑いから喉が渇いたでしょうとおじいさんが水を持ってきてくれました。
マグカップを手渡されて、わたしは、えっとたじろいでしまいました。
カップは薄く汚れていましたし、水は透明でしたが、小さな点々が浮いているように見えます。
そもそもこの水はどこから来たものかのか考えましたが、井戸水か雨水を貯めたもののいずれかでしょう。
何か理由をつけて飲まずにお返しすべきだったと思いますが、それではおじいちゃんにとても悪いことをしてしまうという気がしてしまい、がんばって水を半分ほど飲みました。

赤痢とかデング熱とか知りもしない熱帯性の熱病になるか、よくて数日間は下痢に悩まされるのではなどと不謹慎なことを考えましたが、しっかりと会話したおじいさんが他人にそんな水を飲ませるはずはありません。
もちろんお腹を壊すこともありませんでしたが、要らぬ心配をするくらいならやはり水には手を付けるべきではあなかったと反省しています。
ちなみにその時のわたしがとった行動は、少しはアルコール殺菌できるかもと強い酒を飲んだことでした。
旅ではときにこのような愚かな行動をしてしまうことがあるものですが、賢者になる必要はなく、常に自然体で行動しなくてはならないということを再認識したできごとでした。
【X-E1/Angulor 28mmF3.3 F3.3】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
SOM Berthiot Angulor 28mmF3.3 | trackback(0) | comment(2) | 2013/07/27 Sat

金麦少女

Angulor 28mmF3.3
本日の前プロである小埠古村を見終えてメインの陽山古村に到着しました。
20キロほどと聞いていましたが、どうもそこまではなさそうです。
バイタクのプロではないおじさんの運転はやや慎重なうえに、途中の上り下りがけっこうあって平均速度はたぶん40キロに達していないと思います。
一方、走行時間は約20分でしたので、平均時速36キロとすれば、距離は12キロ。
かなり適当ですが、だいたいこんなものだったでしょう。

地図を見れば正確な距離が分かりそうなものですが、ふたつの村ともグーグルや百度の地図に地名が出てくるものの、どちらも山中にあるためか道が表示されないため、直線距離しか知りようがありません。
ちなみにバイクの速度については、後部シートから速度計を見たものの、メーターは微塵も動いておらず、最高速度すら分かりませんでした。
中国では何度もバイタクのお世話になっていますが、未だ速度計が動いているバイクというものを見たことがありません。
バイクに制限速度を守りましょうと働きかけても、誰ひとり自分の速度を認識していないので、それは意味のない交通キャンペーンになってしまうということを意味しているようです。

小埠も陽山も距離がそう離れていないので、建築の様式はよく似ています。
天井の高い建物はいずれも立派に見え、とても素人に建てられるものとは思えません。
200年くらい前に建てられたとのことですが、どちらかの村が先にゼネコンのような建築集団を雇い入れて建築群を完成させ、続いてもうひとつの村も同じグループに同様に建てさせたのではないかと想像します。
陽山の方が個性的な屋根を持った家など自由に作られている雰囲気が濃厚で、先に小埠が建ったあとに、陽山の人たちはもっと面白いヤツを建ててくれと依頼したのではないかと、やはり根拠なく想像してみました。

陽山の方は、近隣を含めて開発などの手が入ってないので素朴な味わいが楽しめますし、各建築の保存状態もこちらの方が良好です。
ところが古村落だけでは地元の人にはアピールできないということか、小埠で見た訪問者はこちらでは皆無でした。
陽山は中国十大古村落のひとつを名乗っていますが、わたしにはそこまですごいかは甚だ疑問に感じるものの、少し散策してみて500キロの道のりをやって来た甲斐は十分にあったと納得しました。

作例の女の子は何を走っているのかと見えるかも知れませんが、さすがに熱いので子どもでも走ったりというところは見ません。
右足が残っているのがその証拠ですが、左後方にある石からぴょんとジャンプしたところをたまたま撮ったのです。
どうしてたまたまかと言えば、わたしの背中側に実に面白い建築物があってそれを撮って、振り返った瞬間この少女が石の上に立っていたのでとっさに撮影し、さらに縦位置に構えなおしたときにぴょんと飛び降りたというわけです。

彼女が通り過ぎた後、右側の家を眺めていると中から、どうぞお入りと声をかけられました。
中でおばあさんが、家の中を説明してくれ、ここでもまたどうぞかけてと椅子を持ってきてくれます。
しばらく雑談していると、さっきの少女が入ってきて、あっ、この人わたしの写真を撮った人だ、と驚いていますし警戒感も見られました。
ところが、おばあちゃんがこの人日本から来たんだってと紹介すると、警戒の色は薄れたようで日本について控えめな感じでいろいろと質問してきます。
ここでダメ押しに日本から持参の飴を手渡すと目の色を変えて食べてくれます。

確か金麦だったか第三のビールのコマーシャルに出ているちょっとアンニュイな美女は何という名前か知りませんが、彼女の幼少時代だといっても疑われないのではと思えるほど、この少女は美形ですし同様のけだるい雰囲気も持ち合わせています。
わたしは、すっかり戸惑いを隠せなくなって残りの飴のすべてを差し出してしまいました。
彼女のお母さんもさぞかし美人で、コマーシャルの美女にそっくりなのではと期待しましたが、残念ながら旦那さんと広州に出稼ぎに行っているそうで合うことは叶いませんでした。
【X-E1/Angulor 28mmF3.3 F3.3】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
SOM Berthiot Angulor 28mmF3.3 | trackback(0) | comment(0) | 2013/07/26 Fri

梯田的魅力

M6/Angulor 2.8cmF3.3
こんなにゆっくりと歩いたことは後にも先にもけっしてないと断言できます。
宿から1時間離れた下の村にあるバス乗り場までの道のりでのことです。
この日の夜の便で桂林から深圳まで飛び、早朝香港からのフライトで東京に戻ることになっているので、田頭賽付近を昼頃まで散策する余裕があるはずでした。
わたしにも馴染みが薄い瑶族の村なので、関心は尽きません。

しかし、朝一番で宿を飛び出してみると、雪がうっすらと積もり、昨日からの霧があらゆるものを氷の世界に変えています。
昨日よりもずっと歩きにくくなっていましたが、来た時は午後だったので凍っていない歩けるスペースがところどころ見られたのですが、それすら完全に凍ってもう足の踏み場はなくなっていました。
それでもなんとか踏ん張って外に出たところで、老婦人が作業しているのを見つけ話をしようとだいぶ近づいたところで滑ってしまい、そのお婆ちゃんに大丈夫かと助けられるに及んで散策を断念せざるを得なくなりました。

霧は依然として深く、宿は部屋から見える棚田の絶景がウリだったのですが、ただただ真っ白で視界ゼロに近い世界です。
仕方ないのでテレビをつけると、広西省のローカルニュースをやっていて記録的な寒波であちこちで積雪があり、道路は凍結して桂林市街でも事故が相次いだと、不安をかきたてるような内容でした。
これは一刻も早くここを出ないと日本に帰ることができなくなってしまう、と慌てて帰り仕度にかかります。
おととしの正月休みは貴州で大雪にあい、空港への道路が閉鎖されたため、夜行バスで深圳まで戻ったことが脳裏をよぎりました。

そして、宿からしばらくはスローモーションのように足幅分ずつ進んで行くしかありません。
階段では横向きになって超スローなカニ歩きをし、それでもつるつる滑りながら1段1段降りて行きました。
このままでは、バス乗り場まで2時間かかるか3時間かかるか分からないくらいですが、実は、宿のおかみさんが助け船を出してくれていました。
彼女の家の納屋が先の方にあって、中に藁が干してあるからそれを束ねて靴に巻けば滑らなくなるからと言うのです。

この村では、白いご飯が美味で、食後に飲んだリンゴジュースのようなフレッシュ味の米酒に好いしれ、そしていま藁を装着したおかげでほぼ普通のスピードで歩くことができるようになりました。
わたしはこの村で楽しみにしていた棚田の絶景を見ることは叶いませんでしたが、そこの収獲には確実に堪能させられたのです。
普通に歩けるようになってからは、1歩1歩歩くごとに米のありがたさに感謝しないではいられませんでした。

さいわいバスは動いていて、昨日の崖崩れ現場でまたしても20分間の停車を余儀なくされ、幹線道路に出てから乗り換えた桂林行きのバスもかなりゆっくりな安全運転だったものの、無事桂林まで戻って来ることかできました。
市街は風が強く感覚的に棚田の村よりもずっと寒く思われ、市内の有名な公園に行ったりするのもやめて足のマッサージに行ったりお寺に行ったりのんびりして早めに空港へ向かうことにします。

空港行きのリムジンに乗っていると、この旅最後の愉快な出来事が待っていました。
興坪で会い、田頭賽で偶然再会したインド人のラケシュが、そのバスに乗り込んできたのです。
棚田の村でそうしたように互いに指差して、アッと小さく叫びました。
ピエールが言ったように中国はほんとうに狭い。
今度は、彼が勉強している北京まで遊びに行ってみようかしら。
【M6/Angulor 28mmF3.3 F3.3】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
SOM Berthiot Angulor 28mmF3.3 | trackback(0) | comment(0) | 2013/01/27 Sun

晩飯吃両次

M6/Angulor 2.8cmF3.3
ようやく辿りついた山頂の田頭賽で、フランスふたり組みが予約していたのはユースホステルでしたが、水道管が破裂したとかでお湯が出ないことが分かりました。
仕方ないので、わたしは2軒先の旅館に荷を解き、彼らはもう1軒あるというユースに向っていきました。
同様の旅館が6~7軒ありましたが、彼らがあくまで英語の通じる宿にこだわったのはこれまでの旅の宿で痛い目にあってきたからなのかも知れません。

お湯の出ないユースには、それでも3人の宿泊者がいたのですが、そのうちのひとりがわたしを指差してアッと言いました。
遅れてわたしもアッと返します。
彼はインドからの留学生とラケシュ君で、陽朔の先の興坪で彼が休んでいるところをわたしがハローと声をかけたのがきっかけで5分ほど話す機会がありました。
それから3日後になって、こんな山奥で再会したのでお互いびっくりとなったのです。
ピエールが、へえ、そんなことがあるんだ、中国って意外と小さい国なんだなあと言うと、みんなで一斉に笑いました。

さて、昨日も書いたとおり、田頭賽まで来たのは大いに後悔するところとなります。
霧がひどくて、唯一の目的だった棚田の風景がまったく見えなくなってしまったのです。
昨日の作例がいちばん視界のよいときで、以降は、数メートル先の人物すら薄ぼんやりのナチュラル・ソフトフォーカス状態です。

それ以上に深刻だったのが、予報通りにやって来た寒波のために霧が路面で凍りつくのか、とても滑りやすくまともに歩けなくなったことでした。
手すりもない坂道は腰をぐっと下げて、足を一歩ずつゆっくりと下ろさなければ、たちまち転落して棚田までまっさかさまです。
霧の晴れたところを目指して歩いてみるというのも不可能になって身動きすら取れなくなってしまいました。

フランスふたり組みは、ではすぐ後でと別れた後、そのまま行方不明になってしまい残念でしたが、彼らの無事を祈るばかりです。
夕食は、ユースの3人を誘ってわたしの宿でとることにしました。
その移動はわずか数十メートルですが、転ばないように棚田に転落しないように慎重に歩いたため5分以上かかる始末です。
実際、みんなつるんつるん滑っていましたし、転んでいるものもいて誘ったのが悪かったかなと思えてきました。

インド人のラケシュはもちろん牛肉がダメで、香港在住のふたりは菜食主義ということでオーダーが少し困ったものの食事はたいへん美味でした。
香港在住といっても彼女たちは、それぞれスペインとベルギーから来たという独身女性でしたが、野菜炒めにあった白い物体をおいしいおいしい、でもなにこれと聞かれタケノコと答えるとかなりびっくりしていたのが印象的でした。
ヨーロッパにはないのか、それに香港に住みながらこれまで食べていなかったのか…。
ところで、スペインから来たラウラは、自己紹介のときわたしの胸を指差して、わたしはここから来たと意味あり気な言い方をしたのですが、わたしの着ていたジャケットがFCバルセロナのものだったからで、バルセロナ出身のカタルーニャ人と聞いてわたしはしきりにダヴィドのことを思い出しました。

コーヒーを飲んでから彼らは去っていきましたが、まだ8時で時間を持て余すと思っていたところ、それを察したのか宿の人がおいでおいでと部屋に招いてくれました。
これから家族で夕食なのでいっしょにどうかというのです。
満腹でしたが、旨そうな鍋がぐつぐついっていて、仲間にいれてもらうことにしました。
スープだけいただいたのですが、その絶品は忘れられないものです。
棚田を見ることができなかったわたしは、そのスープを飲むためだけにここに来たのだと言ってもよいほどでした。
旅の最後の夜はとても寒かったのですが、彼らのもてなしのおかげで胃袋だけはあたたかくなって眠ることができました。
【M6/Angulor 28mmF3.3 F3.3】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
SOM Berthiot Angulor 28mmF3.3 | trackback(0) | comment(0) | 2013/01/26 Sat

酒店的烟花

M8/Angulor 2.8cmF3.3
夕飯後は8キロの道のりを自転車で帰ります。
のんびりと平均時速16キロで走っても30分で着いてしまうのでどうってことのない距離ですが、問題は自転車にライトが付いていないことでした。
いなかの小道には街灯などもちろん無く、民家すらもほとんど無い畑と山だけの真っ暗の中を走らないといけません。

幸運なことに、香港で女の子たちと食事をするときに、やや早めに着いて有名な男人街の夜店でなぜか10元のLEDのミニライトを買っていたのが多いに役立ちました。
ところが、向かいからたまに車が猛スピードでやって来るのですが、みんな上向きライトなので眩しくて何も見えなくなります。
ガードレールのような目印がないので、いきなり崖から転落も有りうる命懸けのシチュエーションです。
このまま年を越せなくなったではシャレにならないので、持っていたミニライトを高速点滅させて即席パッシングを試みたのですが、なんと対抗車は事情を察してくれたようで、みなライトを下向きに変えてくれました。

それでも車が通らない時はずっと闇夜なので、寂しいし正直怖かったので、大声で歌をうたいながら自転車を漕ぐことにしました。
何を歌うかと考えて時節柄これでしょうと思い出したのが、むかしある機会で歌ったハッピークリスマスです。
ところが、それはおおむかしのことだったので歌詞がいっこうに思い出せません。
Very Merry Christmas, and Happy new year. They said someone......, without any fears.
そう、恐れる物は何もないと必死に漕ぎ続けホテルにたどり着いたのです。


ホテルの前の道路で2013年を迎えました。
オーナーのカリーさんが、新年を祝うために花火をごっそり用意してきていて、年が明けるや一斉に打ち上げを始めます。
50センチくらいの立方体の箱から出た導火線にカリーさんが火を付けると、その箱から5秒間隔くらいで20発ほどの花火が次々と打ち上がりました。
こういうキット化された花火が中国では売られているのですね。

高さや派手さでは劣りますが、花火大会を見に来ているのとあまり変わらない凝った花火たちが真っ暗空に広がって、新しい年の到来を祝います。
全部で3箱、5分ほどの花火が終わると、ゲストとスタッフ10数名みんなでハッピーニューイヤーと声をあげてホテルの中に戻ります。

続いてバーベキューとビールそれに白酒で宴会になりました。
炭火焼きの中国式バーベキューは孜然(クミン)で香り付けしてあって旨いのですが、それ以上に飲まされてしまい不覚にもダウン寸前、ふらふらしながら部屋に戻ってそのままパタンと眠ってしまいました。
翌日は、お世話になったホテルに別れを告げて、次の目的地に向かい移動しなければなりません。
【M8/Angulor 28mmF3.3 F3.3】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
SOM Berthiot Angulor 28mmF3.3 | trackback(0) | comment(0) | 2013/01/18 Fri

売火柴小姐

M8/Angulor 2.8cmF3.3
龍譚から自転車を漕いでホテルに戻りますが、夕食は陽朔の町中でとることにしました。
まず、鄙びた楊作にはあまりに不似合いな西街に行くと、観光客とそれを目当ての客引きやらモノ売りやらでたいへんな混雑ぶりです。
さすが、中国の竹下通りとも言われるだけのことはあって落ち着きません。
自転車は乗ってちゃまずいと路上に停めようとすると、おっさんが駐輪代20元出すようにとどこからともなく飛んで来ました。
誰が払うかと日本語で怒鳴りつけて、自転車を押して歩きはじめます。

その時、雑踏の中で見た光景に胸を強く打たれました。
17~8歳くらいに見える少女が、道の真ん中で玩具を売るために人々に懸命に声をかけているのですが、まったく無視され、時に背後から来た人にぶつかってなじられ見ていて気の毒に感じずにいられないものでした。
しかも、彼女の発する声は言葉になっておらず、耳が不自由だということが分かります。
そんな状況でも彼女は笑顔で、必死に次から次へと声をかけては、誰からも相手にされないでいました。
まるで幼いころ見たアンデルセンの童話のアニメの再現のようです。

わたしは彼女の前に進み出て、玩具を見せてもらい幾らかと聞きます。
彼女はわたしの質門を理解したようで、両手の人差し指を交差して十字をつくり、それが10元だということを示しました。
同時に耳と口を指差して、聞くこととしゃべることができないとジェスチャーで知らせようとします。
幼児のおもちゃで値段は高くも安くもない設定ですがその場で10元わたしてひとつもらい、彼女の手をギュッとって頑張ってねと伝えました。

すると背後から外国人がやって来て、同様にひとつ求めました。
オーストラリアから来た彼も、彼女の姿に打たれてわたしの後に続いたようです。
3人で握手しあったりしてひととき盛り上がります。
そうしている間にも、わたしたちに続けとばかり次から次へと玩具を求める人が列をつくり…、ということはなく、彼女はまた必死に売ろうとしてむなしく無視され続けています。
ただ、このときにはもう気の毒だとは思いませんでした。
彼女と"会話"した時にその目に意志の強さと自信を感じたからです。

食事は、そこからほど近い、しかし、人通りはずっと少ない路地の小さなレストランでしました。
竹筒飯をメインにしている店で、これがとても旨いということをきいていたからです。
教えてくれていたのは、むかしお付き合いのあった王老師という桂林出身の美人です。
桂林は竹で有名な土地で、竹製の割りばしの多くはここでつくられて日本に輸出されているくらいですが、竹筒飯は名前から想像される通り、竹の中にもち米と野菜や肉等々を詰めて炭火で焼いてくれる料理です。

竹の節と節の間にご飯等が詰め込まれているのですが、竹は外側にほどよい焦げができていてとても好い香りがしていました。
中がもち米主体なので熱によって少しもちのような粘りも出て、味だけでなく食感もよく焦げ竹の風味も感じられ、なるほどこれはとても美味です。
お酒は店で作っているというやはりもち米製の米酒を頼んだのですが、ほんのり甘いそれは、同じもち米だからでしょうか竹筒飯と意外にもよく合いました。
こうして2012年最後の食事は、思いで深く終わりました。
【M8/Angulor 28mmF3.3 F3.3】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
SOM Berthiot Angulor 28mmF3.3 | trackback(0) | comment(0) | 2013/01/17 Thu

最難拍的

M8/Angulor 2.8cmF3.3
昨日の作例は、わたしの中ではアンギュロールを使って納得できる1枚になったと自負しています。
同じ龍譚村の作例を続けますが、今日は完全な失敗作になってしまいました。
昨日と同様のコンセプトで撮ったものですが、手法が同じでも結果は同じになるとは限らないことを思い知らされる作例です。

あらためて思うのは28mmは難しい画角だということです。
この作例が典型ですが、いかにも広角で撮りましたという背景を簡単につくってしまいます。
人物をしっかり捉えたうえで、背景の建物を自然に見せるのはかなりの困難をともなうものだとつくづく思います。

明るい標準レンズでは、被写体にピントを合わせて背景が好いものであれば、レンズが勝手に面白い絵を作ってくれることがしばしばありますが、28mmではピントはそこそこでよしとして、むしろしっかり写り込む背景の方の表現に気を配らないといけません。
逆に28mmレンズは、21mmが当たり前の画角で、12mmとか15mmも普通に使われる今の時代にあって、意外と広くないレンズだと言う気もしました。
35mmフルサイズで無いこともありますが、作例でも失敗しているように思ったより画面から切れてしまうものです。

よく、21mmとか28mmレンズを使って標準レンズのような写真を撮る人がいますが、こういう人こそ写真の名人と呼びたくなります。
動くもののスナップの場合では、考えて構図を決めていたのでは間に合わないので、自然といろいろなことがらがしっかり収まるようレンズが体の一部になっているということなのでしょう。
到底、わたしには真似できません。

オリジナルのライカマウントの28mmレンズでは、ヘクトール、ズマロン、エルマリート(初代)、エルマリート(2代目)、ロッコール、オリオン等を使いましたが、その中で好きなのはヘクトールです。
初代エルマリートは、制約が多くて購入後早々に手放してしまい、よく分かっていないのですが、長く使っている2代目の方は、どうも同スペックで小型軽量のロッコールに劣って感じられてしまい、その大きさのせいもあって旅には不向きという理由も重なり印象はいまひとつです。

そのロッコールは、CLE用のたいへん優れたレンズですが、外観が安っぽくてクラシックレンズらしさがないのと、例のちっちゃなつぶつぶの大量発生でちょっと距離を置いてしまうところがあります。
そう言えば写りも現代的というか、発色が明るくからっとしたところが顕著なのも趣味ではないと敬遠させる理由になっています。

赤ズマロンは、人気が高く性能も高くで、未だ高価なレンズですが、よく写り過ぎて特徴が見出せません。
構成がライカでは唯一と思われる、いわゆる分離ダゴール型という4群6枚の対称型をとっています。
言わば古い設計のレンズなのですが、写りは開放からかちこちのシャープさで、むしろモダンな印象を受けるのが面白いところです。
すごくトーンの出るレンズのようですので、愛好されているのは皆さんモノクロなのかも知れません。

結局、わたしがいちばん好きな28mmはヘクトールということになります。
赤ズマロンほどシャープでなく、解像力もかなり低いのですが、その性能の悪さの分独特の表現をしてくれるように思えるからです。
特に発色がどうしたことか派手に出て、とても気に入ってしまいました。
こう書くとガサツなイメージを喚起してしまいそうですが、意外なことに表現は妙に繊細です。
特徴は、アンギュロールにも通ずるところがあるかなと思いました。
もちろん、今ではアンギュロールも好きな広角レンズになりつつあります。
【M8/Angulor 28mmF3.3 F3.3】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
SOM Berthiot Angulor 28mmF3.3 | trackback(0) | comment(5) | 2013/01/16 Wed

復活鏡頭

M8/Angulor 2.8cmF3.3
ベルティオのアンギュロールはわたしの持っているライカマウントのオリジナルのレンズのなかでは、もっとも高価だったレンズと記憶しています。
まだレンズに関心を向け始めたころ、当時、名前のみ聞くような希少レンズをちょくちょく店頭に出していた赤坂のカメラ店で、思い切って購入してみたものです。
その時は、ズミルックス35mmF1.4がメインのレンズで、28mmで長く愛用できるレンズを探していた時だったのです。

その後には標準レンズが主流になるのですが、M6で撮影を始めた頃はスナップや旅の写真で35mmを使うのが当たり前で、評判のズミクロンを手に入れたものの非現実的な写りもこなすズミルックスこそ自分のレンズだと思い、28mmでも同様の写りのレンズを探してまだ見つけられないでいた頃の話しです。
ライツで言えば、エルマリートはでかすぎで、ヘクトールは暗過ぎ、ズマロンはかっちり写り過ぎのうえ高過ぎでした。

アンギュロールを選んだのには、本の一節やや誰かが言ったことを信じて、さらには自分で勝手に想像を膨らませたフランス・レンズの写りという迷信にとらわれたことによります。
ツァイスやライツなどに代表されるドイツ・レンズが質実剛健な描写をするのに対して、アンジェニューやベルティオなどのフランス・レンズはやわらかで発色もパステル調、さらにはアンニュイな情感表現と、両者はまったく異なるのだというものです。
赤坂のカメラ店の店主は、強くこのレンズのことを勧めましたが、今考えるとけっしてフランス・レンズはどうこうというというようなあいまい表現は使っていませんでした。

レンズのデザインは個性的でかっこよく見え、クロームのM6とよくフィットしています。
しかし、いざ使って見ると、何これ? 期待は大きく裏切られました。
4隅はケラレたように黒くなり、逆光に滅茶苦茶弱い、やわらかさこそイメージに近い雰囲気だったものの、いちばん楽しみにしていたパステル系の発色とは正反対に枯れたような渋いを通り越した発色をきちんとしないと思えるほどのものです。
高価だったので無理にでも使おうと持参はするものの、積極的に使うことからどんどんと遠ざかって、レンズ庫のお宝のような地位に成り下がるまで時間はかかりませんでした。

それからは、アンジェニューやキノプティックなどのフランス・レンズの写りを知るようになって、先に書いたようなイメージは誤解で、いわば風評被害にあっていたのだということをほどなく知ることになります。
そもそもベルティオは軍事産業と結び付いていた光学メーカーなので、甘いレンズを作るなどという伝統がいちばん起きにくかったはずなのです。
意欲作である50mmF1.5の開放描写や程度の悪いクモリ玉などの描写を誰かがこれぞフランス・レンズだと言ったことが広まってこのようなイメージが定着してしまったのでしょうか。

さて、アンギュロールには、このレンズの写りを熟知したふたりの名人がいます。
ご本人たちには無断で、このレンズの特長のことをこっそり転載させていただこうと思います。
それは、ある条件の時にすごいシアンが出て驚くべき画像になるということ、逆光に弱いレンズで光を入れない工夫が必要だということ、そして、雨や曇りの時に格別の情景を描出するということだそうです。

今回の撮影では、これら3つの特性を意識して、かつ自分なりにも模索しながら撮影することに専念しました。
最初の葬儀の作例はなんの工夫もなく面白味のないレンズのマイナス面が露見してしまい、その後も暗中模索が続いていますが、光を味方に付け、明暗差のある場面で露出をコントロールし、なるべく寄ったところで撮ったものに、ようやく好みのものが現れ出したように思います。
まだまだ使いこなせているとはほど遠いですが、遥か彼方にあったアンギュロールとの距離感はグッと近づいたような気もしています。
【M8/Angulor 28mmF3.3 F3.3】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
SOM Berthiot Angulor 28mmF3.3 | trackback(0) | comment(2) | 2013/01/15 Tue

古鎮的門票

M8/Angulor 2.8cmF3.3
旧県でランチの後は、もうひとつの古鎮を訪ねてみました。
その前にいったんホテルに戻り自転車をみてもらったのですが、ホテルスタッフは木切れでぱこぱこ叩いて、たぶんもう大丈夫と太鼓判を押してもらって、またよちよちと漕ぎ出します。

実は、2回不自然なチェーンの外れ方をして、1回目は難なく復旧できたのですが、2回目はかなり複雑に絡んでしまい大苦戦していると、同じく自転車でやって来た青年のグループが手を貸してくれてどうにか直すことができました。
彼らはドイツから来たんだと自己紹介し、君は日本人だろだから助けたんだと言って立ち去ります。
あっという間の出来事で唖然としているうちに彼らが漕ぎ出したので、きちんとした礼が言えず、なぜ日本人と分かったのかも聞けず、仕方なく大声でダンケ・シェーンと叫ぶと、笑いながらビテ・シェーンと手を振りながら行ってしまったのでした。

スタッフにチェーン周りを叩いてもらって、かえって悪化する心配がありましたが、以降はチェーンが外れることもありませんでした。
落ちていた木切れで修理してしまうとは、このホテルのスタッフはさすがです。
ただ、また会えるのではと期待して同方向に進んだのですが、残念ながら2度と彼らを見つけることはできませんでした。

ホテルから再出発の際にどこへ行くかと聞かれたので、古鎮と答えると薦められた村がありました。
そこが良いからと薦めた訳では無いようです。
時間と自転車の性能、それにわたしの脚力を値踏みして、行くならそのあたりにしておいた方が好いですよ的に薦めたに過ぎないようですが、結果的にその龍譚村へ行ったのは正解でした。
小さなこれといった特徴もない村でしたが、寄り道しながら着いた時間帯に太陽が絶好の角度で村を金色に照らしていて、古風で色彩感に乏しいはずの村をいちばん美しく輝かせていたからです。

ちょうど農作業していた人たちが家に戻る時間にぶつかるという幸運にも恵まれたようです。
日中であればあまり人気もないところだっただろうと知れましたが、歩く先々で野良仕事帰りの人とすれ違い、軒先で人心地ついて孫を見ている老人に声をかけられ、夕御飯の支度をするお母さんの後ろ姿を見つけたりしました。
作例はそんな1枚で、実に光がいい具合だったので、誰か通ってきてくれないかなあと思っていたところ、その思いを聞きつけたかのように鍬を肩にしたおじさんがやって来たのです。

ところで、龍譚村は奥行きのある細長い村なのですが、そのいちばん奥が古鎮になっていて、その入り口で20元の入場料を取られます。
村の規模等考えるとお金を取ること自体がどうしてだと言いたくなるほどなのに、5元とか10元ではなく20元というのはかなりの暴利です。
だいぶ前に書いたことがありますが、この国では麺は5元、チャーハンやその他定食も10元くらいから食べることができるので、20元は朝食+昼食に相当してしまうからです。

そういえば、帰るときに入り口でふたり組の若い観光客と入場料徴収おばさんが揉めていました。
遠路はるばる自転車を漕いでやって来たら、入場料が高いので文句を言っているということのようです。
わたしは、その女の子に20元の価値があるところだったかと聞かれました。
一瞬回答に窮しましたが、こんなに古い家が並んでいるのをたった20元で見られるのだから外国人にとってはたいへん面白いところだったが中国人がどう感じるかは分からない…、そう答えてみます。
すると、やはりというべきか彼女たちは入場をあきらめ、そのまま元来た道を戻って行ってしまいました。
どうやら、わたしの答えは彼女たちにとっても、おばさんにとっても最悪なものだったようです。
【M8/Angulor 28mmF3.3 F3.3】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
SOM Berthiot Angulor 28mmF3.3 | trackback(0) | comment(0) | 2013/01/14 Mon

無線網路

M8/Angulor 2.8cmF3.3
Kindle Fire HD というタブレットを年末に買ったことは、どこかで書いたような気がします。
キンドルというタブレットで何ができて何ができないのか未だ分からない状態でしたが、少なくともフリーのWi-Fiが飛んでいるところでならインターネットで何かしら旅の情報を得ることができるでしょう。
無料の本も何冊かダウンロード済みなので、どこかで読む機会もあるはず。
旅のお供に連れていくことにしました。

タブレットひとつが荷物に加わったことをわざわざ書くことはないのだろうと思います。
ただ、わたしはどちらかと言えばオールドスタイルの旅人を自認しているので、旅をあまりに便利にしてしまうツールを導入するのにはかなり慎重です。
M8という便利なデジタルカメラは日常でも使っているので旅にも持ち出しますが、コンパクトデジタルは必然性なく持って行ったことはありません。

同様に、中国の携帯は現地でのやり取りの必需品になっていますが、国際ローミング可能な日本の携帯は不要です。
国際電話は基本的にかけないからですが、ほぼ唯一かけたのが、その国際ローミングできる携帯を中国でスラレた時で、その携帯をストップさせるために現地の固定電話から携帯会社へ発信したときのことです。

陽朔を皮切りに、今回旅したルートは外国人が比較的多く辿るせいか、ほとんどの宿でフリーWi-Fiが設置されていました。
キンドルではWi-Fiを勝手に受信してくれるので、あとは宿にパスワードを教えてもらうだけです。
カフェも同様でしたし、空港ではタブレットで一端受信したあと携帯の番号を入力して送信すると折り返しショートメールが届いて開くとパスワードが分かるというシステムでした。
もちろん、一般的には月極有料のWi-Fiが普通ですので、町中で何度か試してもつながることはありませんでした。

いちばんの目的は、現地で撮った写真をキンドルに保存してかつ写真そのものを見るということだったのですが、SDカードから例えばUSB経由で直接取り込めず、その目的は果たせていません。
ところが、意外な発見があったので、このことについてはぜひ記しておきたいと思います。

この国ではFC2もExciteもブログは見ることができません。
新聞社に党のための記事に差換えるよう命令するくらいですから、何としても情報は国家として管理し、国家にとって不都合な真実が市民のもとにさらされるのを防ぐためです。
FC2にもExciteにも中国批判のブログはあったはずで、確か北京オリンピックのちょっと前くらいから突然閲覧できなくなってしまいました。
当局の問題視する対象ブログだけでなく、面倒くさいので全部まとめて見られなくしちゃえとやったようです。

にも関わらず、当局の検閲は無線のWi-Fiにはかかりづらいのか、キンドルでは見ることができたのです。
ホントかとばかりに、レンズ仲間のサイトやブログをチェックしましたが、すべて閲覧可能でした。
自分のブログを見に行ってみると、kinoplasmatさんから日本では紅白をやってますと実にタイムリーなコメントをいただいたりしています。
ところが、取り急ぎ過去のコメントに返事を入れたところ、ブログは見られなくなってしまいました。
返事を投稿した瞬間に、検閲の網に引っ掛かったということでしょうか。

ただ、翌日からはまた見られるようになりました。
また、ブログではなく写楽彩さんのサイトへのコメントは問題なくでき、その後も閲覧可能だったのですが、shasindbadさんのブログにコメントしたところ反応がなくなり、何度も送信ボタンを押してもダメだったのであきらめてしばらくしてみたところボタンを押した回数分の投稿がされてしまっていました(ご迷惑をおかけしました)。
問題があるとはいえ、中国でのタブレットには、まだまだ試してみる楽しみがあるようです。
【M8/Angulor 28mmF3.3 F3.3】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
SOM Berthiot Angulor 28mmF3.3 | trackback(0) | comment(2) | 2013/01/13 Sun

秘密花園

M8/Angulor 2.8cmF3.3
旧県の古鎮の中に、わたしが宿泊しようか悩んだもうひとつのホテルがありました。
中国名は秘密花園酒店、英語ではSecret Garden Hotel。
名前がなんとも魅力的ですが、古建築を内部改装した建て物はより魅力的です。
実は、わたしが泊った水雲閣酒店のオーナーと秘密花園酒店のオーナーは親しく、わたしがどちらに泊るか悩んだことを告げると、だったら見に行ったらと場所まで教えてくれたのです。

なるほど、このホテルも内装では水雲閣と互角で、両者を比較してもどちらに泊るべきか悩むところです。
水雲閣ではホテルからの景色が、秘密花園では古鎮の中の古建築に滞在できることが両者の差ですが、恐らくどちらに泊っても後悔はないでしょう。
門と玄関の間にいくつかテーブルが並んでいて、そのひとつだけが太陽の直射を受けていました。
ここでの昼食にあまりにおあつらえ向きで、泊ることはできませんでしたが、美味なランチとコーヒーが味わえて満足です。

まだ若い女性オーナーにここまで来たいきさつを説明すると、この素敵なホテルは南アフリカの男性と共同経営しているそうで、そのイアンに部屋を見せてもらい次回は滞在してみてくださいとすすめられます。
もちろん、でもその時はランチは水雲閣でとらないといけませんねと言ってホテルを後にしました。

この村には広西でいちばん古い橋がある、そう旧県の村人が教えてくれました。
歩くとかなりあるようですが、自転車なら10分もかからないので行ってみてはと薦められます。
村人が指差す方角へ、車が通れるか通れないかというような未舗装の農道をふらふらと漕ぎ出してみました。
何度も転倒しそうになりながら進んでいくと、先方に川があることが分かります。
ホテルの近くでも流れていて、そこでは竹でつくった筏で川をのんびりくだることができるのですが、その少し上流ということでしょう。
広西一古い橋ももうすぐのはず。

ところが川べりに立ってはるか見渡すも橋らしきものはまったく見当たりません。
運好く筏を移送中の人がその筏に乗って現れたので、どこにあるのか聞いてみると、橋はこの川ではない、この道をあっちに進んだ途中にあると教えてくれます。
それは、いまわたしが通って来た道です。
おかしいと思いつつ道を引き返すと、ちっちゃな橋をそれと気付かず通過していました。

橋と聞いててっきり普通の川にかかるものを思い描いてしまい、田んぼの水路のような水の流れにかかっているなんて想像もできなかったことが橋の発見を遅らせました。
自転車で通ったときは確かに見落としましたが、こうして横から見るといかに古い橋かが分かります。
いま調べると、

「古橋桂仙橋は宋の紹興七年(1137)以来、約900年の年月で、長さ25m、幅4.5mの橋の中央部はわずか青石板1枚分しか敷いておらず、それを9組の石組アーチを並列させるという工法によって支えているのです。旧県村はかつてこの桂仙橋と同じ桂仙村といったのだそうです」

と説明がありました。
わたしは、せいせい2~300年前のものを想像しましたが、ヨーロッパていうところのロマネスク期の橋が残っているのですから、これはすごいなと思います。

そんな歴史的建築物には、なんら案内も出ていませんし、保護されているということもありません。
親切な村人が教えてくれなければやってくることはなかったし、何かの間違いで通りかかっても歴史的重要性に気付くことなく通り過ぎてしまう。
観光地化した陽朔中心の西街は、なんにもないのに観光客どっと押し寄せ、意味ある地にはほとんど訪れる者などない、陽朔はとても不思議なところでした。
【M8/Angulor 28mmF3.3 F3.3】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
SOM Berthiot Angulor 28mmF3.3 | trackback(0) | comment(0) | 2013/01/12 Sat

金色的甜的東西

M8/Angulor 2.8cmF3.3
陽朔がある桂林市は、深圳市のある広東省の西隣りにある広西チワン族自治区にあります。
広東は真冬でも最高気温が20度くらいある日はざらで、その隣りであれば、それほど寒くなかろうという判断でこの地を訪れました。
実際、陽朔の案内には冬場も暖かい云々と気候の説明があり、その言葉は魅力に満ちています。

しかし、冬は国中が雪に覆われる国や赤道直下で年中気温の変化の乏しい国の人々ならいざ知らず、北海道から沖縄まで気候のバリエーション豊富な日本で生まれ育って、なぜに暖かいというあいまいな表現を鵜呑みにしてしまったのでしょう。
首都北京でも最低気温マイナス10度、北に向かってハルビンへ行くと最高気温がマイナス20度になる国では、東京より寒い気温0~5度でも相対で言えば暖かいと言って間違いではないことを。

ホテルにチェックインした日、寒い寒いと言うわたしに生姜入りの烏龍茶を運んできたレセプションの女の子が、あなたは運が良い、なぜなら昨日はもっと寒くて雪が降ったのだからと言います。
ところが次の日になると、どんよりした雲はなくなりほとんど快晴の好天気になり、朝、あいさつをかわした昨日の女の子の返事は、あなたが来たから天気が急によくなったのかも知れない、昨日までずっと太陽が出ていなくてものすごく寒かったんだから、でした。

その彼女の説明では、ホテルにはレンタサイクルがあって、宿泊客は無料で借りられるとのこと。
前日の天気だとかなり辛かったと思われる自転車も、これほどの上天気だと気分も上々で漕ぐことができます。
小山が無数に連なる陽朔エリアは坂も多いだろうと思われるかも知れませんが、あまりアップダウンがなくしっかり舗装されているのでレンタサイクルは至るところにあります。
マウンテンバイクが主流ですが、ふたり乗りタイプはもちろん、3人乗りなんてものまでありますので体力に自信のある人がひとりいれば自転車に乗れないふたりがいっしょでも楽しめますし、体力がまったくない3人が力を合わせてかなりの郊外まで遠征に出ることも可能です。

気分よく漕ぎ出したので、葬儀の現場に出くわすとお祭りだと勘違いしてしまうほどでしたが、その村こそわたしが目指していた旧県でした。
旧県は、中国古鎮遊という本の広西の巻に掲載されている村で、小規模ながらも古建築が並んだエリアは、背景の小山の連なりとも相まって特徴ある古鎮と評価できるものです。

作例は、紅薯を剥く老夫婦です。
中国ではサツマイモのことをさすがに薩摩芋とは言わず紅薯と表記しますが、やはり冬場に人気のある食べ物です。
撮影していると、食べてごらんと剥きたてをひとつ手渡してくれました。
これは収穫したてのナマで、このまま食べるのかと聞くとどうぞと言うので試してみたものの、かすかに甘みは感じられこそすれどもナマのニンジンをかじるのとほとんど差がなく、サツマイモも野菜だったんだと思い起こさせるだけのものでした。

剥いたやつはそのまま食べるのではなく、干しイモをつくるのだそうです。
これは以前食べたことがありますが、日本のそれと変わらない味でした。
そういえば、日本では干しイモってあまり見かけなくなりましたが、素朴な味わいが受け入れられなくなったのでしょうか、それともイモの値段が上がってしまったのが原因でしょうか。
イモの値段が上がったのは焼酎ブームが一因だと聞いたような気がしますが、なんでもブームになるとそれで儲ける人が出てくる一方で、人知れず衰退してしまうものがあることに注意を払いたいものです。

さて、ふたりななぜ家の中ではなく外でイモを剥いているのか。
答えは、たぶん冒頭書いたとおり、天気が好かったので日にあたりながら気持ち好くイモを剥きたかったからなのだと思います。
だいぶ時間が経ってからまたここを通りかかるとわたしを覚えていて、いま、ちょうどイモが蒸し上がったからと、今度はおばあちゃんが1個手渡してくれました。
暖かい日とはいえ、冬場の戸外で食べる黄金色のイモは絶品で、旨い旨いと瞬く間にたいらげます。
2012年最後の朝食は、タダでいただいたナマと蒸したおイモということになりました。
【M8/Angulor 28mmF3.3 F3.3】
thema:ライカ・マウント・レンズ genre:写真
SOM Berthiot Angulor 28mmF3.3 | trackback(0) | comment(0) | 2013/01/11 Fri
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